2017/3/10 江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー
江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー 2017年03月10日 08時30分
配信者:ECM
ゴゴジャン株式会社 様
おはようございます。
本日もよろしくお願いいたします。
このたび、「為替市場のファンダメンタルズ分析 基礎編」を作成しました。
これまでメルマガでお話ししてきた為替相場の考え方を解説しています。
下記のURLで申し込みができます。
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ぜひご覧ください。
明日3月11日(土)は投資戦略EXPO2017に登壇します。夜の懇親会にも出席いたします。
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みなさまと交流できますことを楽しみにしています。
〔EQUITY MARKET〕
米国株はほぼ横ばいでの推移。米雇用統計の発表を翌日に控えて様子見ムードが強まった。10日には2月の雇用統計が発表されるが、市場では相当弱い内容にならない限り、14・15日のFOMCで利上げが決定されるとみられている。市場の関心は将来の利上げペースに向かっている。利上げペースが加速するとの見方が示されれば、米国株の上値が重くなる可能性もある。一方、ECBは定例理事会で、金融政策の現状維持を決める一方、ドラギ総裁はデフレ解消に向けた追加措置を取る緊急性が解消したとの見解を表明。これを受けて債券が売ら
れて金利が上昇し、利ざや拡大期待から金融株に買いが入った。一方で原油相場が50ドルの大台を割り込んだことからエネルギー株に売りが出て、ダウ平均は一時78ドル安まで下落する場面があった。しかし、引けにかけては売られ過ぎ感から急速に値を戻し、プラス圏に浮上した。この動きを見る限り、下値での買い意欲は依然として強く、押し目買いを狙っている投資家が多いことが再確認されたといえるだろう。個別銘柄では、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が1.5%高となり、エネルギー株のエクソンモービルとシェブロンもそ
れぞれ0.8%高、0.4%高だった。一方、不正会計問題が浮上したキャタピラーは2.0%安。アップルもIPHONE8の発売が遅れるとの観測報道で0.3%安。
一方、トランプ大統領は地方銀行のCEOと会談し、「過度な金融規制を取り除く」と確約したと報じられている。会合にはコーン国家経済会議(NEC)委員長、ムニューシン財務長官も同席した。トランプ大統領は「中小企業に融資する地方銀行は米経済にとって不可欠」とし、規制を金融機関の規模に応じて見直し、安全に融資が拡大できるようにするとしたもよう。
2月の米輸入物価指数は前月比0.2%上昇。石油を除く輸入物価は0.3%上昇だった。前年同月比では全体が4.6%上昇、石油を除くと0.8%の上昇だった。4日までの週の新規失業保険申請件数は前週比2万件増の24万3000件で、市場予想の23万5000件を上回った。前週は1973年3月以来、44年ぶりの低水準だった。新規申請件数は30万件以下だと労働市場は力強いとされているが、30件以下は105週連続となり、1970年に記録して以来の長さとなる。今回発表された新規失業保険申請件数は2月の雇用統計と調査
期間が重なっていないが、現在の新規失業保険申請件数の減少傾向は、米国の労働市場がいかに強いかを示すには十分であろう。2月の雇用統計でも力強い就業者数の増加が予想される。非農業部門就業者数の市場予想は前月比19万人増となっている。1月は22万7000人増だった。2月の失業率は0.1%ポイント低下の4.7%が予想されている。企業向け給与計算サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)とムーディーズ・アナリティクスが8日に発表した2月の全米雇用報告によると、民間部門の雇用者数は29万80
