人工知能と相場とコンピューターと|第4回 トランジスタとシリコンバレーの誕生[奥村尚]
奥村尚さんプロフィール
おくむら・ひさし。1987年工学部修士課程修了。テーマはAI(人工知能)。日興証券で数々の数理モデルを開発。スタンフォード大学教授ウィリアム・シャープ博士(1990年ノーベル経済学賞受賞)と投資モデル共同開発、東証株価のネット配信(世界初)。さらにイスラエルのモサド科学顧問とベンチャー企業を設立、AI技術を商用化し大手空港に導入するなど、金融とITの交点で実績多数。現在はアナリストレーティングをAI評価するモデル「MRA」、近将来のFXレートをAI推計する「FXeye」、リスクとリターンを表示するチャート分析「トワイライトゾーン」を提供。日本の金融リテラシーを高めるため、金融リテラシー塾を主催している。
趣味はオーディオと運動。エアロビック競技を15年前から始め、NACマスター部門シングル9連覇、2016年シニア2位、2014~2016年日本選手権千葉県代表、2017~2018年日本選手権 マスター3準優勝。スポーツ万能と発言するも実は「かなずち」であり、球技も苦手である。座右の銘は「どんな意思決定でも遅すぎることはない」。
ブログ:https://okumura-toushi.com/
※この記事は、FX攻略.com2020年7月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
ベル研究所の三人がトランジスタを開発
トランジスタは、1947年12月23日が公式な発明日とされています。最初に発明されたトランジスタは点接触型と名づけられていますが、動作が不安定で、1時間も動作させると動かなくなってしまうものでした。
真空管もトランジスタも、信号の増幅やスイッチとして動作するという点では共通しています。真空管は、電極に高電圧をかけてヒーターで熱して動作させるので大量の熱が発生しますし、電力も消費します。ヒーターが温まるまでは、電子が出ないので動作しません。ヒーターに使われるフィラメントには寿命もありました(長くて数千時間)。しかも、ガラス製であるために大きく重く、振動や衝撃にも弱いもので、移動しながらの利用はできません。
トランジスタは真空管の欠点をほぼ全て克服したもので、小さく、消費電力は少なく(=発熱も少ない)、衝撃にも強い。ただ、初期のトランジスタは動作が安定していなかったのです。トランジスタを開発したのは、ベル研究所のジョン・バーディーン、ウォルター・ブラッテン、ウィリアム・ショックレーの3人のチームで、主にショックレーが開発を主導しました。点接触型トランジスタは量産に向かず、ショックレーを中心に安定動作を可能にした接合型トランジスタが開発されます(画像①)。
特許は1951年に発効しました。ショックレーはこの成果で1956年にノーベル物理学賞を受賞します。単独ではなくチームの2人も同時に受賞したためか、ショックレーはおもしろく思わなかったようです(自叙伝で本人が回想)。
プロジェクトを統括してきたベル研究所長のマービン・ケリーは、トランジスタの発展をベル研究所に限定してはならぬと考え、技術を国家の機密として独占したかった米国国防総省の反対を押し切り、特許公開を決断します。特許は1954年に公開し、かつライセンス料は2万5000ドルという良心的な設定でした。これによりトランジスタは普及し、世の中を一変させたのです。
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