米国は堅調な成長を続けるも利下げは確実。トランプ米大統領はドル安政策に動くか[江守哲氏メルマガより]
GogoJungleが提供している江守哲さんの投資メルマガ「江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー」より、今朝配信されたものからほんの一部をご紹介。
〔CURRENCY MARKET〕
ドル円は上昇。米GDP統計の発表を受けて、円売り・ドル買いがやや優勢となり、108円台後半で推移した。19年4-6月期の実質GDP速報値は年率換算で前期比2.1%増だった。米中貿易摩擦の影響で設備投資が鈍化し、成長ペースは前期の3.1%増から大きく減速した。ただし、市場予想の1.8%増は上回ったことから、それほどの落ち込みではなく、堅調な成長が続いていると受け止められ、小幅に円安・ドル高に振れた。一方、GDP統計では、引き続きインフレの低迷も確認されたことから、30・31日のFOMCで0.25% の利下げが決まるとの見方が拡大した。大幅利下げ観測の後退を受けて、米長期金利が上向いたことで円売りが進み、一時108.80円まで上昇する場面があった。
ユーロドルは1.11ドル台前半で推移。ポンドドルは下落。ユンケル欧州委員長が英国のジョンソン首相に対し、メイ前英首相がEUと合意したEU離脱協定案が最善かつ唯一の提案と発言したことを受けて、ポンドドルは27カ月ぶりの安値に沈んだ。 CFTCが発表した投機筋の23日時点のIMM通貨先物市場での円先物の売り越しは9377枚となり、前週の1万1380枚から減少した。ロングポジションは前週比1737枚増の3万4642枚、ショートポジションは266枚減の4万4019枚だった。ユーロ先物の売り越しは3万9004枚となり、前週の3万1351枚から拡大した。ポンド先物の売り越しは7万8583枚となり、前週の7万6357枚の売り越しから拡大した。豪ドル先物の売り越しは4万7980枚となり、前週の5万2576枚から縮小した。
クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は、「トランプ政権は先週、為替政策について議論し、輸出を有利にするため為替市場介入でドル安を誘導する案を排除した」と発言した。高官が為替に関する政権内の協議を明らかにするのは異例である。市場でくすぶるドル安誘導観測の火消しを図った格好。ナバロ大統領補佐官は23日にホワイトハウスで開かれた会合で、中国への圧力を強めるため、為替介入によるドル安誘導を提案したが、トランプ大統領は即座に退けたとされている。ただし、トランプ大統領は26日に、「ドルに関して何もするつもりはないとは言っていない」とし、「ドル高は一面では素晴らしいことだが、貿易で競争を難しくする」と、明言を避けている。 トランプ大統領は、欧州や中国が金融緩和策により通貨安を誘導していると批判し、対抗策として中央銀行に当たるFRBに金融緩和を要求している。この日も中国の人民元相場が「非常に低い」と不満を訴えている。市場の一部では、トランプ政権が通商政策にドル安政策を関連付けるとの観測が浮上している。ただし、ムニューシン財務長官は「長期的に強いドルを信じる」と強調し、クドロー氏も「安定し、信頼のあるドルは世界の資金にとって魅力的だ」と、臆測を否定している。
ロシア中銀は政策金利を7.50%から7.25%に引き下げた。物価上昇が減速する中、年内に追加利下げを実施する公算があることを示唆した。利下げは今年に入ってから2回目。政策金利は昨年9月の水準に戻ったことになる。ロシアのインフレ率は、数年前は2桁台だったが、7月22日時点で4.6%に減速している。目標の4%に向けて収束しつつあり、中銀にとって利下げ余地が出ている。中銀は声明で「経済活動の減速のほか一時要因を踏まえると、短期的なインフレリスクは限定されている」とし、「経済が基調的な予想通りに展開すれ ば、今後予定される政策決定会合で一段の利下げが決定される可能性がある」とした。ロシア中銀の次回の政策決定会合は9月6日で、会合後にナビウリナ総裁が記者会見を行う予定。