00人増加し、約1年ぶりの大きな伸びとなっている。米国の労働市場は最大雇用状態か、それに近い状態にあるとされており、職種に必要な技能を有する人材を見つけることが難しくなっているとする雇用主が増えているもよう。労働市場の引き締まりと物価の上昇を背景に、利上げは確定的になったと考えてよいだろう。イエレンFRB議長はすでに、3月14・15日のFOMCでの利上げを示唆している。FRBは昨年12月に2回目の利上げを実施したが、17年は3回の利上げを想定している。この回数が増えるかが、今回のFOMCの最大の
注目ポイントである。
米国債は下落。米利上げ観測が高まる中、長期債利回りは約11週ぶり、短期債利回りは約7年半ぶりの水準に上昇した。雇用者数の増加や賃金の上昇を受けた利上げ観測が利回り上昇を促している。CMEフェドウオッチによると、金利先物は25BPの3月利上げを91%の確率で織り込んでいる。10年債利回りは4BP上昇の2.594%となり、一時は2.607%と、昨年12月16日以来の水準に上昇している。また2年債利回りは2BP上昇の1.371%。一時は1.379%と、09年8月以来の高水準を付けた。利回りは全般的に上
昇しているものの、2年債-10年債利回りスプレッドは依然としてマイナス1.23%であり、金利上昇が株式市場などに悪影響を与える状況には程遠い。2000年や2007年のように、株価がピークを付ける際には、このスプレッドがプラス、つまり短期債利回りが長期債利回りを上回るケースが多い。また、失業率の相関も高いが、失業率は4%台前半にまで低下しないと、スプレッドは縮小しないだろう。この点からも、FRBによる利上げ余地はまだ相当大きいことになる。金利の引き上げ余地が大きいことから、株価の上昇余地もまた大き
いということになる。ユーロ圏債券市場では、ECBが理事会で政策据え置きを決定したものの、景気浮揚に向けた緊急性はもはや存在しないとの見解を示したことを受けて、ユーロ圏の指標金利であるドイツ10年債利回りが5BP上昇の0.43%と、1カ月ぶりの高水準を付けた。ECBは少なくとも年内は積極的な刺激策を維持する方針を表明。主要政策金利は0%、上限金利の限界貸出金利は0.25%、下限金利の中銀預入金利はマイナス0.40%。いずれも過去最低で、金利の据え置きは16年4月以降、8会合連続。また量的緩和につい
ては、昨年12月の会合で決定した通り、月800億ユーロの資産購入を4月から600億ユーロに減額した上で年末まで継続する。一方、声明から「目標達成に向け正当化されるなら理事会は利用可能なあらゆる措置を利用する」との文言が削除された。ドラギ総裁はこれについて、「緊急性が存在しないことが理由」と説明した。世界的にインフレ率が上昇していることもあり、過度な緩和はむしろ弊害になる可能性が高まっていることを示唆しているといえる。ユーロ圏の消費者物価上昇率は2月に前年同月比2.0%と急上昇しており、ECBが目
標とする2%弱を達成している。ただし、石油価格上昇による一時的な影響が大きいとみており、ECBによる最新の物価見通しは、17年が1.7%、18年が1.6%と、依然として目標を下回る予測を示している。ドラギ総裁は会見で「依然として物価の上昇傾向は確信できない」とし、緩和維持の必要性を強調している。ECBの最新のユーロ圏経済予測は以下の通り(カッコ内は前回16年12月時点の予測)。
GDP伸び率 インフレ率
17年 1.8%(1.7%) 1.7%(1.3%)
18年 1.7%(1.6%) 1.6%(1.5%)
19年 1.6%(1.6%) 1.7%(1.7%)
【米国株のトレード戦略】
ダウ平均、S&P500、ナスダック指数はロングを継続。引き続き上値が重く、調整基調は続いている。雇用統計やFOMCを通過するまでは、確定売りが出るのは仕方がない。チャート上は重要なポイントである20750ドルで下げ止まっている。反発すれば、目先の底値は確認したと判断できるだろう。いずれにしても、基本的な長期上昇見通しは変わらない。基本方針は買いを維持しながら、押し目を買えるように準備を整えておくことである。トランプ政権への期待は大きく、政権が景気・経済・企業にとって良い政策を実行すると考えている
。ダウ平均の3月の強気シナリオの上限は21250ドルだが、下げ渋れば、再びこの水準を試すことになろう。最大で19880ドルまでの押しは念頭に入れておきたいが、ここまで下げた場合には押し目買いであり、その準備は常にしておきたい。繰り返すように、株式運用では米国を中心に行うのが賢明である。物価上昇率を考慮しても、米国に圧倒的な優位性がある。米国株を長期的に見ながら押し目を拾っていくのが株式投資の王道である。この長期的に安定したリターンは、残念ながら日本株では得ることができない。
