江守哲氏【2020年5月19日】ワクチンへの期待で米国株は上昇
配信日:2020/05/19 08:26
【米国株のトレード戦略】
米国株は大幅高です。新型コロナワクチン候補の初期段階の治験が成功したというニュースだけでこれだけ上げるわけですから、いかにいまの市場が新型コロナウイルスの呪縛に取りつかれているかがわかります。ワクチンの開発は喜ばしいところですが、専門家が指摘するように、感染第2波のリスクが懸念されます。外出禁止の解除で中国や韓国のように、欧米でも感染者が増加するようだと、再び懸念が広がる可能性があることは常に念頭に置いておく必要がありそうです。
もっとも、株式相場自体は戻り始めています。ダウ平均は戻り局面の高値水準にまで来ました。これを上抜けると、一段高になりそうです。その場合には、26250ドル前後まで上げることになりそうです。S&P500は3000ポイントが視野に入ってきました。心理的節目の3000ポイントを超えると、これまでの不透明感が一気に晴れる可能性もあります。また、ナスダック指数はすでに重要な戻り局面の節目を上抜けており、過去最高値に戻ろうかという勢いです。戻り高値を超えましたので、このまま今日も上げるとさらに一段高になりそうです。
このように、米国株はすさまじい戻り高値を目指す動きにあります。これで新型コロナウイルスの影響がすべて織り込まれたのかどうか、これが今の市場の最大の関心事であることは間違いないところでしょう。新型コロナウイルスの感染による経済や企業業績への影響は織り込まれた、あるいは軽微にとどまるとの見方が現在の株高の背景にあることだけは間違いありません。しかし、経済の水準がコロナ前に戻るには数年かかるというのが専門家の見方です。専門家の見方は間違いであることが多いので何とも言えませんが、いまの株価の戻りは確かに早すぎるように見えます。
以前から指摘しているように、どこかの時点で「実態悪」に気づかされる時が来るでしょう。第2四半期のGDPの大幅な落ち込みや、第3四半期の劇的な回復がすでに織り込まれているとすれば、実態悪に気づかされるのは10月ごろになる可能性もあります。いずれにしても、どこかのタイミングで一度はそのような局面が来るのではないかと考えます。それまでは、市場は将来への期待を背景に買い続ける可能性があります。この動きについていくのか、それとも調整を待つのかを決めなければならない局面に入ったことだけは確かでしょう。
バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)が15日公表したデータによると、13日までの週に投資家は現金や社債保有を増やす一方、株式への投資を減らしていました。新型コロナウイルスの感染第2波への警戒や世界経済減速への懸念が広がっていることが背景にあるものと思われます。マネー・マーケット・ファンドには356億ドルが流入し、年初からの流入は1兆2000億ドルに達しました。社債には158億ドルが流入しました。一方、株式ファンドからは62億ドル、新興国市場から56億ドルがそれぞれ流出しました。新興国市場は13週連続で資金が流出しています。
このような投資マネーフローを見ると、株式市場から資金が流出する中で株価が上げています。これは、新型コロナウイルスが株価を押し下げる前の状況と全く同じです。ただし、当時は自社株買いが株価を押し上げていたと考えられますが、いまは自社株買いがかなり減っているとみられます。したがって、純粋に資金が流出する中で株価が上げているという、きわめて不思議な状況になっていることは理解しておきたいところです。
日柄的には、21日から22日が重要と考えています。これは、今年の値動きが1980年と2001年に似ており、両年ともこのあたりの日柄でトレンドが明確に分かれたからです。1980年は大きく上昇に転じ、逆に2001年は大きく下落に転じました。3月安値からここまで戻す動きも全く同じであり、これからの値動きが注目されます。市場の背景は両年とは違いますが、注目しておきたいと思います。経済実態を考えると、2001年型の下落からの中期的な低迷に向かうのが自然であると考えています。
短期トレード戦略ですが、ナスダック指数やFANG指数にロングの指示が出ました。この動きについていくのもありでしょう。上げているものに機械的についていくことも重要です。下げに転じればすぐに解消することを前提に市場に入るのもよいでしょう。VIXは30ポイントを下回りました。かなり安定しています。いまの戻り局面が続いた場合、収益機会を逃すことになりますので、少額でもトレードすることを検討したいところです。
