【無料全文公開】私が勝ちやすい相場、勝ちにくい相場[田向宏行]
FXを長く続けている方なら身をもって感じていると思いますが、為替相場には勝ちやすい場面とそうでない場面があります。専業トレーダーの田向宏行さんから見た、勝ちやすい相場と勝ちにくい相場とはどのような状況なのか。また両者の見極め方や、勝ちやすい相場での取引方法についてレクチャーしてもらいます。
※この記事は、FX攻略.com2017年9月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
田向宏行さんプロフィール
たむかい・ひろゆき。大学卒業後、資格試験に挑戦するが挫折。就職できず仕方なく起業。事業経営の間に投資を開始。事業譲渡後の現在は個人投資家。FX会社のセミナー企画・構成も手がけている。著書に『臆病な人でも勝てるFX入門』(池田書店)。
勝ちやすい場面は緩やかなトレンド相場
FXを始めたころ、収益が安定しないうちはトレード・テクニックや金融知識さえ身に付ければ、「どんな相場でも、いつでも儲けられる」と思いがちです。私もそう思っていろいろ勉強しました。しかし、これは幻想です。多くのトレーダーに得意な相場や得意な通貨ペア、または自分のスタイルがあるということは、相場の全ての場面でうまくいくわけではないことの裏返しだと、あるときに気付きました。
私にとって勝ちやすい相場は、トレンドが明確で急激な動きの少ない、ボラティリティ(変動率)の安定した相場です。こうした相場ではどこで入っても緩やかな動きの中で利益を取りやすくなります。急な動きではないので、すぐに多くの利益にはなりにくいですが、エントリーとストップが適切なら、ストップにかからずジワジワとマイナスが減って、しばらくするとプラスに転換していきます。また、もし運悪くトレンドが終わるころに参入してしまっても、急変動しないので何度か逃げるチャンスも提供してくれます。負けにくく、利益が残りやすいのが緩やかなトレンド相場だと思っています。
相場はイベントや需給で急激に動いたり、オプションの影響やテーマの消失で動かなくなったりします。相場のさまざまな場面を私なりに方向性とボラティリティで考えると図①のようになります。
私が勝ちやすい相場は、トレンドがあり、ボラティリティの低い場面なので、この図では④の部分です。事前にトレンドがなくボラティリティの低い膠着したレンジ相場になっている③でエントリーできていると、損切り幅も狭くでき、その後④に移行して動くと効率的なトレードができます。③から①に移行する急激な動きになっても既にポジションがあるので慌てませんし、一気に利益が増えていきます。
ボリンジャーバンドを描画したチャート①で具体的な動きを確認すると、トレンドがあってボラティリティの低い場面とは、バンドウォークしてσ(シグマ)に沿って動く④です。こうした場面はボリンジャーバンドだけでなく、ディナポリや21SMAといったトレンド系のインジケーターでは、どれもトレンドが出ていることを示すはずです。
また、こうした場面になる前のボラティリティの低い小さなレンジの③は、ボリンジャーバンドがスクイーズして動き出す前の場面です。より長い時間軸でトレンド方向がはっきりしていれば、短い時間軸が③の小さなレンジになっている場面で相場に入り、その後の大きな動きを取るのが一番楽で勝ちやすいと思います。
急に動き出す相場は勝ちにくいので避ける
逆に膠着していた相場が急に動き出す①の場面は、私が不得意で勝ちにくい相場です。ボラティリティが高くなり、ストップ幅が分かりにくく苦手です。また動き出した理由がニュースのヘッドラインなのか需給なのか判断できず、情報を得るのが遅い個人投資家は出遅れがちで不利だと思っています。
ボリンジャーバンドのエクスパンションは、ボラティリティの高い、一方的に動く場面なので瞬発力で飛び乗らなければなりません。ただ、その動きがどの程度の値幅の動きになるかは分かりません。そのまま動きが続かず、この事例のように飛び乗ったら動きが止まったとか、②のようになって急に戻される場合もあります。
ボラティリティが高いのは、為替市場の取引が減って流動性が低下しているからなのかもしれませんが、FXで取引量を測る指標はありません。そのため相場の急変についていくのは得策ではないと思っています。私は①の場面は避け、その前の③で仕込むか、トレンドが明確に落ち着いた④で取引するようにしています。当然②は手出ししません。
日足でトレンドを判断 時間足でエントリー!
私は日足でトレンドを判断して、4時間足または1時間足でエントリーのタイミングを探してポジションを取ります。流動性があり、一定方向への安定したトレンド相場が一番勝ちやすいからです。ボラティリティが落ち着いたトレンドの場面では、重要イベントを回避すれば急変することは少なく、エントリーの際のストップの位置も分かりやすくなります。また、トレンド相場では多少エントリーが甘くなっても相場自体が自分のポジションを助けてくれるのも、私が好む理由です。
今回は分かりやすい場面を単純化してお伝えしましたが、現実のトレードはもっと複雑です。相場では思ったように動かないことも多くあり、トライ&エラーを続けることになります。その現実の対応力を持つには、何より場数を踏んでFXを続けることが一番大事です。損失を抑えつつ、より確率の高いことをし続けるのが、勝ち残る唯一の道だと信じています。
よろしいですか?