潮流270 まだGWに自由の女神が閉鎖されるリスクは残っている
配信日:2017/04/27 09:28
急遽トランプ政権が示すこととなった大型税制改革の基本方針は、やはり、曖昧すぎる項目の並んだ1ページのものであった。
料理を作る前に「この魚や肉を使ってよいですか?」と示されることがあるが、ムニューシン財務長官とコーン国家経済会議(NEC)委員長が蓋を開けて見せてくれたのは、素材ではなくメニューの紙一枚であった印象だ。それは既にこれまでもテーブルに置かれていたものである。
1枚の紙に対する答えは「YES」でも「NO」でもなく、「?」。この基本方針については、後日「潮流」に書くこととするが、昨夜の米国市場での反応(特に債券市場で金利が僅かではあるが低下し、よって為替がドル安にふれた現象)も同様の評価を示したものと考える。
この29日にハネムーン期間である100日を迎えるトランプ政権は、まず同日に財政の崖に直面する。これに対する暫定予算の成立が喫緊の急務であることから、先週「大型税制改革の基本方針発表」の報を受けて、「まずは、暫定予算成立の方が必要性が高く、その前の基本方針の発表でミソをつけなければいいが」という印象を持ったが、そのとおりとなってしまった。
さて、その暫定予算であるが、メキシコとの壁建設費用を年後半までは計上しない形で、“壁”を除いて“崖を渡る”方針のようであるが、あまりにも審議を行う時間が短いことから、1週間程度の「つなぎ予算」で乗り切らなくてはならなくなる公算が徐々に高まっている。もし、それさえもうまく行かなかった場合は、2013年10月に行われたように、自由の女神が閉鎖される可能性がある。GWを利用してNYに行った観光客はそれに近づくことが出来ずに、逆に80万人以上の連邦職員が意図せざる自宅待機というGWに突入することになる。いずれにせよ、崖の期日は現地時間29日午前0時1分(日本時間:29日午後1時1分)である。
さて、日本市場であるが、昨日、4日連続の1%超上昇となった日経平均の25日乖離は2.60%に上昇した。「Sign」における過熱感5サインの1つであるこの項目のトリガーは3%であり、まだ余裕があるが、この2.60%という数値は、今年の1/4爆騰大発会に記録した3.14%に次ぐ、今年2番目に高い水準である。
トランプラリーで記録した最も大きな同数値は6.15%。それは昨年の12/13に記録しているが、その時点での日経平均は1万9250円。昨日の日経平均終値とほぼ同じレベルである。「Sign」に示している(もしロングを持っていた場合の)利食いメドも(かつて指摘したように)ここもと1万9180円から1万9300円の水準で推移している。
同じように以前「潮流」で指摘した「米国市場はまだNASDAQを諦めていない」という状態は、今週、連日で同指数が史上最高値を更新したことから揺らいでおらず、米国の1-3月期の決算も絶好調であることから、下値不安は限定的(無論、地政学リスクを含まない前提)であるが、日経平均については、これまで積み重ねてきた価格帯別売買代金が最も重い、このゾーン(1万9000円-1万9500円)でのヤレヤレ利食いをこなしながらの展開が予想される。
以前、日経平均が今回初めて1万9500円を超えて上昇した際に、「この1万9500円はなんども跨(また)ぐ水準」と書き、その後、数え切れないほど跨ぐこととなったが、1万9300円を終値で超えた場合に、私は同じ感覚を抱くかもしれない。
しかし、それでも、オプション(コール)の状況は、昨日ザラ場にスポットで流したとおりで“グシャ”と潰れている。プレミアムに妙味がない。そのためまずはコール売りはタイミングを待ちながらも発動できない状態でいるのだ。
さて、昨日、細かく書いた先物手口であるが、本日は昨日のバスケット取引から推測されることを記す。
昨日のToSTNeTの立会外取引の合計金額は約866億円。うち昼休みが450億円程度を占めていた。当社の推計件数は62件。うち、大きな取引に含まれなかった銘柄は、大手国内証券、大手国内銀行。
バスケットを見る際に認識しておかなくてはいけないことは、裁定取引を証券会社の自己部門が行う際に「自社の株」を含まないというルールがあること、親会社が銀行である場合も同様であるということ。
もうお分かりであろう。昨日の上記、「大手国内証券、大手国内銀行を含まないバスケット」=「裁定取引」なのである。
昨日もその前日と地合いは変わっていなかったというのが結論であり、まだ登場人物に「機関投資家」は出てきていない。
よろしいですか?