【無料全文公開】元為替ブローカーから学ぶFXの売買プランの作り方|第1回 イントロダクション[浅野敏郎]
外国為替売買仲介業者での勤務経験を持ち、1985年プラザ合意やバブル崩壊など、歴史的な激動相場を第一線で経験した、浅野敏郎さん。そんな為替相場の生き字引的存在が、私たちに売買手法や相場観構築のノウハウを解説してくれる企画がスタートします。
※この記事は、FX攻略.com2017年5月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
浅野敏郎さんプロフィール
あさの・としろう。東短グループの外国為替売買仲介業者である、トウキョウ フォレックス株式会社、さらには、為替取引の世界シェア80%以上を誇るEBS社(現ICAP)等での勤務経験を持ち、1985年のプラザ合意、その後の超円高時代、バブル崩壊、2000年のユーロ統合などの歴史的相場を第一線で経験し、相場観を養う。その後、2社のFX取引会社の創業、プライベートFXファンドのディーラーも経験。現在、投資の学校グループの日刊ブログで執筆を担当。特技の映像編集を活かした分りやすい映像作品の支持者も多い。
為替ブローカー出身者の新連載
私が外国為替を詳しく知ったのは、大学時代に外国為替をテーマにしたゼミでのことでした。新卒の就職先となった、銀行同士の外国為替取引を仲介する事業者(以降、為替ブローカーといいます)の存在を知り、相場に興味を持ったのです。
卒論のテーマに「為替相場の分析」を選ぼうとした際、「それが分かれば世の中、苦労はない」と教授に一蹴された記憶もありますが、今こうして「相場の分析」に関して寄稿する機会が得られた縁を不思議に思います。
為替ブローカーの業務は、売買のティックレートを担当銀行へ読み上げ、銀行から売買注文を受けて成立させていくといった内容で、毎日が正に相場そのものでした。どのようにして為替の取引価格が出来上がり、どのように取引が発生して流れていくのかを業務にできたことは貴重な経験となり、その後、FX取引が自由化され一般に広まる過程で、FX取引会社の創業メンバーとして、2社に関われた背景にもなりました。
この間、小規模の為替ファンド・ディーラーを経験して取引技術を磨く傍ら、一般投資家の相談を受けるにつけ、彼らの投資姿勢や運用方針に疑問を持ったことが、後の私のメディア活動や、投資教育の現場業務に現在も関わっている一因です。
しかし、あれから10年以上の時が経ったにもかかわらず、投資教育の現場から見えてくる一般投資家の悩みや相談は、昔とほとんど同じであることに気付いた点は、今回の寄稿の大きな動機になっています。
いつも売買プランを持っていますか?
さて、この連載を通じて読者の皆さんへ一貫してお伝えしたいことは、「実際に取引を開始する前に、ご自身の“売買プラン”を持てるように準備しよう!」ということです。
売買プランとは具体的に、①現在の相場は売るのか買うのか様子見かの判断をして②幾らで買うのか売るのかを決め③損切りの水準と利益確定の水準をあらかじめ決める—ということです。
一般投資家との対話で最も多く聞かれる質問が、「これから上がるか下がるか?」と、「どこまで下がるか上がるか?」の2点です。そのときにポジションがあるかないかで答えは全く異なりますが、この2点を自分で判断できないこと自体まず、準備もプランもない証しであり、取引のスタートラインに立つべきではありません。
最近、相場予想はすべきか否かを問う話をよく聞きますが、私の持論は「予想は必要」だということです。当然、予想に固執しない柔軟な対処は必要という前提ですが、大きな利益を得るためには、大相場である程度の期間を保有する必要があり、そのためには基本的なプランがどうしても必要で、プラン自体がある意味の予想になるからです。
「一度決めたプラン(予想)は何があっても変更できない」というのが、予想否定派のベースにあるようですが、実はそれは大きな誤解です。例えば、買うという判断は今後上がると予想したからで、実際に上がらなければ既に予想は外れていることになり、当初の判断は変更すべきなのです。
逆に、既に予想が外れているにもかかわらず、損切り水準をさらに遠ざけて損切りに掛かりにくくしたり、予想が合っているにもかかわらず、プランを無視して目先の利益で決済したりする行為は、ノープランで取引を始めたことと同じですから、こうした変更は論外でしょう。
判断基準はチャートポイント
おしまいに、私の判断基準を簡単にいうと、相場の売買ポイントはチャートポイントにしかなく、より強いポイントを探すことが、予想に直結する相場分析だということになります。恐らく、シグナルによる売買判断や短期で売買タイミングを探す手法とは、対極にあるかもしれません。
ここでいうチャートポイントとは、サポートとレジスタンスを指しますが、これらのポイントは現在の相場と比較して、上にあればレジスタンス、下にあればサポートになるだけで、基本的には表裏一体の価格ポイントでしかありません。
たまたま私自身が別に仕事を持つ兼業トレーダーで、相場に割ける時間に限界があるため、その場にいないと対応が難しいシグナルや、短期の取引が不向きだったのが背景にあり、この状況を解決するには、事前に売買プランを作れる判断力を身に付けるしかないと確信したからでした。
これから私が皆さんにお伝えしたい内容は、今後の値動きを判断する基礎的な方法で、ほとんど全ての判断は具体的な価格で示されます。したがって、これは運用途中の判断にも応用できますので、あえて今深く堀り下げ、私なりの判断基準をお伝えしたいと思います。
よろしいですか?