【ダウ平均株価:2017年の想定レンジ】
強気シナリオ19310ドル~23185ドル(17年末22870ドル)/弱気シナリオ16050ドル~20195ドル(17年末17850ドル)
【ダウ平均株価:3月の想定レンジ】
強気シナリオ19880ドル~21250ドル/弱気シナリオ18410ドル~20015ドル
【米国債トレード戦略】
10年債は見送り。
【日本株の市況解説・分析】
日本株は辛うじて下値を維持している。引き続き上値の重い展開にある。ドル円が115円を試す動きになっており、これを受けてシカゴ市場では上昇している。ドル円がきわめて重要な水準にあり、115円を超えると日本株に買いが入りやすくなる。しかし、ドル円は上値余地がないとみており、これまでの見方は変わらない。為替の影響を受けず、将来の成長性が期待できる銘柄を中心に見ていくことが肝要であろう。また、短期的には騰落レシオが高まっている。上昇の際にはあまり参考にはならないとの見方も多いが、一定の注意は必要であろう
。米雇用統計とFOMCを通過するまでは大きく動きづらいが、米国株が堅調に推移しているうちは、少なくとも日本株が暴落するようなことはないだろう。円高も耐えられる優良企業や円高の影響を受けにくい内需中心の銘柄、さらに新興株や成長株を選択しながらの対処が肝要である。
【日経平均先物のトレード戦略】
ロングを継続。状況は変わっていない。現状で慌てて売る必要はないと考える投資家も少なくないだろう。本日のSQや米雇用統計、来週のFOMCなどイベント続きだが、それを前提に市場を見ていても仕方がない。しかし、ドル円が急落するまでは下げにくいが、上昇の期待感も膨らみにくい状況は変わっていない。3月の弱気シナリオのレンジ上限が19850円であり、これを上抜けることが強気シナリオに移行するための第一関門である。引き続き、このポイントを注視しておきたい。市場では、イベントが多い15日の暴落説も出ているようだ
が、そのような見方が出ているうちは真の暴落は起きづらい。いずれにしても、目先の多少の上下のブレにも耐えられるよう、資金的に十分な余裕を持ちながら、暴落を買う準備は常にしておきたい。
【日経平均株価:2017年の想定レンジ】
強気シナリオ18335円~23400円(17年末23020円)/弱気シナリオ14970円~19915円(17年末15620円)
【日経平均株価:3月の想定レンジ】
強気シナリオ19150円~20950円/弱気シナリオ17650円~19850円
〔CURRENCY MARKET〕
ドル円は上昇。米長期金利の上昇を受けて円売り・ドル買いの動きが強まり、一時1月27日以来の115円台を付けた。ECBの定例理事会後の記者会見でドラギ総裁は「一段の措置の導入に対する緊急性はなくなっている」とし、追加的な金融緩和の必要性を否定。これを受けたユーロ高につられ、ドルも対円で上昇した。さらにドイツ国債売りが米国債売りに波及し、米10年債利回りが一時2.6%台まで上昇したことも円売り・ドル買いを促した。10日発表の2月の米雇用統計では堅調な結果が見込まれており、14・15日開催のFOMCで
の利上げが確実視されている。これがドルのピーク感の形成につながるかに注目することになろう。
【通貨トレード戦略】
ドル円は見送り。重要なポイントの114.75円を超えており、短期的にはロングが賢明であろう。短期勝負に挑むなら、ロングを勧めるが、上値が118.75円を超えるとは見てない。ここまでの上昇を前提にロングすることを検討してもよいだろう。ただし、今日は雇用統計がある。そのあたりを十分に考慮したうえで、ポジションを取るべきであろう。金利上昇が織り込まれると急落する可能性も否定できない。113.50円割れでのショートを狙う方針は変わらない。また、年末に向けて104円台に突っ込むとの見方も変わらない。
ユーロ円も見送り。ドル円と同様に121.35円の重要な節目を超えてきた。これを見る限り、短期ではロングが賢明だが、持続性があるかは別問題である。3月の弱気トレンドのレンジ上限が121.30円であり、これを現時点では超えているが、これを再び割り込むと下げが大きくなる。ここを売る準備をしておきたい。