長期的なポートフォリオ戦略は、考え方は同じです。大きく下げたときに買い増す方針です。ここからもう一度下げるかどうかはわかりません。ただし、ここまで戻しましたので、下げ始めると大きくなりそうです。そのような材料が出て、実際に下げるまでは慌てずに待つことが肝要です。2月高値から30%、35%、40%、45%、50%と買い下がれるように資金を残しています。さらに、リスクを考慮して、55%、60%までの下げも考慮して、全体で7回に分けて買うくらいの資金分散・時間分散を行って買っていきます。長期ポートフォリオの投資資金に関しては、下げなければ使う必要はないでしょう。現金を保有しておくことは重要です。常に参加できるように準備しておくことが肝要です。
長期投資の場合には、ETFなどを利用して「現物」で買うことが肝要です。現物であれば、下げても耐えられます。また、現物は先物やCFDなどの取引の担保にも使用しません。リスクを二重に取ることになりますので避けるべきでしょう。株価はまだ2割から3割下げる可能性はありますが、継続的に買いを行いたいと考えています。長期投資ですので、最大であと2割は下げるとの大前提で、資金を残しながら買い下がっていきます。現物での投資であれば、下げにも耐えられます。
最終的には株価は戻します。長期投資は、株価が下げてあきらめて売ったときが底値になります。不思議なものですが、実際にそのようなケースが多いように思います。いまこそ、数年単位の視野が必要といえそうです。
基本的にS&P500のポジションだけで十分かと思います。様々な資産に幅広く投資するのが安定運用につながります。VIXはヘッジの意味合いもありますので、トレードのアイテムに入れとより幅広い運用ができるでしょう。S&P500とVIXの組み合わせは非常に重要です。
<米国株式市場の短期トレード戦略>
ダウ平均:
S&P500:
ナスダック総合指数:新規買い
ナスダック100:新規買い
FANG指数:新規買い
ラッセル2000:
VIX:
【米債券トレード戦略】
米10年債先物はロングを手仕舞い売りです。投資家のリスク回避姿勢が弱まったとの判断です。ハイイールド債は見送りですが、リスク資産として引き続き要注目です。この動きをみることで、投資家のリスク許容度が図れます。
長期的なポートフォリオ戦略では、常に米国債を保有しておきます。米国債は20%から25%程度は保有しておきます。
<債券市場の短期トレード戦略>
米10年債先物:手仕舞い売り
米ハイイールド債:
【主要株式指数トレード戦略】
FTSE、DAX、ハンセン指数、NIFTY、ボベスパ指数、ロシア株の戦略は下記を参考にしてください。様々な株式指数にも分散してトレードすると、他の銘柄の収益がポートフォリオ全体を助けてくれるでしょう。世界の株式市場全体のトレンドを確認するために利用していただければと思います。資金的に余裕があれば、トレード対象に入れておくとよいでしょう。
<主要株式市場の短期トレード戦略>
FTSE:
DAX:
ユーロストックス:
上海株価指数:
ハンセン指数:
H株:
NIFTY:
ボベスパ指数:
ロシア株:新規買い
【日本株式・債券市場の市況解説・分析】
日経平均株価:20133.73(+96.26)<+0.48%>
TOPIX:1459.29(+5.52)<+0.38%>
マザーズ指数:872.56(+33.03)<+3.93%>
日経VI:30.67(-1.46)<-4.54%>
日本2年債利回り:-0.181%(+0.014)
日本10年債利回り:-0.013%(-0.009)
日本株は米国株価指数先物の上昇が追い風となりました。銘柄の58%が値上がりし、値下がりは39%。出来高は12億1082万株、売買代金は2兆0037億円。日経平均株価はマイナス圏に沈んだ後、切り返しました。粘り腰の株価動向に、市場関係者は4月上旬以降の緩やかな上昇基調は継続しているとみているもようです。前週末の米国株や原油価格の値上がり、為替相場の落ち着きが投資家心理を支えています。週明けの米国株価指数先物の時間外取引も上伸したことで、買い安心感が強まりました。しかし、日経平均は前週末比150円超上昇した後は、頭打ち状態となりました。電子部品をめぐる米中対立の深刻化が懸念される状況の中、半導体関連株が売られるなど、積極的に上値を追う雰囲気にはなりませんでした。日本国内では、経済活動の再開が期待される一方で、服飾大手レナウンの経営破綻やマクロ景気の悪化など悪材料も顕在化し始めています。
ソフトバンクグループ(SBG)が18日発表した2020年3月期連結決算は、純損益が9615億円の赤字(前期は1兆4111億円の黒字)でした。新型コロナウイルス感染拡大による市場混乱で、孫会長兼社長が注力する投資事業で巨額の損失が生じました。新型コロナの影響が大きい20年1-3月期に限れば、赤字は1兆4381億円に上りました。通期での赤字は05年3月期以来15年ぶりで、1981年の創業以来、最大の損失額でした。四半期ベースで見た場合、東日本大震災時の11年1-3月期の東京電力の1兆3872億円を超え、日本企業として過去最大規模に達しました。
