【無料全文公開】「ボリンジャーバンド」を理解する その2[マックス岩本]
マックス岩本さんプロフィール
いわもと・けいすけ。「中卒認定テクニカルアナリスト」という異名の通り、アナリスト業界ではまれに見るノー学歴。学歴社会が色濃く残る昨今でも、そんなことがいっさい関係しないFX市場を相手に日々奮闘中。「誰もが気軽にFXを始められる今だからこそ、しっかり勝ち続けられる技術を身につけてほしい」という気持ちで、連載やセミナー講師を務めています。
マーケットの価格は正規分布にならない
前回はボリンジャーバンドの概要と活用する際の注意点に加えて、親類関係にあるエンベロープとの違いについて解説しました。今回は、ボリンジャーバンドを実践で活用いただくためにも、さらに突っ込んだ部分について解説していきたいと思います。
まずは簡単なおさらいです。ボリンジャーバンドは移動平均線を応用したトレンド系指標の仲間で、そこに統計学を盛り込むことにより、相場の方向性だけでなく一定期間における価格のばらつきをも教えてくれる万能指標であるとお伝えしました。ボリンジャーバンド最大の特徴は、ミッドバンドと呼ばれる単純移動平均線の上下に伸縮する+1σ、−1σ、+2σ、−2σ、+3σ、−3σの各ライン、つまり「標準偏差」にあります。そのため、ボリンジャーバンドを活用して適切な売買タイミングを捉えるためには、この標準偏差に対する理解が欠かせません。
まれに、統計学上のデータが±1σ〜±3σの間にデータが収まる確率が68.3%〜99.7%であるということを根拠に逆張りを推奨される方がいますが、それは大きな間違いです。あくまで、この統計的なアプローチが有効なのは、そのデータが正規分布の場合のみです。
正規分布とは、平均付近が1番高く、平均から離れるにつれて穏やかに低くなっていく、左右対称の鐘型の分布のことです(図①)。正規分布になる代表的なデータには「サイコロを複数回投げたときの出目の合計」や「全国の中学生の男女別身長」「大規模な模試の平均点」などがあり、これらのデータを対象としたときには標準偏差というアプローチがその真価を発揮します。
では、代表的なパラメーターである期間20を採用したボリンジャーバンドを通じて見るマーケットの価格は、果たして正規分布になるのでしょうか。一定の水準で長らくもち合っているレンジ相場の局面ならまだしも、一定期間にわたって水準を切り上げ続ける、もしくは切り下げ続けるトレンド相場局面の価格が正規分布にならないことは、相場経験豊富なあなたも想像に難くないと思います。とはいえ、マーケットの価格が正規分布でなくとも、標準偏差を採用したボリンジャーバンドの有用性が損なわれる訳ではありません。むしろ標準偏差を活用するからこそ、さまざまな示唆を与えてくれるのです。
標準偏差と平均偏差
それでは続いて、標準偏差について解説していきます。標準偏差を一言でいえば「データのばらつきの度合いを示す値」です。ちなみに「偏差」とは各データと平均の差のことです。これだけ聞いても理解しがたいと思いますので、順を追って解説していきます。
図②‐1をご覧ください。これはA君〜G君のテストの点数です。A君は99点という高得点である一方でB君は62点とその点数はバラバラです。このときに、データのばらつきを見るためにはどうすれば良いでしょうか?
ばらつきを求める際には、まず平均を求めることから始まります。A君〜G君の点数の合計は560点、その平均は80点です。次に、各データが平均(80点)からどれ位離れているかを示す偏差を求めます(図②‐2)。すると、最も大きな偏差はA君の+19で、最も小さな偏差はG君の+1であることが分かりました。あとは各偏差の平均を求めるだけですね。
しかし、ここで一つ問題が生じます。プラスの値(19、12、6、1)とマイナスの値(−18、−17、−3)を全て足すと0になってしまうのです。そこで、この問題を解決すべく偏差の平均を求めるときには、マイナスの数値もプラスとする「絶対値」を用います(図②‐3)。すると、偏差の合計76(19+18+17+12+6+3+1)が求められ、偏差の平均10.86を求めることができます。そして、この値が価格のばらつきを数値化する尺度の一つ「平均偏差」となります。
では、データのばらつきが平均偏差で計れるにもかかわらず、なぜボリンジャーバンドは標準偏差を用いるのでしょうか? 実は、この平均偏差にもばらつきを正しく評価することができない一つの問題があるのです。
具体的には図③をご覧ください。これら二つのデータには価格のばらつきに明らかな違いが見られるものの、求められる平均偏差は同じ25となってしまいます。これでは、正確なばらつきを計ることができません。そこで、この問題点を解決すべく用いられるのが標準偏差ということです。
標準偏差では、より詳細な価格のばらつきを計ることが可能となります。ボリンジャーバンドが標準偏差を採用したことには大きな意味があったんですね。次回は、ボリンジャーバンドが採用した標準偏差について解説していきたいと思います。
※この記事は、FX攻略.com2017年12月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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