ユーロドルは見送り。現時点で方向感がなく、無理にポジションを取る必要はないだろう。ドルが今後重くなる可能性があると考えており、ユーロの安値は売りたくない。1.05ドルと1.0650ドルの抜けた方についていくことになるが、3月の下値は1.0355ドルとみており、ショートでは値幅は取れないだろう。
ポンド円も見送り。138円と141.70円のレンジ内での推移であり、これを抜けた方についていく方針を継続したい。
ポンドドルも見送り。下値を固める動きになりつつある。売られすぎ感が強く、現行水準から売り込むのは賢明ではない。
豪ドル円はロングを継続。下値を維持しており、いまだ崩れていない。85.90を割り込むまではロング継続と考えている。
豪ドル/米ドルは見送り。今からショートして大きく取れないだろう。0.7475ドルでサポートされれば、再び上昇に転じるだろう。その反発でロングにすることを検討したい。
南アランド/円はロングを継続。8.5000円を割り込むまではロング継続でよい。
【ドル円:2017年の想定レンジ】
強気シナリオ115.25円~129.85円(17年末128.35円)/弱気シナリオ103.60円~118.75円(17年末104.70円)
【ドル円:3月の想定レンジ】
強気シナリオ117.20円~123.04円/弱気シナリオ111.75円~117.25円
【ユーロ円:2017年の想定レンジ】
強気シナリオ119.80円~134.85円(17年末133.70円)/弱気シナリオ107.95円~124.75円(17年末109.65円)
【ユーロ円:3月の想定レンジ】
強気シナリオ121.15円~127.65円/弱気シナリオ115.60円~121.30円
【ユーロドル:2017年の想定レンジ】
強気シナリオ1.0270ドル~1.1700ドル(17年末1.1550ドル)/弱気シナリオ0.9480ドル~1.0695ドル(17年末0.9730ドル)
【ユーロドル:3月の想定レンジ】
強気シナリオ1.0355ドル~1.0760ドル/弱気シナリオ0.9960ドル~1.0420ドル
〔COMMODITY MARKET〕
【貴金属市場の市況解説・分析】
金相場は6日続落。5週間ぶりの安値を付けた。米利上げが確実視される中、ポジション調整の売りが出ているといえる。短期筋は米利上げを嫌気して売りを出しているが、長期投資家からすれば、この下げは格好の買い場になってくる。米雇用統計は堅調な内容が予想されているが、3月の利上げ以上に重要なポイントは今後の利上げペースである。3回で維持されれば、利上げの市場への影響は軽微にとどまり、金相場の底値確認につながる可能性は十分にある。ひとまず1200ドルの節目にまだ下げてきたが、まずは最初の押し目買いのタイミング
にあるといえるだろう。一方、ECBのドラギ総裁がユーロ圏経済の先行きに楽観的な見方を示しており、さらに声明から「目標達成に向け正当化されるなら理事会は利用可能なあらゆる措置を利用する」との文言が削除されていることから、今後のユーロの反発の可能性を念頭に入れておくべきであろう。また、欧州の政治リスクは安全資産としての金の魅力を高めることになる点も念頭に入れておきたい。
【貴金属のトレード戦略】
金、銀、プラチナ、パラジウムはロングを継続。押し目買いを徐々に進めていきたい。金は最大で1150ドルまでの下げがあると考えておきたい。3月の強気シナリオのレンジ上限が1240ドルであり、今月はすでに上値をつけているといえるだろう。銀は17.15ドルの重要なサポートを割り込んでおり、目先は16.70ドル程度までの下げが想定される。またプラチナは下げGは厳しい。しかし、長期的な底値はつけていると考えている。ここからの下げは押し目買い方針を継続したい。長期的に見れば、3月の安値は重要な押し目買いのポイ
ントであろう。徐々に買いを積み増すイメージで対処したい。貴金属は調整場面でも基本的には手放さず、押し目を拾うのが賢明である。貴金属は長期的に上昇するとみており、保有しながら株式の購入あるいは株価の上昇に併せて買い増すのが賢明である。原油とともに投資対象全体の中心に据え、押し目は確実に拾うようにしたい。
【金価格:2017年の想定レンジ】
強気シナリオ1117.65ドル~1373.40ドル(17年末1329.50ドル)/弱気シナリオ1036.65ドル~1187.20ドル(17年末1059.00ドル)