共用オフィスを運営する米ウィーカンパニーへの金融支援や米配車大手ウーバー・テクノロジーズに関連する損失拡大が響きました。保有する株式評価額の引き下げに伴い、孫氏が力を注ぐ運用額10兆円の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」の評価損は約1.9兆円に膨みました。孫氏は18日の記者会見で、「投資事業にさらなる評価損が出ないとも限らない」と警戒感を示しました。また、SVF投資先88社のうち、15社程度がコロナ危機で倒産する可能性に改めて言及しました。SBGは保有資産売却で1年以内に4兆5000億円を調達し、自社株買いと財務改善に充てる計画。
20年3月期の売上高は、売却予定企業分を除く継続事業ベースで前期比1.5%増の6兆1850億円。本業の実態を示す営業損益は1兆3646億円の赤字でした。21年3月期の業績予想は非公表。配当方針は未定とし、無配になる可能性も残しました。また、保有する阿里巴巴(アリババ)集団の株式を活用し、115億ドルを調達するとしました。金融機関との先渡し売買契約を複数締結したもようです。22年1月から24年4月の決済の際に、株式で決済を行うかどうか決めることができる内容です。自社株と負債返済に充てるため、1年以内に最大4兆5000億円の保有資産を売却する計画の一環です。
また、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏がSBGの取締役を6月25日付で退任すると発表されました。さらに、3月に示した自社株買いと資産売却の方針の一環として、発行済株式総数の6.70%に当たる1億3500万株、取得価額5000億円を上限とする自社株買いも発表しました。取得期間は18日から21年3月31日。同社は3月23日に2兆円の自社株買いと4.5兆円の資産売却の方針を発表しており、その一環となります。
20年1─3月期の実質GDPは前期比マイナス0.9%、年率換算でマイナス3.4%でした。1・2月に見られた消費増税からの回復傾向は、3月以降の新型コロナウイルスによる多岐にわたる打撃でご破算となり、消費・設備投資といった民需は全て悪化を余儀なくされました。1―3月期の落ち込み幅は限定的でしたが、4―6月期は本格的な感染の影響が出て深刻な落ち込みとなるとみられています。昨年10―12月期に消費増税の影響で年率7.3%もの落ち込みとなった後、そこからさらに3%台のマイナス成長となり、テクニカルリセッションに陥ったことになります。2四半期連続のマイナス成長は15年7―9月期、同10―12月期以来です。
内需は民間消費支出が1・2月までは増税による落ち込みからの回復がみられていましたが、3月に外出自粛により旅行や外食などで打撃が表れ、前期比マイナス0.7%と2四半期連続のマイナスでした。民間設備投資も前期比マイナス0.5%となり、昨年10―12月期の同4.8%の落ち込みの後も不振でした。建設投資や増産につながる機械投資なども先送りの傾向が表れました。住宅投資はマイナス4.5%で14年7―9月期以来のマイナス幅を記録。公共投資はマイナス0.4%で5四半期ぶりの減少でした。
内需の寄与度はマイナス0.7%で2四半期連続のマイナス。外需も全体の足を引っ張り、外需の寄与度はマイナス0.2%と2四半期ぶりのマイナス寄与でした。輸出は前期比マイナス6.0%の大幅悪化。2四半期ぶりの悪化で、11年4―6月期以来の減少幅でした。世界経済が収縮し、自動車輸出などが振るわなかったほか、インバウンド消費も大幅に悪化しました。輸入も、内需不振により前期比マイナス4.9%と2期連続の悪化。輸出のマイナス幅の方が大きかったため、外需の寄与度はマイナスとなりました。
【日本株のトレード戦略】
日経平均先物はシカゴ市場で20500円を回復して返ってきました。米国株高が効いています。日本株は米国株の写真相場ですので、今日も米国株価指数先物の動きを注視することになりそうです。米国株の基調が強くなってきましたので、日本株もどこまで追随できるかを見ていくことになりそうです。繰り返すように、PERが30倍台にまで上昇していますが、これはもはやあてになりません。EPSが日々低下していきますので、株価が変わらなければPERが自動的に上がっていきます。30倍を超えても割高と判断することはできません。
日本経済新聞が発表するPERについては、業績見通しを発表できない企業のEPSは、黒字・赤字に関係なくゼロで計算されているようですので、いびつな結果になるようです。そうであれば、なおさら当てにできません。したがって、いまは一般的なBPSを重視するという姿勢が良いでしょう。BSPは依然として2万円台後半を維持していますが、この日は少し下げてきました。これが下げてくると要注意です。この日のBPSは20544円となっており、今日の値動き次第ではPBRが1倍を超えることになります。これで戻りいっぱいとなるのかどうか、見ていきたいところです。
