【2020年12月16日】米国株の調整はいつ起きるのか 【江守哲リアルトレーディング・ストラテジー】
江守哲のリアルトレーディングストラテジー【2020/12/6号】より抜粋
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【米国株のトレード戦略】
米国株は堅調である。ナスダック指数が再び高値を更新した。FANG指数も2%超の上昇であり、ハイテク株への買いが入り続けている。やはりハイテク株への投資家の興味は尽きないようである。この日は主要株価指数がすべて上昇しているが、ダウ輸送株指数の上昇率が最も低い。他の指数が上げたことでついていく動きなのだろうが、上げ方が小さいことからも、この指数があまり上がりたがっていないことがわかる。この指数が下げ始めたときは要注意である。また、この日はVIXとVXNが大きく下げている。投資家の楽観度がこの日は強かったといえる。
しかし、短期的には過熱しすぎているとの見方は変わらない。NAAIM INDEXの過去2年間で最高水準での推移や、BOFAが発表しているブル・ベア指数でも、売りのシグナルが3年ぶりに点灯している。2018年1月にこのシグナルが点灯したことがあるが、その後に株価は10%を超える下げを見ている。この指数の確度が高いことは、金融市場では常識的になっている。それでも投資家が株式を買い続けるのは、ワクチンへの期待とこれまでの上昇に乗り遅れたくないとの強迫観念があるからであろう。しかし、このような投資判断はきわめて危険である。今回の株高の結末がどうなるのか、非常に興味深い。
短期トレード戦略は変わらない。ダウ平均、S&P500、ラッセル2000、ナスダック指数、ナスダック100、FANG指数はすべてロングの指示である。ただし、調整が近いとの見方は変わらない。保有しているポジションは手仕舞い売りをして、様子を見てもよいだろう。個人的にはすでに短期ポジションは解消している。ここからの上げを取れなくても、特段問題はない。下げのリスクのほうが大きい。リスク/リワードの点からも、ここからのロングは賢明ではないだろう。また、FOMCの結果と市場の反応も気になるところである。市場の期待を下回る結果になれば、手仕舞い売りの格好の材料になるだろう。すでに買い手は高いところを買っている。下げると評価損を抱える投資家は相当数いることだけは確かである。
長期的なポートフォリオ戦略では、今週は特に押し目買いのタイミングを注視しておく。直近高値を基準に5%下の水準から2.5%ずつの下落で、最大20回に分けて買う。最低でも10%は下げてほしいところである。やはり長期投資では、できるだけ安いところを買いたい。いまから準備をしておけば、買いのチャンスを逃さないだろう。ダウ平均では、28800ドル以下、S&P500では3525ポイント、ナスダック指数であれば11975ポイント以下から買い下がりを開始する。どの指数を買うかはそれぞれの判断でよいが、S&P500が無難であろう。ナスダック指数あるいはナスダック100でもよいだろう。高値から最大で50%下げても買えるように資金を準備し、下げれば粛々と買い下がっていく。
この長期ポートフォリオ戦略では、CFDやETFなどを利用して投資するのがよい。できればレバレッジをかけないほうがよい。その意味では、現物ETFがよいだろう。そして、徐々にロングを積み上げていきたい。その結果が資産拡大につながることになる。大きな押しで買うことができれば、徐々に資産が増えていくだろう。
基本的には5割下げでも買える余力を残しておけば、ほとんどのケースで将来的に報われる。株価は最終的には上昇する。それを忘れて、一度に買うからおかしなことになる。資金分散・時間分散を行えば、大きな下落を利用して押し目を買い、将来に収益化することができる。常に現金を残し、下げ相場で買うことができるようにしておくことが、長期投資で資産を増やすもっとも重要なポイントである。個人的には、「株式・金・現金3分割法」が良いと考えているが、最終的にはインフレが強まっていくにつれて、現金の多くを株式と金に振り向けることになると考えている。
<米国株式市場の短期トレード戦略>
ダウ平均:ロング
S&P500:ロング
ナスダック総合指数:ロング
ナスダック100:ロング
FANG指数:ロング
ラッセル2000:ロング
SOX:ロング
VIX:ロング
VXN:ロング
(ただし、株価指数は手仕舞い売りを勧める)
【米債券トレード戦略】
米10年債先物はショートを維持する。長期金利は上昇している。しかし、実態はリスクオフに備えるべき状況のように見える。今後は債券が買われ、利回りはいったん低下する可能性もあるだろう。一方でハイイールド債(HYG)はロングを維持する。無論、下げに転じればすぐに撤退である。CFDを利用すれば、これらの債券はトレードが可能である。もっとも、できれば債券はロングしたくない。一方で、リスクオンの状態になれば、金利はさらに上昇し、リスク資産であるHYGも同時に上昇するだろう。金利動向は、市場動向を見極めるうえで重要な指標である。HYGの動きをみることで、投資家のリスク許容度が図ることができる。
長期的なポートフォリオ戦略では、常に米国債を保有しておくとよいだろう。ただし、徐々に減らしたほうが良いだろう。これからは金と現金が優位になるとみている。株式4割、金3割、現金3割が理想的である。
<債券市場の短期トレード戦略>
米10年債先物:ショート
米ハイイールド債(HYG):ロング
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【日本株式・債券市場の市況解説・分析】
シカゴ日経平均先物:26795(+105)<+0.39%>
日経平均株価:26687.84(-44.6)<-0.17%>
TOPIX:1782.05(-8.47)<-0.47%>