【金価格:3月の想定レンジ】
強気シナリオ1150ドル~1240ドル/弱気シナリオ1095ドル~1165ドル
【非鉄市場の市況解説・分析】
非鉄相場は軟調に推移。米利上げへの警戒感から売りが出ているもようである。また中国の2月のCPIが0.8%上昇と、1月の2.5%から大幅に低下したことも心理的に圧迫した可能性がある。アルミは下げ渋ったが、銅は重要なサポートの5600ドル台にまで下げており、ニッケルも安値圏を維持している。亜鉛も小幅安だが、鉛は反発している。そろそろ下値を固める動きに入ってくるだろう。銅は中国の輸入減に加え、LME在庫増なども影響しているが、現行水準で下げ止まるかがきわめて重要である。一方でトランプ政権への期待が再び
高まれば、上向きに転じることになろう。
【非鉄のトレード戦略】
アルミ、銅、ニッケル・亜鉛、鉛はロングを継続。かなり下げてきたが、想定していた3月のレンジ下限に来ており、格好の押し目買いのタイミングと考えている。基本戦略は押し目買いであり、長期上昇見通しは変わらない。非鉄についても長期的には2020年までの有望銘柄と考えている。基本は押し目買いである。銅は年末にかけて7700ドルを目指す動きになると考えている。ただし、値動きが大きいため、リスク管理をしっかりと行うようにしたい。非鉄銘柄は長期的な上昇基調が続いている。需給改善を背景に、いずれ大相場が到来するだ
ろう。少額でもよいので銅を中心にポートフォリオの中に入れておきたい。
【銅価格:2017年の想定レンジ】
強気シナリオ5266ドル~7704ドル(17年末7522ドル)/弱気シナリオ4520ドル~5812ドル(17年末4672ドル)
【銅価格:3月の想定レンジ】
強気シナリオ5665ドル~6250ドル/弱気シナリオ5300ドル~5780ドル
【エネルギー市場の市況解説・分析】
原油は続落。過去最高の米国の原油在庫を嫌気した売りが出ている。また、OPECの減産が世界の原油供給の過剰感の解消につながりにくいとの見方も背景にあるようである。米エネルギー情報局(EIA)の原油在庫統計で、最新週の原油在庫が5億2840万バレルと過去最高を記録したことが示されている。現在の大幅安に背景には、積み上がった投機筋のロングの投げがあることは明白であろう。市場では、米国内の過剰在庫懸念に加え、シェールオイル増産計画に対する警戒感もある。しかし、現行水準で増産を続ければ、結果的に収益性を損
なうことは明白である。過去の学習効果がないのかどうか、今後のシェール企業の対応を見極めたい。いずれにしても、50ドル割れの水準で長期的に生産を継続できる石油会社は存在しない。この点を理解しておくことが肝要であろう。一方、サウジアラビア当局者は米シェールオイル企業に対して、米国の産油量増加を相殺するためにOPECが協調減産を延長すると考えるべきではないとしている。協調減産を受けた原油相場の回復を背景に、米シェール企業は今週開催されたエネルギー関連会合で、生産を積極的に増やす計画を相次いで発表してい
る。しかし、サウジアラビアのファリハ・エネルギー相は同会合で、「原油価格の持ち直しによる恩恵に米シェール企業はただ乗りすべきではない」としている。しかし、その判断は米国のシェールオイル企業次第であることは言うまでもない。今後の動向を見守りたい。
【エネルギーのトレード戦略】
WTI原油・ブレント原油はロングを継続。NYMEXガソリン・NYMEXヒーティングオイルもロングを維持。天然ガスはロング。最大で48.75ドルまでの下げを想定していたが、まさにその押し目場面がやってきた。これだけの安い水準を買える機会が到来している。相場である以上、深押しのリスクもあるが、繰り返すように、それはあくまでポジション需給で作られる相場水準である。そのため、基本は押し目買いでよい。今月はこれまで、弱気シナリオのレンジで推移しており、懸念がないわけではないが、昨年1月や2月のように、下げ
一時的なものにとどまれば、格好の押し目買い場面だったということになる。市場に対する基本的な考え方は全く変わらない。需給バランスの改善を背景に年末に向けて75ドルを試すとの見方も不変である。原油も長期的な視点でポートフォリオに入れておくべき対象である。
【WTI原油価格:2017年の想定レンジ】
強気シナリオ50ドル~74ドル(17年末70ドル)/弱気シナリオ35ドル~58ドル(17年末38ドル)