5月13日から6月25日は「金星逆行」の期間に入りましたが、いまのところ大きな動きは見られません。むしろ、堅調さが強まっています。いまの感じであれば、調整に入るようには見えません。また、6月18日から7月12日は水星逆行の期間ですが、動きだすのはここまで待たなければならないかもしれません。いずれにしても、市場エネルギーが溜まらないと、次の動きにはいけません。外資系大手の先物市場でのポジションの偏りなども見ながら、買い戻しがある程度入った後でないと、調整は難しいのかもしれません。
ソフトバンクGの業績は、桁が大きすぎてピンときません。いずれにしても、ものすごいリスクをとってビジネスを行っていることがよくわかります。これだけ株価次第で業績がぶれるのも問題でしょう。同社や孫氏を気に入っている投資家は上げても下げても離れずに株主で居続けるでしょうから、この銘柄は別物として考えるべきなのでしょう。それでも、日経平均株価に採用されているため、全く無視するわけにはいかないことから、今後もフォローせざるを得ないと考えています。しかし、これだけの巨額の損失でも、売られないところが株式市場の面白いところです。ADRで見ても、昨日の東京市場引けとの比較でも1.2%上昇しています。今日も日中の値動きを注視したいと思います。
短期トレード戦略では、マザーズ指数にロングの指示が出ています。また、日経平均先物とTOPIX先物は今日の上昇次第ではロングの指示が出そうです。ただし、この水準では買いたくないというのが本音です。割り切って買うかどうか、今日の日中の値動きとテクニカル指標の指示を見て判断したいと考えています。日経ダブルインバース(1357)と日経VI(2035)のポジションは将来の下げに備えて保有しています。
長期ポートフォリオ戦略の考え方は変わりません。日経レバ(1570)を保有していますが、ポジションはかなり小さくなっています。今後は大きく下げたときだけ買い増します。2月高値から30%、35%、40%、45%、50%の下げとなれば、買い増していきます。最低でも資金を5回に分けて買っていきます。さらに、55%、60%の下げでも耐えられるように、資金を分割しておきます。高値水準の24000円を基準にすると、16800円、15600円、14400円、13200円、12000円、さらに10800円、9600円といった形で買い下がれるように準備しています。BPSから見れば、ここまでの下げは想定しづらいのですが、BSPが低下する可能性もあります。常に最悪のケースを念頭に置いておきます。
株式投資で大底を買うことはできませんので、長期投資では徐々に買い下がるために、資金を十分に分割して行うことを優先します。ETFなど現物で投資することで、下げても耐えられます。安値で買える投資家だけが、最終的には株式投資で資産を増やすことができます。あとは、トレーディングを加えて、現金を作ることを考えます。そこでできた現金は、長期投資に振り向けていきます。
テクニカル指標は、騰落レシオの25日平均が118%と過熱圏を維持。6日平均は102%に低下しました。PERは36.61倍に上昇。あまり意味をなさなくなってきました。EPSは549円に急低下しています。PBRは0.98倍、BPSは20544円です。今日はPBRの1倍台回復もありそうです。とにかく、いまはBPSの動きを注視しておきます。空売り比率は41.0%で目立った動きはありません。新高値銘柄数は43、新安値銘柄数は7で、強気のパターンは維持されています。日経VIは30.67に低下。ドル建て日経平均は187.88ドルに上昇しました。NT倍率は13.80倍に小幅上昇。日経平均が0.48%上昇、TOPIXが0.38%上昇し、両者のパフォーマンスの差が反映されました。13.80倍を超えましたので、日経平均株価の割高感が出てきています。
5月1日時点の信用倍率は2.47倍に小幅上昇しました。売り残が減少し、買い残が小幅に増加しました。5月1日時点の信用評価損率は22.49%に低下しました。なお20%を超えており、投資家のポジションは傷んだままです。5月8日時点の海外投資家の売買状況は1206億4900万円の売り越し、個人投資家は170億5200万円の買い越しでした。個人は現物が106億2800万円の売り越し、信用が64億2500万円の買い越しでした。海外勢は「4月の買い越し」は見られず、売り越しで終わりましたが、5月に入っても海外勢は売り姿勢を継続しているのがわかります。一方、信託銀行の買いは91億8100万円で、これで10週連続の買い越しとなっています。
<日本株の短期トレード戦略>
日経平均株価:
TOPIX:
マザーズ指数:新規買い
日経VI:
日経レバレッジ(1570):
日経ダブルインバース(1357):
TOPIXレバレッジ(1367):
TOPIXダブルインバース(1368):
マザーズETF(2516):新規買い
NYダブルブル(2040):
NYダブルベア(2041):
ISHARES S&P500(1655)
NASDAQ(1545):新規買い
日経VI(2035):
VIX短先物(1552):
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