【無料全文公開】勝てる相場、勝てない相場[不動修太郎]
FXで安定した収益を得る上で大切なのは、今の相場が勝ちやすいのか、それとも勝ちにくいのかを見極めることです。この見極めこそが、勝敗を左右する大きなポイントであるといっても過言ではありません。ここでは個人投資家ならではの視点で、FXの勝てる相場と勝てない相場の違いについて解説していただきます。
※この記事は、FX攻略.com2017年5月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
不動修太郎(ふどうしゅうたろう)プロフィール
為替の講師、執筆者。出版社からセミナーDVD、対談CDを発売。金融取引所、証券取引所、FX業者、投資信託業者などでの講演の他、雑誌への執筆、FX・株式のスクール講師を務めている。
公式サイト:不動修太郎の「ニュース報道の裏側」
twitter:https://twitter.com/syutaro_fudo
機関投資家と個人の違い
為替を取引する銀行などの金融機関を、機関投資家といいます。そういう会社では為替を有利に取引するため、組織を作り、多くの従業員が業務を分担しています。
機関投資家には、取引に必要な情報を素早く入手し分析する部署があり、資金を調達する他、総務など多くの組織があります。ですから、私のような個人投資家に比べると、機関投資家は情報入手が速いので、おしなべて為替取引を有利に進めることが多いです。
一方で、機関投資家には多くの人たちが勤務しているので、為替を売買するディーラーは、相場の予想が難しい時期でも長く売買を休むことはできません。
私たち個人投資家は、予想が難しい相場になったら相場を休むことができます。これこそが、個人投資家の強みです。為替を動かすニュースの情報量で機関投資家に劣る私たち個人投資家が、FXの勝率を高め、安定した収益を得るには、難しい相場を休むに限ります。
難しい相場とは?
さて、サブプライムローンのような経済不安があると株、為替は大きく動きますね。英国の欧州連合(EU)離脱の国民投票、米国の大統領選挙で株、為替が大きく動いたのは、記憶に新しいです。
為替介入のうわさ、選挙などの政治的なイベント、大きな経済危機が起きた直後の相場は、予想が難しいです。最近では米大統領のトランプ氏が、ツイッターで過激な主張を繰り返し、そのたびに株価、為替が動きましたが、これからはそういう厄介な相場と付き合う必要がありますね。
先行きに不安な相場では、時折、大きく円高に動く傾向が出てきます。弱気な相場では、ちょっとした悲観的なニュースで円高になり、しばらくするとまたゆっくりと円安に戻すという、値動きが大きい相場になりがちです。
ニュースが出ると、すぐに為替が動きますが、私たち個人投資家は機関投資家よりも情報の入手が遅いケースが多いです。そのため、小さいニュースに相場が敏感に反応し、大きく動く相場では、個人投資家は不利な立場に置かれます。このような相場は個人投資家にとって、難しい相場、勝てない相場でしょう。
チャート分析
では、ここで次の「ユーロ/円」のチャートにボリンジャーバンドを書き込んだチャートを見てください。
チャートの青い曲線は移動平均線で、オレンジの曲線は上がプラス2σで下がマイナス2σです。Aの矢印を付けた時期から値動きが小さくなっていますね。そして矢印Bの所で、ボリンジャーバンドの上下の曲線が近づいています。これをスクイーズ(絞り込み)といいます。
相場は、より多く買われれば上がり、その逆により多く売られれば下がります。スクイーズのときには、通貨の売りと買いの量がほぼ同じなので、上にも下にも動かないのですが、その状態は運動会の綱引きで両チームの引く力が等しく、綱がどちらにも動かない状態と似ています。
このような相場は、一見すると穏やかに見えますが、その後にちょっとしたきっかけで大きく上昇、あるいは逆に下落することが多いものです。また、重要指標の発表の前など、多くの投資家が様子見をしている時期に相場は動かなくなります。
いずれにしてもボリンジャーバンドでスクイーズになると、その後に上がるか下がるかの予想が難しいです。そのため、もしもチャート内のAからBの時期にポジションを持ってしまうと、その後で大きい損失になることがあります。
このように相場がほとんど動かない凪(なぎ)、あるいは逆に上下に激しく動く荒れ相場では、その後の値動きの予想が難しいです。そのような相場は、勝てない相場といって良いでしょう。今回はボリンジャーバンドを例にとって解説しましたが、ほとんどのテクニカルは凪、または逆に激しくもみ合う相場ではダマシといって、予想が外れることが多くなります。
テクニカル、酒田五法などの手法は、過去の相場の値動きから経験則で将来の相場の動きを予想します。激しい相場ではその経験則が効かず、テクニカルの予想が外れやすくなるので、手を出さない方が良いでしょう。
勝てる相場
チャートの後半でピンクの破線で囲んだ時期は、為替の値動き(ローソク足)がプラス2σのバンド曲線に沿って上昇しています。これをバンドウォークといい、相場に上昇または下落のハッキリしたトレンド(方向性)が出たことを示しています。
他のテクニカルを使っている方は相場の動きをよく見て、そのテクニカルで相場を正しく予想できたかを振り返ってみてください。しっかりと勉強すれば、私たち個人投資家でもテクニカル、チャート分析で相場をかなり正確に予想することができます。
私たち個人投資家にとっては、テクニカルで予想しやすい相場こそが勝ちやすい相場なのです。
よろしいですか?