【WTI原油価格:3月の想定レンジ】
強気シナリオ53.20ドル~63.70ドル/弱気シナリオ47.85ドル~55.10ドル
◇グローバルマクロ戦略について
本メルマガでご紹介する投資戦略は、ヘッジファンド業界では「グローバルマクロ戦略」のカテゴリーに属します。
これは、世界のヘッジファンドのもっとも得意とする手法で、いわゆるヘッジファンド運用の「王道」です。
この戦略では、あらゆる市場に目を配り、投資機会を探しながら収益の獲得を狙います。
市場価格の上昇・下落に関係なく、価格の変動が見込まれれば、それにベットする(賭ける)戦略です。
ボラティリティが高いほど収益が見込まれますので、投資機会があれば果敢に攻めます。
世界情勢が不透明な中、為替や株式、金利、コモディティなど主要市場の価格変動は一段と大きくなっています。
そのため、それぞれの市場の予測がきわめて困難になっています。
このような市場環境では、マクロ的な見地からより幅広い市場で運用を行う「グローバルマクロ戦略」が有利です。
もちろん、個々の市場でも十分に戦えるように、具体的な取引タイミングも示していく所存です。
「ヘッジファンド戦略の王道」である「グローバルマクロ戦略」で、共に市場で戦いましょう。
◆お知らせ
日経225オプションのトレード戦略に関するメルマガを配信しております。
「江守哲の225オプション リアルトレーディング」です。
ご興味のある方は、ぜひご購読ください。
https://fx-on.com/email/detail/?id=8592
*セミナー予定
3月11日(土)投資戦略フェア(東京)
https://www.tradersshop.com/topics/expo2017/index.html
3月14日(火)サンワード貿易さまセミナー(東京)
http://www.sunward-t.co.jp/seminar/2017/03/14/
3月18日(土)マネックス証券さまセミナー(名古屋)
https://seminar.monex.co.jp/public/seminar/view/3660
3月28日(火)日本個人投資家協会セミナー(東京)
http://www.jaii.org/2017/02/6791
3月29日(水)外為どっとコムさまセミナー(東京)
http://www.gaitame.com/seminar/1703/29_li_emori.html
(上記以外にも、個別セミナーも実施しております。ご興味がある方はお問い合わせください。)
*テレビ出演予定
3月23日(木)10:45~11:00ストックボイスTV「東京マーケットワイド」(東京MXTV)
http://www.stockvoice.jp/
*ラジオ出演予定
3月16日(木)15:10~16:00 ラジオNIKKEI「ザ・マネー~マーケットプレミア」(プレミア証券さま提供)
http://market.radionikkei.jp/premiere/
3月17日(金)21:30~22:00 ラジオNIKKEI「夜トレ!」(FXプライムbyGMOさま提供)
http://market.radionikkei.jp/yorutore/
3月24日(金)16:00~16:20 ラジオNIKKEI「GO!GO! ジャングル・マーケット」(ゴゴジャンさま提供)
http://market.radionikkei.jp/gogo/
4月20日(木)15:10~16:00 ラジオNIKKEI「ザ・マネー~マーケットプレミア」(プレミア証券さま提供)
http://market.radionikkei.jp/premiere/
6月15日(木)15:10~16:00 ラジオNIKKEI「ザ・マネー~マーケットプレミア」(プレミア証券さま提供)
http://market.radionikkei.jp/premiere/
*定期寄稿スケジュール
「東洋経済オンライン」(毎週木曜日)
http://toyokeizai.net/
「マネックスメール」(第1・第3金曜日)
http://lounge.monex.co.jp/pro/special1/
「マネックス証券 為替展望レポート」
「マネックス証券 マネックスゴールドレポート」
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