ECBの政策金利据え置き、そしてポンドドルは英総選挙の保守党大勝で歴史的な動きか
投資サロン「江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー」では、配信されるメルマガで株式・債券・為替をはじめとした多くのマーケットを分析した情報を一度に確認できます。これにより江守哲氏の推奨するグローバルマクロ戦略を有効に活用することができるのです。
◇グローバルマクロ戦略について
本メルマガでご紹介する投資戦略は、ヘッジファンド業界では「グローバルマクロ戦略」のカテゴリーに属します。これは、世界のヘッジファンドのもっとも得意とする手法で、いわゆるヘッジファンド運用の「王道」です。
この戦略では、あらゆる市場に目を配り、投資機会を探しながら収益の獲得を狙います。市場価格の上昇・下落に関係なく、価格の変動が見込まれれば、それにベットする(賭ける)戦略です。ボラティリティが高いほど収益が見込まれますので、投資機会があれば果敢に攻めます。
世界情勢が不透明な中、為替や株式、金利、コモディティなど主要市場の価格変動は一段と大きくなっています。そのため、それぞれの市場の予測がきわめて困難になっています。このような市場環境では、マクロ的な見地からより幅広い市場で運用を行う「グローバルマクロ戦略」が有利です。
(江守哲のリアルトレーディング・ストラテジーより引用)
今回は2019年12月13日8時26分に配信されたメルマガから一部をご紹介します。
〔EQUITY & BOND MARKET〕
【米欧株式・債券市場の市況解説・分析】米国株は米中貿易協議進展への期待が高まり続伸。ダウ平均は前日比220.75ドル高の28132.05ドルで終了。S&P500は26.94ポイント高の3168.57、ナスダック総合指数は63.27ポイント高の8717.32で引け、それぞれ終値での過去最高値を更新した。トランプ米大統領は12日朝、ツイッターに「中国との大規模な取引成立に非常に近づいている。中国はそれを望んでおり、米国も同じだ」と投稿した。協議進展への期待から、軟調に寄り付いた株価は上昇に転じた。午後に入り、米中が原則合意に達したと報じられたことも株価を押し上げた。ブルームバーグは、米中が「第1段階」合意の条件面で一致し、トランプ大統領の承認待ちの状態と伝えた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)もこの日午前、米国が15日に発動予定の対中制裁関税の中止と、過去に発動した3600億ドル相当の関税を最大半分まで引き下げることを提案したと報道した。
この日はトランプ米大統領が中国との通商合意に「極めて近い」とツイッターに投稿したことを受けて朝方に株価が上昇。その後、米中が通商協議で「第1段階」の原則合意に達したとする関係筋の情報が伝わった。
欧州株は続伸。ECBのラガルド総裁が、非伝統的な金融政策の副作用を認識していると発言したことで銀行株が買われた。米中通商協議の進展報道を受けて、株価は一段高となった。STOXXユーロ圏銀行株指数は2.76%上昇した。ラガルド氏が総裁に就任して初めての政策理事会でECBは金利を据え置いた。ラガルド氏は自身がハトでもタカでもなく、知恵の象徴であるフクロウになることで理事会内の亀裂を修復すると語った。また、ECBの運営方法の再検討を20年1月から開始する見込みとした。通商政策に左右されやすいドイツのクセトラDAXは0.57%上昇。米政権が15日に予定している中国製品への関税発動を先送りすることを提案したとする報道のほか、トランプ米大統領が中国との合意が非常に近いとツイートしたことで米中合意への期待が高まった。
EU離脱を争点にした英下院(定数650)総選挙の投票は12日午後10時(日本時間13日午前7時)で締め切られ、即日開票される。ジョンソン首相率いる中道右派の保守党が単独で過半数を制するかどうかが最大の焦点となっている。投票締め切り直後の出口調査の結果では、保守党が大勝の見通しとなっている。保守党が勝利すれば、公約に掲げた来年1月末のEU離脱が決定的となる。英国は16年の国民投票でEU離脱を決定。しかし、メイ前首相の離脱案は下院で否決された。メイ氏の後任のジョンソン首相は今年10月にEUと新たな離脱案で合意。議会承認を得るには政権基盤の強化が不可欠と判断し、総選挙に打って出た。英国の総選挙はメイ前首相の下で行われた17年6月以来2年半ぶり。12月の総選挙は1923年以来96年ぶり。
【日本株式・債券市場の市況解説・分析】
日経平均株価は前日比32円95銭高の23424円81銭と、3日ぶりに反発。TOPIXは2.12ポイント安の1712.83で終了。33%の銘柄が上昇、62%が下落。出来高は11億4442万株、売買代金は1兆9935億円。FOMC後に米債券利回りが低下したことで、日経平均株価への影響が大きい半導体株の買いを誘った。半導体関連は業績の底打ち感が鮮明になっているとの認識になっていることから、米国の緩和的な金融政策の継続が示されたことに反応しやすかった。ただし、この日は東証1部銘柄だけでなく、日経平均構成銘柄でも値下がりの数が値上がりを上回った。米国の新たな対中制裁関税の発動期日である15日を前に手控えムードは強く、東京市場全体を見ると手仕舞い売りや利益確定売りが優勢な相場展開にある。
