【無料全文公開】マックス岩本の「フォーメーション分析」を理解する その5
マックス岩本さんに、相場動向の予測に役立つ「フォーメーション分析」を教えてもらう当企画。前号では短期完成型のペナント、フラッグ、ウェッジのチャートパターンを学習しました。それに続いて、今回はスパイクやソーサーといった「リバーサルフォーメーション」について解説してもらいます。
※この記事は、FX攻略.com2017年9月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
マックス岩本さんプロフィール
いわもと・けいすけ。「中卒認定テクニカルアナリスト」という異名の通り、アナリスト業界ではまれに見るノー学歴。学歴社会が色濃く残る昨今でも、そんなことがいっさい関係しないFX市場を相手に日々奮闘中。「誰もが気軽にFXを始められる今だからこそ、しっかり勝ち続けられる技術を身につけてほしい」という気持ちで、連載やセミナー講師を務めています。
ソーサーはトレンド転換が認識しづらい
前号では、コンティニュエーションフォーメションの代表格であるペナント、フラッグ、ウェッジについて解説しました。それに続き、今回はスパイクとソーサーといったリバーサルフォーメーションについて解説していきたいと思います。
まずは、ソーサーフォーメーションについてです。ソーサーフォーメーションには、ソーサートップとソーサーボトムがあり、日本では「鍋底」「団子天井」の愛称で広く知れ渡っています。このチャートパターンの主な特徴は図①の通りです。高値・安値を切り上げる上昇トレンドが確認された後、そのトレンドが徐々に穏やかなものになると、保ち合い局面へ移行。このとき僅かに高値を切り上げる場面もありますが、以前のような買いの勢いは見られません。トレンドフォロワー泣かせのじれったい相場展開が長く続きます。そして、一定の底堅さを見せながらも上値の重い値動きを経て次第に水準を切り下げると、再び「プラットホーム」と呼ばれる保ち合いに転じます。そして、このプラットホームの安値更新をもってソーサートップは完成します(チャート①)。
このフォーメーションは、値動きの経過からも分かる通り、視覚的に認識しやすいトップやネックラインを形成しないことが一つの特徴でもあるため、売買タイミングを捉えるのが難しく、数あるチャートパターンの中でも攻略が難しいといえます。そのため、ソーサートップの局面を対象にトレードする場合は、そもそもトレンド転換局面が認識しづらいことを前提に、トレンド転換を示唆する明確なプラットホームの確認がとれるまで待つことに加えて、その他のツールも駆使し、マーケットを多面的に捉えることが攻略の秘訣です。
そして、分かりやすいトレンド転換シグナルが見られないソーサートップではありますが、他のチャートパターンと同様、保ち合い局面の時間が長ければ長いほどその後のトレンドは強く大きなものになるという特徴を持つことに変わりはないため、何より早仕掛けは禁物です。むしろ、1テンポ遅らせてエントリーするくらい余裕を持ってトレードすることをお勧めします。ちなみに、ソーサーボトムはその反対です。
急激なトレンドを形成するのがスパイク
続いて、スパイクフォーメーションです。このフォーメーションは前述のソーサーフォーメーションと同様、リバーサルフォーメーションに分類されるもので「スパイクトップ」と「スパイクボトム」の2種類が存在し、「V字トップ(ボトム)」「尖端天井(底)」の名で知れ渡っています(図①)。
スパイクフォーメーションは、パターン形成時に一方向へ急激かつ鋭角なトレンドを形成するのが主な特徴。スパイクトップの場合は、天井をつける前に力強い上昇を見せるのが通例です。まさに「押し目待ちに押し目なし」の展開で水準を切り上げ続け、トレンドライン分析を用いた場合には、力強く上昇チャネルラインを上抜けて高値を更新し続けます。しかし、ある日突然何かのきっかけで反落。それまでの上昇トレンドが嘘のように急落するのがこのパターンの特徴です(チャート②)。
上昇過程で形成されたサポートラインを次々に割り込み、戻りという戻りも見せず、買い方に逃げる隙を与えません。相場の怖さを思い知るチャートパターンの一つがこのスパイクフォーメーションといえるでしょう。
このように、上昇から下落へと短時間で180度相場が様変わりする過程で完成するスパイクトップではありますが、V字天井が確認されたからといって「スパイクフォーメーションでトレンド転換だ」と考えるのはあまりにも危険です。なぜなら、たった1点の高値を形成しただけでは、後に反落局面が訪れたとしても、それが直前の上昇トレンドに対する一時的な調整局面なのか、後の下落トレンドを示唆するトレンド転換局面なのかの区別がつかないからです。
もっといえば、そこからさらに時間経過を伴って保ち合いを続けたチャートパターンが、ダブルトップやトリプルトップであることをふまえると、1番天井をきっかけにトレンド転換と見なして売買判断を下すことがどれだけ危険を伴うことかは、日々マーケットと対峙している読者の皆さんであれば理解いただけるはずです。
そのため、スパイクフォーメーションを攻略するポイントは、そのパターンを認識するというよりも、トレンドの転換局面を段階的に捉えることが重要です。それまで長い時間経過を伴って上昇してきた価格が、僅か数日あるいは数時間で否定されるのであれば、何かが起こっている紛れもない証拠。それが何であるかは重要ではありません。
思惑とは異なる値動きを見せた局面で柔軟に対応するためには、「何事も起こり得る」というごくごく当たり前のことを念頭に置きトレードすることが、このパターンを攻略する秘訣です。
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