【無料全文公開】AIの基礎と応用可能性|第2回 クラスタリングとニューラルネットワーク[月光為替]
【プロフィール】
月光為替(げっこうかわせ)。現役ヘッジファンドトレーダー。FXで毎月200〜300pips、金額ベースでは1〜2億円を安定的に稼ぎだした経歴を持つ。現在は日本株運用がメインで、引き続き個人資産でもFX取引を継続中。会社に内緒で、月光為替の名で活動、厳しい言葉のなかに相場の真実が見え隠れする個人投資家の味方。
クラスタリング
データのみから導き出せる特徴によって、データを分類する手法をクラスタリングと呼びます。データがどの程度同質であるかの類似度であったり、データを合成したものとの相関性であったり、平均値からの乖離であったり、さまざまな複雑な計算からデータを特徴づけることが、コンピュータの処理能力向上によって可能になりました。こうした特徴づけの利点は、人間の手が加わっていないことにあります。
どういうことかというと、例えばトヨタと日産は、人間であれば同じ自動車関連株として分類します。ですが、もしかすると機械は、トヨタとファーストリテイリング(ユニクロ)こそが同じように分類されるべきだと結論づけるかもしれません。
このように、人間が分類しないことによって、先入観から解き放たれた、新たな分類を行うことが可能になるかもしれないのです。そして、その機械から得られた新たな分類に対し人間が解釈を与えることで、より事象に対する理解が深まる可能性があります。具体的な手法としては、例えばk-means法などが有名です。
クラスタリングの応用例
従来の業種分類や規模分類といったものではなく、株価の値動きのデータやその他さまざまなデータを用いてクラスタリングを行うことによって、異なったより優位な分類ができるかもしれません。
その新たな分類に対して、例えば為替感応度であったり、投資家属性であったり、新たな解釈を加えてあげることによって、よりポートフォリオのリスク管理が柔軟にできるかもしれませんし、例えばペアトレードを行う運用者であれば、新たなペア発掘に役立つ可能性があります。
ニューラルネットワーク
人間の脳の中の神経細胞であるニューロンが、多数の他の神経細胞から信号を受け取り、意思決定を行っている構造を機械で模倣しようとして作り上げたアルゴリズムが、このニューラルネットワークです。重回帰分析では、説明変数に重みをつけ、その足し合わせで得た出力が目的変数に近くなるように最小二乗法などを用いて重みを最適化していきました。ですが、ここで重要な点として、重回帰分析で表現できるということは、目的変数と説明変数の間には線形な関係がないといけないということになります。線形とは、一次の足し合わせのみで表せるということです。
例えば、y=x+z+rというように表せるとき、目的変数であるyは、説明変数x、z、rとの間に線形な関係があるといえます。ですが、全ての事象がこのように線形に表せるわけではありません。当然、y=x^2のように、非線形な関係がある事象も存在します。
ニューラルネットワークでは、このような説明変数全てに重みをつけて足し合わせるノードをたくさん用意することによって、より複雑な関係を表現することが可能になっています。技術的には活性化関数だったり、バックプロパゲーションだったりが存在するのですが、今回はその詳細には立ち入りません。
重要なことは、ニューラルネットワークでは、より非線形かつ複雑な関係性を表現できるようになったということです。これによって、より正確に目的変数と説明変数間の関係性を表現できるかもしれません。
ニューラルネットワークの応用例
従来線形モデルで表現されてきたところをニューラルネットワークに置き換えることにより、より複雑な関係をモデル化することができるので、それによる予測能力の向上が見られるかもしれません。例えばクォンツ運用で広く使われてきたファクターモデルへの応用が考えられます。
他には、企業の格付け評価であったり、倒産確率であったりなどにも応用可能であると考えられます。
※この記事は、FX攻略.com2017年12月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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