中国恒大集団の信用懸念
経済情報
3年以上にわたって株価が下げ続け、高値から90%以上も下げ、日本で言えば株価40円くらいになった企業が、今更破たんしても、大事は起きないだろう。起きるなら、とっくの前に問題は起きている。
中国恒大集団(China Evergrande Group)の信用懸念
(中国大手不動産企業「中国恒大集団」が抱える3000億ドル(約33兆円)もの債務履行を巡る不安)
(注)中国不動産、住宅販売などのランキングが見つからないので、大手としておく。大手であることは間違いない。
中国大手不動産企業「中国恒大集団」の一部理財商品(資産運用商品)の償還が9月8日に期日通りに行われなかった。
中国住宅都市農村建設省は、不動産開発大手の中国恒大集団が9月20日が期限の利払いができない見込みだと主要銀行に通知した。
ブルームバーグによれば、ドル建て5年債(2022年3月償還、表面利率8.25%)の8350万ドルの利払い期日が23日に到来するようだ。さらに、29日に2024年3月償還債の利払い(4750万ドル)がある。30日以内に利払いができなければ、デフォルト(債務不履行)となる。
今回の問題(中国で不動産大手が破たんする懸念)の発端は政府による不動産市場の過熱抑制策である。
新型コロナウイルス流行後の経済対策として緩和的な金融政策が実施されたが、その副作用として不動産市場の過熱感が高まった。
政府は、その対応策として、2020年夏頃から住宅ローン総量規制、不動産企業の資金調達条件の厳格化など過熱抑制策を講じた。
すると、今度は、資金繰りにつまる不動産企業が出た。その最大手が中国恒大集団だ。
場合によっては中国恒大(こうだい)集団の事業規模や債務全体の大きさから中国経済金融に与える影響が懸念されるが、大事にはならないだろう。同集団への債権者がわかっているからだ。それに、同社発行債券はもともと低格付け(ジャンク級)で、債券保有者はそれをわかって購入している。また、株価や債券価格を見ても分かるように、既に債券価値は殆どなくなっている。問題が起きるなら、既に起きているはずだ。
但し、理財商品(年利7%をうたい文句にしていたものもある)の保有者は多く(といっても、7万人余り)、中国国内で社会的問題(自殺者や路頭に迷う人など)は起きるかもしれない。住宅購入予定者は物件が引き渡されなくなる。
リーマンショックの時は、債権者が特定できず疑心暗鬼をもたらした。
(サブプライム証券化商品の評価ができない上、誰が保有しているかわからなかった)
中国恒大集団の件は、日本のバブル崩壊に似ているかもしれない。金融システムへの影響は殆どないが、経済停滞が起きる可能性がある。当時、日本は米国に肉薄するほど経済規模は大きかったが、対外的に影響は殆ど与えていない。
というわけで、世界の金融市場や経済への影響は限られているだろう。
勿論、中国恒大集団への債権者(債券保有者など)、中国関連ジャンク債保有者は影響を受ける。
Bloombergによると、新興国市場債への投資に特化した英資産運用会社アシュモア・グループの中国恒大債保有高は4億ドル(約440億円)余り。ブラックロックとUBSグループ、HSBCホールディングスも中国恒大債を大量に保有している。高リスクの新興市場国ないしアジアのクレジットに特化した金融商品に組み込まれているものが多い。
中国では、中国当局が不動産バブル抑制措置を取り続けた結果必然的に起きたことであり、中国不動産市場の減速が長期化する可能性はある。(これも、日本と同じだ)そして、それは中国経済成長の鈍化をもたらすかもしれない。
中国には、日本と違って過剰な銀行という問題はなく、金融機関淘汰ということは起きないだろう。四大銀行は比較的健全で、仮に万が一の事態になっても政府がサポートするだろう。中国恒大集団の危機が中国の金融システム不安につながることはないだろう。
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