JPX400:16109.84(-85.22)<-0.53%>
マザーズ指数:1171.07(-16.81)<-1.42%>
日経平均先物(第1限月):26630(-60)<-0.22%>
TOPIX先物(第1限月):1777.5(-9)<-0.5%>
JXP400先物(第1限月):16090(-70)<-0.43%>
マザーズ先物(第1限月):1147(-30)<-2.55%>
国債先物(第1限月):152.16(-0.04)<-0.03%>
日経VI:19.45(-0.08)<-0.41%>
東証リート指数:1713.09(-3.03)<-0.18%>
日本2年債利回り:-0.149%(-0.007)
日本5年債利回り:-0.127%(-0.004)
日本10年債利回り:0%(-0.018)
日本株は反落。空運や海運、鉄鋼など景気敏感株を中心に売りが広がった。銘柄の54%が値下がりし、値上がりは41%。出来高は11億1825万株、売買代金が2兆2219億円。日経平均株価は26600円台を中心にこう着感を強めた。株式相場は不安と期待の綱引き状態になっているとの指摘が聞かれる。日本国内では「GOTOトラベル」事業が全国的に一時停止される。また、米NY州ではロックダウンが現実味を帯び、世界的な経済活動の再停滞が懸念されている。一方、企業の景況感は改善傾向にある。金融緩和の長期化や米国の追加経済対策への期待感も根強い。好悪材料が入り交じり、日経平均は方向感を失っている。
12月11日現在の2市場信用取引現在高(概算)は以下のとおり。
(金額ベース)
売り:8979億6100万円(前週比63億1100万円減)
買い:2兆4946億1200万円(前週比82億6100万円減)
信用倍率: 2.77倍(前週2.76倍)
(株数ベース)
売り:4億9465万9000株(前週比595万8000株増)
買い:21億4823万2000株(前週比1233万2000株増)
【日本株のトレード戦略】
日経平均先物はシカゴ市場では上昇している。米国株の上昇につれている動きであろう。しかし、26800円が重い状況である。これを超えると、27000円超えも視野に入ってくるだろう。しかし、米国株が異常なほど過熱している状態では、日本株に短期的に強気になるのは難しい。今の状態は次の動きに備える展開であり、これを通過しないと先が見えてこない。できれば高値で買いついた向きの投げを誘うような調整があったほうが、その後の上値は軽くなる。市場では「日経平均3万円」などの声も聞かれるが、そのような上昇を期待する前に、まずは調整をこなすのが先であるように感じられる。
そのような動きが年内に起きるのか、それとも年明けになるのかはわからない。いずれにしても、相応の調整は不可欠であろう。今回調整が入るとすれば、最低でも10%の調整になると考えている。現状から10%下げると、24000円程度までの調整になる。ここまでの下げは感覚的には想像しづらいが、下げるとそれくらいの調整は十分にあり得る。下げてほしいと考えるのは、やはり安いところを買いたいという意識があるからである。それは他の投資家も同じであろう。下値で買えなかった投資家はみな同じ心理状態であろう。
しかし、いったん下げ出すと買いの手が引っ込むのが相場の世界である。おそらくそうなるだろう。それでも、24000円くらいまで下げてくれれば、非常に買いやすくなる。繰り返すように、今週は調整しやすい日柄である。調整してくれると非常にわかりやすい。この1カ月半、かなりの勢いで上昇してきた。そろそろ調整があってもおかしくはない。ひとまず、明日のFOMCと17・18日の日銀金融政策決定会合の結果と市場の反応を見たい。短期的にはこれらは一定の注目を集まるだろう。とにかく、いまは高値を買わず、安値を待ちたいところである。
短期トレード戦略は、日経平均先物とTOPIXはロングの水準である。ただし、個人的にはすでに手仕舞い売りをして、下げに備えている。今の水準は短期的には中途半端であり、あまり買いたくない。新規のロングはむしろ27000円を超えてからのほうが収益を上げやすいだろう。短期トレードの大原則は「トレンドフォロー」である。上げているものを買い、下げているものを売る。その意味では、いまの水準は新規ポジションを取るには中途半端である。ロングを維持している場合には、下げに注意しながらの対処になる。日経平均が26500円以下にまで下げると、売りが出始めるだろう。
長期ポートフォリオ戦略は、日経平均株価が25550円以下から買い下がりを開始する。下げたときに、その機会を逃さずに買うことができるかが資産形成の重要なポイントである。長期的な戦略では、直近高値の5%以下を買い始め、その後は2.5%刻みで買い下がっていく。40回に分けて、株価が半値になっても買えるように資金を分散する。40回が難しければ、5%刻みの買い下がりを20回でもよい。PBRが1倍の水準は22500円前後に上昇している。ここまで下げてくれれば、しっかりと買っておきたいところである。また一段安になり、PBRが0.8倍の18000円前後まで下げれば、絶好の買い場になろう。つまり、おおむね500円下げるごとに買い下がっていけばよいことになる。
繰り返すように、株価の急落はいつ到来するかは誰にもわからない。したがって、買えるように準備だけは常にしておく。資産全体の3割は現金で残しながら、安値での買いに備えておく。すべての資金を現時点で投資することは避けるべきである。投資機会は必ずやってくる。焦って高値を買わず、深い押し目を待つことが、長期的に資産を増やすうえでもっとも重要な点である。また、資金を細かく管理することが、成功への近道である。これをさぼると、最終的には上手くいかない。BPS以下になれば、徐々に買い下がっていけば、最終的には上手くいく確率は相当高いといえる。
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