【無料全文公開】現役為替ディーラーが何でも答えます!みんなのQ&A[トレイダーズ証券みんなのFX 井口喜雄](FX攻略.com2017年6月号)
疑問をぶつける相手はいないし、調べてもよく分からない…。そんな悩みがあったら、この企画にお任せください。トレイダーズ証券の井口さんが、あなたの質問を解決します!
井口喜雄さんプロフィール
いぐち・よしお。トレイダーズ証券市場部ディーリング課。認定テクニカルアナリスト。1998年より金融機関に従事し、主に貴金属や石油製品のコモディティ市場を中心としたカバーディーリング業務に携わる。2009年からみんなのFXに在籍し、「米ドル/円」や欧州主要通貨を主戦場にディーリング業務を行う。ファンダメンタルズから見た為替分析に精通している他、テクニカルを利用した短期予測にも定評がある。最近では、みんなのFXの無料オンラインセミナーにも登場し分かりやすい講義内容が好評を得ている。さらにTwitterでは、プロディーラーが相場についてリアルな意見を発信しているので要チェック。
Twitter:https://twitter.com/yoshi_igu
※この記事は、FX攻略.com2017年6月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
Q5.なかなか利益が上がらず、いつもコツコツドカンでやられてしまいます。どうすれば克服できますか?(広島県/50代/女性)
A.得意のパターンを作ることで、自然と克服できます
損はしたくない!が人間の本能
これまで数多くのトレーダーの取引を見てきましたが、やはり多くの方がこのコツコツドカンでやられてしまいます。読者の中にも同じ悩みを抱える方が大勢いるのではないでしょうか。
さて、非常に厄介なコツコツドカンですが、この心理状態は研究されていて、プロスペクト理論というもので結果が出ています。いきなりプロスペクト理論といわれてもよく分からないと思いますが、簡単に説明すると以下のようなものです。多くの投資家は100万円得した喜びよりも、100万円損したショックの方が大きくなるのです。
儲けたいという欲望以上に、損したくないという本能が、人間にはあるということです。つまり目の前に利益があればすぐ決済をしてしまう一方、損失は許容できずに決済ができない心理状態に陥ってしまいます。これがコツコツドカンの正体なのです。とはいえ、メンタル的な要素が大きく、正体が分かっていても、ついつい罠に陥ってしまうのがこのプロスペクト理論の厄介なところです。
コツコツドカンの正体はプロスペクト理論。人間は本能的に損切りができない。
「反省→改善→検証」を繰り返す
ではコツコツドカンに陥らないためには、どうすれば良いのでしょうか。このコツコツドカン克服に必要なのは売買ルールです。なぜなら自分の決めた売買ルールに基づき、ひたすらトレードを繰り返すことがメンタル強化の近道となるからです。
ではルールはどのように作るのでしょうか。初めて売買ルールを作るのであれば、難しく考える必要はありません。「エントリーポイント」「損切り幅」「利食い幅」の三つの条件を決めるだけで良いのです。
具体例を挙げると、「一目均衡表の雲下限付近まできたらエントリーして、雲下限から10pips下抜けた場合は損切り、雲上限まできたら利食いの売りを入れる」。こんな感じで、まずは得意パターンのシナリオを1個作ってみます。あとはなるべく感情を入れずにそのルールに基づいて粛々と取引を行います。
そして「反省→改善→検証」を繰り返し、自身のトレードに優位性があることを確認できるまで、何度も行うことで売買ルールが完成していきます。苦労して作り上げた自身の売買ルールが完成したころには、既にコツコツドカンは克服されているはずです。
恒常的に収益を上げている投資家のほとんどは、自身の売買ルールを持っています。売買ルールを作ることは勝利への第一歩なのです。
Q6.雇用統計やFOMC、ECB、日銀発表で、相場を一瞬のうちに大きく動かしているのは誰ですか?(神奈川県/20代/男性)
A.最近はAIを使った投機筋が大きな変動の一因です
各国中央銀行は最大のプレイヤー
2016年の外国為替市場は、1日当たりの取引量が約500兆円あり、市場規模は世界一を誇っております。この巨大な外国為替市場において価格を大きく動かすことは容易ではなく、限られたプレイヤーのみマーケットを動かすことができます。
まず価格を動かせるプレイヤーの筆頭として考えられるのが、各国の中央銀行です。中央銀行は外国為替市場に対して市場介入する際、数兆円規模の資金を投入しレートを数円動かすことがあります。ただし、これは国家レベルの資金を用いており、ヘッジファンドであっても、この規模の金額を動かすことはできません。
ヘッジファンドの超高速取引
では、米国雇用統計や米連邦公開市場委員会(FOMC)、欧州中央銀行(ECB)、日銀発表時に相場を一瞬のうちに大きく動かしているプレイヤーは、誰になるのかという疑問が残ります。もちろん中央銀行ではありません。
ニュースを見ていると、投機筋の動きによって大きく動いたと表現されることがあります。その投機筋の中でも人工知能(AI)を駆使した超高速取引(HFT)を行っている業者が、相場を一瞬のうちに大きく動かしているプレイヤーの正体と言って良いでしょう。
AIを駆使したHFTとは、大量のデータを高速で分析し、ミリ秒(1000分の1秒)単位で一定のロジックに合わせて自動的に売買するシステムのこと指します。
1秒にも満たぬ間に大量注文が殺到
例えば雇用統計などビッグイベントがあれば、経済指標内容の結果を瞬時に読み取って、注文を出すアルゴリズムが組み込まれています。もしくはFOMC、ECBといった要人発言で大きく値が動くイベントでは、テキストマイニングと呼ばれるアルゴリズムで、発言の中からキーワードを見つけて売買を仕掛けるものもあります。
このように、ミリ秒間に大量の注文を出すことで相場を大きく揺れ動かしており、複数のHFTが同時に注文を出すため、一瞬のうちに値段が大きく動くのです。
個人投資家の皆さまが内容を判断して注文を出したころに、アルゴリズムは2歩も3歩も先に進んでいます。指標発表直後のスピード勝負ではHFT業者に勝つことはできないということも、覚えておかなくてはなりません。
よろしいですか?