ダウ天井打ちを的中、続報のドイツ発の急落も解説 井上哲男氏
井上哲男氏の10月16日の記事 ダウRSI合計は133.71まで上昇、来週中に天井打ちの公算大 が、ダウの天井を見事に的中させています。
その内容と、本日のドイツ発の急落後の解説を全文無料公開でご案内いたします。
潮流1148 テクニカル的に米株が上昇できない時間帯。リスクオフに注意1
配信日:2020/10/26 09:17
先々週の金曜日に、モニタリングしているオリジナルなテクニカル指標である「ダウのRSI合計」(RSI14日の5日、10日移動平均の合計値)が天井を打ち、「一気に上昇できない時間帯入り」と書いたが、先週、ダウは4週ぶりに週次の騰落がマイナスとなった。
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先々週金曜日の記事
配信日:2020/10/16 07:56
201016 ダウRSI合計は133.71まで上昇、来週中に天井打ちの公算大
本日は、「Sign」に書いたように、ダウRSIが来週天井打ちする公算が高まったので、ダウ、日経平均のRSI合計グラフを添付します。
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無論、現在、米国市場のテーマとなっているのは、10/1の崖(=春先に行われた経済対策であるコロナパッケージを受けて、米航空会社が人員削減を自粛していた期間の終わり)を越えてもまとまらない、追加の経済対策であり、金曜日も、3指数はそろって小幅続伸で取引を開始したが、その後、クドローNEC委員長が「景気対策交渉は現時点ではあまり動きはない」と発言した一方で、ペロシ下院議長は「大統領が支持すれば景気対策法案は11月3日前の通過が可能」と市場を明るくするメッセージを発したものの、(ここまで耐えていた同氏にしては非常に珍しいことだが)ムニューシン財務長官が、「ペロシ下院議長は非常に意固地であり、著しい(合意に向けた)ギャップが存在している」とコメントすると、株安・債券高となり、10年債は、ザラ場の最低利回りとなる0.829%をつけた。
この民主党ペロシ下院議長(女史)であるが、CNNのインタビューで、追加対策についてだけでなく、なんと自分の進退にまで言及した。いわく、「民主党が過半数を維持した場合は、議長職続投に意欲がある」とのこと。80歳ではあるが、まだまだやる気だ。
先週後半からの相場を見ていて、1つ気になるのが、やや投機的な小さな市場において、リスクオフの動きが出ていること。
先週木曜日のマザーズ先物の急落、そして、昨日、休日ではあったが、ビットコインが急落(139万8000円を付けた後に135万3000円程度まで下落)が、その代表的な動きである。ビットコインについては、PayPalの事業参入というビッグニュースで過熱感が出た後の利食いの動きとも考えられるが、新興国通貨の動きも含め、水面下のリスクオフの動きが出始めている懸念を持っている。
その要因は、地域的に、米国、欧州であり、米国については、上記、追加の経済対策が早期に行われるかということと、大統領選が終わっても、両者が敗北宣言をせず、年明けまで最終的な結果が出ないことが引き起こす政治の停滞、空白期間への恐れであり、欧州は、再度のロックダウン、そして、英国とのブレグジット(後の関税等)協議の難航、加えて、再度やかましいトルコの動きなどである。これらを解説していきたいが、今週については、米国の個別決算にも注目である。
先週のインテルは、データセンター部門の減速が際立つ内容で、「絶望的」とまで評するアナリストも現れ、同社株は金曜日に10.58%の大幅な下落を記録したが、今週は、GAFA、GAFMAウイークである。
その予定で、市場にインパクトを与えそうなところを抜粋すると、以下のようになる。
27日 キャタピラー、ファイザー、アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、マイクロソフト
28日 ゼネラル・エレクトリック(GE)、ボーイング、ギリアド・サイエンシズ、アムジェン、ビザ、フォード・モーター
29日 アルファベット、アップル、ツイッター、マゾン・ドット・コム、フェイスブック