〔CURRENCY MARKET〕
ドル円は米中貿易協議の進展への期待が高まる中、109円台前半に上昇。トランプ米大統領は12日午前、中国との貿易協議について「大規模な取引成立に非常に近づいている」とツイッターに投稿した。これを受けて市場では、15日に期限を迎える対中制裁関税「第4弾」の全面発動が見送られるとの見方が強まり、リスクオンの地合いとなり、安全資産としての円を売ってドルを買う動きが活発化した。NY時間の午後に入ると、ブルームバーグなどが、トランプ政権が中国との貿易協議「第1段階」で原則合意に達したと報道。ドル買い・円売りが一段と進み、ドル円は一時109.45円前後まで上昇した。ただし、英総選挙の開票結果を控えた様子見気分も強く、その後の値動きは限定的だった。ユーロドルは上昇し、1.11ドル台前半での推移。一方、英BBC放送は、下院(定数650)総選挙の出口調査結果として、EU離脱を公約に掲げたジョンソン首相率いる中道右派の保守党が368議席を獲得し、単独で過半数を制する情勢と報じている。中道左派の労働党は191議席と、解散前に比べ党勢を後退させる見通し。この報道を受けて、ポンドドルは大きく上昇し、1.35ドル近辺まで値を飛ばしている。
【通貨トレード戦略】
ドル円は見送りです。非常に重要なポイントにきました。109.50円を明確に超えると、長期トレンドが上向きになる可能性があります。いまはまだ戻りを売りたいところですが、今日はいったん見送ります。米中通商協議の報道が確定的になり、英総選挙の結果が明確になったうえでの市場の反応を見極めます。つまり、今日のNY市場の反応を見て、週明けから動き始めたいと考えます。それでも無理に手掛けるとすれば、いったんショートし、短期の下げを取るくらいでしょうか。株式市場も勢いづいていますので、円安になりやすいため、今日はやはり見送りが賢明でしょう。無論、109.50円が重かったとの結論になれば、売りやすくなります。ただし、いまの状況では簡単に下げなさそうです。
最大の関心はやはりポンドドルです。1.35ドルまで上げてきました。英総選挙の出口調査で保守党の大勝の可能性が示唆されています。このまま上げていく可能性が高まっています。上げていけば、歴史的な動きになりますので、これはついていく必要があります。押し目を徐々に拾う形でポジションを積み上げていきたいところです。ポンドドルの理論値は1.4898ドルですので、上昇余地が大きい点を常に念頭に置いておきたいところです。また、ユーロドルも上げやすくなります。理論値も1.1779ドルで、上昇余地はありますので、引き続き欧州通貨に注目しておきます。
〔COMMODITY MARKET〕
【貴金属市場の市況解説・分析】金相場は約1カ月ぶりの高値圏から小幅下落した。トランプ米大統領が中国との貿易協議が合意に近づいているとツイッターに投稿したことがきっかけとなり、安全資産とされる金を売る動きが広がった。米国が中国製品への追加関税発動を予定する15日を前に、金相場は不透明感から上昇してきたが、中国との協議について「合意がとても近い」とするトランプ氏のツイートで勢いをそがれた。株価は大幅上昇した。自動車用触媒として使われるパラジウム現物相場は一時1944ドルと、過去最高値を更新。主要産出国である南アフリカで大雨と洪水により深刻な大規模停電が発生した後、鉱山が操業を取りやめたことで供給への懸念が広がっている。10日に初めて1900ドルの大台に乗せてからも高値を更新している。銀とプラチナは続伸した。
【貴金属のトレード戦略】
金のロングを維持します。金融市場の楽観で上値が重くなっています。とはいえ、トレンドもまだ変わっていませんし、金を保有するという意義からも、戦略は変えません。1450ドルをサポートしているうちは、問題ないでしょう。今後は投資家が金に対する割安感から買いを入れてくるかが最大の注目点です。いまの金価格の理論値は1420ドルです。これ以下では買いを検討するのがセオリーです。今回は最大で1400ドル近くまでの調整も念頭に置いておきます。下げてくれば、1420ドル以下では押し目買いを検討します。とにかく、金を保有しておくことが肝要です。株安基調が見られれば、いったんは安全資産である金に資金をシフトする動きになるでしょう。繰り返すように、11月から2月は金を売ってはいけない期間です。目先の変動に振り回されず、まずはしっかりと保有しておくことを優先します。そのうえで、株価の調整に伴うリスクオフの動きを待ちます。
プラチナにも動きが出てきました。ただし、南アの材料ですので、ややリスクがあります。ロングで良いでしょう。ただし、その場合には少量で行いたいところです。銀も基本戦略はロングで良いと考えます。ただし、金を中心に取引したいところです。
『江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー』(江守哲)より引用。
参考チャートポンドドル1時間足 2019年12月13日14時15分
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