“需給の鬼”こと井上哲男の相場の潮流〜プロの市場分析ノウハウと注目銘柄が分かる!|第6回
井上哲男さんプロフィール
いのうえ・てつお。スプリングキャピタル社代表、日本証券アナリスト協会検定会員。上智大学卒業後、国内保険会社の運用部門長を経て、(現オールド・ミューチュアルグループ)UAMジャパン・インクのチーフ・ストラテジスト兼日本株式運用部長に転身。その後、プラウド投資顧問、アジア最大級のファンド・オブ・ファンズの運用会社であるMCPグループなどで同職を務めた後、独立。“需給の鬼”と呼ばれ、日経CNBCテレビ「夜エクスプレス」「〜攻めのIR〜MarketBreakthrough」、ラジオNIKKEI「アサザイ」などのパーソナリティも務めている。
オリジナルのテクニカル分析や需給動向により、独自の視点から株式相場(株式指数)の方向性を分析する井上氏のメルマガ「相場の潮流」、井上氏とBコミさんこと坂本慎太郎氏が相場解説、ピックアップ銘柄の紹介を行う動画スクール「勝者のスクリーニング-株ハイブリッドバトル-」がGogoJungle(ゴゴジャン)から好評発売中。
メルマガ:相場の潮流
動画スクール:勝者のスクリーニング‐株ハイブリッドバトル‐
※この記事は、FX攻略.com2020年9月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
2025年の崖
2020年度の企業業績は、幅広い業種においてコロナ禍の影響で大きく落ち込むことが予想されているが、そのような環境の下、消去法的に投資対象を「情報・通信業」「サービス業」のうち、サブスクリプション・モデルが構築できている企業に移行しているファンドの動きが目立ち始めた。
前年度の情報・通信業、特にビジネス向けソフトウェア関連企業は、スポットに生じたいくつかの要因が不利に働いたが、それらの要因とは消費税率再引き上げ、Windows7のサポート終了、そして急きょ必要となった企業のテレワークへの対応である。これらにより、ビジネスソフトウェアを購入予定であった顧客が、その資金を消費税関連ソフトウェアやPCのリプレース、テレワーク対応システムなどに振り向けたのであった。
現在「AI」「IoT」「RPA」「ビッグデータ」などの"耳ざわりの良い単語"がキーワードとなっているが、一方で、業界が非常に大きな問題として認識していることに"2025年の崖"という、経済産業省が生み出した言葉がある。同省は「デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた研究会」において論議されてきた内容を、2018年9月に中間とりまとめとして公表したのだが、それによると2015年時点で既に企業の基幹系システムの2割以上が構築から21年以上経過したものであり、その比率が2025年には6割程度になるという。一方で、2024年には固定電話網PSTNが終了し、2025年にはSAPのERPサポートが終了する。
企業が、これらを用いた自社のレガシー・システムを変更し、新たなDXの構築に成功しなかった場合、日本の経済損失額は、最大で現在の国内総生産(GDP)の2%以上に相当する年間12兆円にも達する可能性があると同省は警鐘を鳴らしている。
リーマンショックのあと、一時的にビジネスソフトウェア企業の業績は落ち込んだが、それでも企業は次の戦略のために必要なソフトウェアの投資、IT関連投資をすぐに再開した経緯がある。今回、その「次の戦略」に新たなDXの構築が含まれていることは確かであろう。そのため、企業のDX構築に向けたサポートを強く意識している企業群のうち、2社を紹介する(2020年6月28日寄稿)。
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