潮流1149 ドイツ発の急落、SAPがADRで記録的な下げ 連載2
配信日:2020/10/27 09:31
昨日より「テクニカル的に米株が上昇できない時間帯。リスクオフに注意」の連載を始めたが、既に示現したのでタイトルは日々変更することとするが、連載は続く。
昨日、「リスクオフの要因」として、「米国、欧州」両地域における懸念材料をサラリと書いたが、その本質にあるものは、両地域というよりも、コロナ封じに成功した中国以外の地域において、「4-6月期GDPのかい滅的な数字、その後の、7-9月期の反動増によるあまり信憑性の無い高い数字」は織り込み済みであり、“その先”である、10-12月期以降への不安(緩慢な景気の戻り、若しくは再度のマイナス)が大きくなっているということである。
これまで、リスクオフの動きは先週の(日本)東証マザーズ指数、そして、日曜日のビットコインなど、“決してメインではない市場”で起きていた。また、アルゼンチン、南アフリカ、トルコなどで自国通貨安が起き、エネルギー価格も“いつ下落してもおかしくない状況”であったのだが、昨夜、ドイツの山頂で小石が転げ始め、米国にそれが伝播する形で、ついにメジャーな指数に波及してしまった。昨日書いた懸念が起きたのである。
引き金を引いた“小石”は“世界一のビジネスソフトウェア・メーカー”と呼んでもよい、独SAP社。
20年12月期第3四半期の決算を発表したが、通期の売上高について、IFRS(国際会計基準)に準拠しないベースでの見通しを4月時点から下方修正したのである。「新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大を受けて厳しい事業環境にある」としたが、(顧客である企業の)「出張精算処理や経理精算処理などの需要の持ち直しが今期中には見込めない」という。
これを受けて、ドイツDAXは3.70%と、9/21に記録した4.37%以来の大きな下落率となったが、驚いたのは米国ADR(預託証券)での同社株の扱いである。なんと、前日比23.15%安の115.02ドルで扱い(取引)を終えている。この下落率は、リーマンショック後の「戻り→ 再下落」となった2008年10月に記録した13.07%をはるかに上回るものである。
しかし、冷静に数字を見てみたいが、為替影響を除いた同社の通年売上高の見込みは、これまでが「278億~285億ユーロ」、そして、今回の下方修正された金額は「272億~278億ユーロ」。ここまで大騒ぎするような下方修正ではないのだ。
なぜこのようなことになったかと言うと、まず、事前の市場予想が“期待値込み”で「332億ユーロ」と大きかったこと、そして、新型コロナウィルスの新規感染者数及び各国の対応がニュースで非常に大きく取り上げられていることが重なったからと思われる。
スペインが25日に再び非常事態を宣言したのに続き、イタリアも26日から映画館や劇場の閉鎖を決め、米国においても、CNBCテレビが「(米国)新規感染者数の過去7日間の平均が6万8767人と過去最高レベルに達した」と報じるとともに、すっかりお馴染みになった米ジョンズ・ホプキンス大のHPの集計は、23日のそれが8万人を超え、7月を上回って過去最高となったことを静かに告げていた。
結果、春先に新型コロナウィルスを材料として大きく下落した銘柄群に再度売りが浴びせられ、“今日、何も悪いことはしていない” 米国クルーズ船大手のカーニバルにも飛び火し、先週、木曜日、金曜日に上昇していた時にはなかった売りの厚さによって、8.65%(終値:14.03ドル)もの大きな下落に見舞われた。
こうなると市場は悪いニュースを捜すもので、先週の23日にIHSマークイットが公表したユーロ圏の10月の購買担当者景気指数(PMI)が4カ月ぶりに好不況の境目である50を割り込んだことが再度取り上げられ、冒頭の「10-12月期以降への不安」につながったのである。
昨日、東証一部の売買代金は1兆5929億円と今年4番目の小ささで、8/24以来の1兆6000億円を割れとなったが、9月以降、米国市場が下落しても“小さな売買代金(狼狽売り無し)”で、無反応で乗り切ってきた日本市場が、今日どうなるかが、今後の他市場のリスクオフに巻き込まれるかどうかを測る意味で重要である。
よろしいですか?