【通貨トレード戦略】
ドル円は見送りとします。ターゲットレンジの上限としていた108.50円を維持しています。上昇基調が続きそうな雰囲気があります。しかし、まずはFOMCの結果と市場の反応を待ちたいと考えます。短期的な買われすぎ感も強いため、上値を買いたくない状況です。FOMCを受けて、10日の高値である108.98円を終値ベースで上回るほどの強さが確認されれば、考え方を変える必要が出てくるかもしれません。それまでは静観とします。逆に108.50円を割り込めば、ショートを検討しやすくなります。円先物ポジションもほぼフラットで、偏っていない状況です。どちらにも動ける状況ですので、動き出したほうについていくほうが賢明でしょう。
ユーロやポンドなど欧州通貨が依然として軟調です。豪ドルも下げ始めています。つまり、ドルの買い戻しが再び強まっているということです。これらの通貨はテクニカル面で売られすぎ感が強くなっており、戻りを試してもよい水準ではあります。したがって、FOMCを受けて買い戻しが入ってくるかを見極めることになります。急激に戻す可能性は十分にありますので、注意しておきたいところです。トランプ大統領がドル安政策を否定したかのように市場は反応していますが、米国の本音はドル安政策であることを常に忘れないようにしたいところです。通貨を安く誘導し、世界各国に使ってもらうことがむしろドルの安定につながると考えているわけです。安いからこそ、使いやすいわけです。
FOMCですが、0.25%ポイントの利下げはすでに100%織り込まれています。0.50%の利下げはまずないでしょう。パウエルFRB議長の会見では、将来の利下げの可能性を示唆するかもしれませんが、コミットはしないでしょう。ドラギECB総裁のように、タカ派的に取られる可能性もあるかもしれません。しかし、最終的には円高リスクがいずれ顕在化するでしょう。そのトリガーになるのが株安です。
繰り返すように、8月は日本株が下げる確率がきわめて高いことがわかっています。そうなれば、安全資産である円が買われやすくなるでしょう。これまでのきわめて低いボラティリティの状況は、8月に入ると急激に高まるものと考えています。8月は今年の第2の鬼門になるとみています。5月、8月、11月が今年の鬼門としてきましたが、まず5月に強烈な株安が来ました。次は8月です。そして、総仕上げは11月です。このときには、米国株にもリスクが高まっていると考えています。リスク資産の売却の動きに注意しておきたいところです。 円高基調が鮮明になった場合には、年末まで最大で96円までの下げの可能性があるとみています。
投資戦略対象の通貨ペアを変更します。新興国通貨は変動が激しいので外します。 主要通貨のペアを主体的に行うようにいたします。 対象は円、ユーロ、ポンド、豪ドル、NZドル、カナダドルとします。 いまはカナダドルやNZドルが最強通貨になっています。
ドル円:なし
ユーロドル:ショート
ポンドドル:ショート
豪ドル/米ドル:ロング
NZドル/米ドル:なし米ドル/カナダドル:ロング
ユーロ円:ショート
ポンド円:ショート
豪ドル円:ロングを解消し、新規でショート
NZドル円:なし
カナダドル円:なしユーロポンド:ショート
ユーロ豪ドル:なし
ポンド豪ドル:なしユーロNZドル:ショート
ポンドNZドル:ショートユーロカナダドル:ショート
ポンドカナダドル:なし
豪ドルカナダドル:ロングを手仕舞い
NZドルカナダドル:ロングを手仕舞い
『江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー』(江守哲)より引用。
8月は日本株が下げる確率がきわめて高く、円が買われやすくなると江守さん。今週の30、31日にFOMCが開催されますが、すでに利下げは織り込まれているようです。予期せぬサプライズが起こる可能性は低そうですが、FOMC後の市場動向には注目しましょう。(編集部)
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