FXと人|Vol.4 平野朋之さん
ファンダメンタルズやテクニカルといった各種分析や、自動売買、システムトレードといった運用方法に目を奪われがちですが、FXの本質は人間と人間の関わり合いで生まれる価格推移です。分析や運用方法が相場を動かすことは決してありません。どんな相場も、動かすのは無数の人です。この企画では、徹底してFXにおける「人」にクローズアップします。第4回ゲストは、テクニカル分析の達人として、セミナー講師としても活躍されている平野朋之さんです。投資との出会いや、過去に読みあさった投資関連書について、そしてなぜ人に投資を教えるかについても語っていただきました。
平野朋之さんプロフィール
米国の大学を卒業後、海外取引所関連の仕事に従事後、ひまわり証券へ入社。FX業務全般、自己売買部門でディーラー、投資情報室にてFX、日経225の情報発信、セミナー講師を務める。現在は独立して株式会社トレードタイムを設立。自己売買、投資教育、個人投資家支援を行いつつ、FX会社などへの情報発信やセミナーを精力的に開催中。
●聞き手:鹿内武蔵(FXライター)
※この記事は、FX攻略.com2020年12月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
分厚い海外の投資本にボーナスをつぎ込んだ
——投資を始めたきっかけについて教えてください。
国内と海外の市場の発注やオーダーを取り次ぐ仕事をした経験から、投資の世界の面白さを知りました。特にシカゴやニューヨークの金融市場に憧れました。23歳、24歳くらいのときで、現地にもよく行きました。今はもうなくなりましたが、当時は取引所に実際に人が立って、人間同士で取引が成立していました。あの世界がかっこいいと思ったんですよね。
当時の仕事はトレードをしても良かったので、日経225先物のオプション取引を始めました。これが私の初めての投資でした。多くの方は、株式や投資信託から始めるのかもしれませんけど。
——株や為替はどういうきっかけで始めましたか?
オプションは日経平均のものでしたから、そこからの流れで現物株の取引も始めました。当時の雑誌に掲載されていた、アナリストの推奨銘柄を信じて買ったりもしていましたが、結局ほとんどが儲からなかったですね。投資信託はあまり面白いと感じなかったので少ししかやっていません。
その後、2000年前後にようやく日本でもFXが登場して、外国為替を個人でも取引できるようになりました。私は日本で一番最初にFXを始めた今のひまわり証券で働いていたので、FXと接する機会が株よりもずっと多くなっていきました。
——これまで投資の勉強はどういった形で行ってきましたか?
ひたすら投資関係の書籍を買い、読みまくりました。その多くはパンローリングの投資関連書でした。今でこそパンローリングは有名な出版社ですけど、当時はそこまでの知名度はなかったです。今はもうないんですけど、当時トレード関連の雑誌が1000円くらいで発行されていて、移動平均線のクロスで売買したらどうなるかといった手法を検証している特集がありました。これが本当に面白くて、新鮮だった記憶があります。こういうふうに検証していけば、自分でもオリジナルの手法が作れるんじゃないかと。でも残念ながらこのトレード雑誌は3号で廃刊になってしまいました。今でもバックナンバーを持っていますよ。パンローリングには、もう在庫はないかもしれませんね。
あとは、ひたすら骨太の投資書籍を読みまくりました。海外の分厚い投資の本を翻訳したものは非常に高価で、高いものだと5万円以上するものもありました。当時はボーナスのほとんどをつぎ込んでいて、150冊くらいは買って読んだと思います。新刊で手に入らないものは、ヤフオクで探したりしました。
こういう本からトレードのアイデアを探したものです。当時はユーロという通貨が誕生したばかりで、本に載っている検証結果はドイツのマルクが多かったです。旅行に行くときにも、必ず1冊持っていく。通勤途中はもちろん読むみたいに、本自体が面白くてずっと勉強していました。まだインターネットに投資情報がたくさん出回る前だったので、本以外で学ぶ方法はなかったです。あとは海外でのセミナーのDVDもたくさん見ました。下に字幕が入っているんです。
——そういった骨太な投資の本と、書店の新書コーナーによく並ぶ、1500~2000円くらいの投資本はどこが違うのでしょうか。
よろしいですか?