VIXは再び上昇、35P超えでS&P500に投資すれば1年後は25%のリターン 江守哲氏
【米国株のトレード戦略】
米国株は依然として乱高下しています。この日は一転してダウ平均が1000ドルを超える下落となる場面があるなど、普通の動きではありません。それだけ、市場が混乱しているということです。このようなAI(人工知能)がニュースのヘッドラインで投資判断をする状況では、なかなか真のトレンドは形成されません。しかし、いずれは方向性が出てくるはずです。いまは冷静に市場動向を見ることが肝要です。戻りで買い、下値で投げることは避けたいところです。
市場は依然として疑心暗鬼でしょう。米国でも新型コロナウイルスの感染者が増えており、懸念が高まりやすい地合いです。また、将来の景気や企業業績の回復の状況も全く見えません。しかし、将来の株価上昇は悲観の中から生まれます。底値を買おうとせず、徐々に買い下がることでリスクを回避することは可能です。「利下げはウイルスを死滅させることができない」のは事実ですが、ウイルスに警戒ばかりしていても仕方がありません。経済はいずれ回復します。それを大前提に株式投資をしていくしかないでしょう。
繰り返すように、米国株はこれまでも数々の困難を乗り越えてきました。想定外の事象の発生に対して、機動的かつ迅速な金融・財政政策による対応で問題を解決してきました。今回も時間がかかったとしても、そのようになるでしょう。過度の楽観も危険ですが、悲観的になりすぎることは、人間の思考を停止させる可能性があります。この点には要注意です。米国を含め、世界の主要国にはこれまでの危機に対するノウハウが蓄積されています。過去の経験を生かすべき時でしょう。
FRBが3日、新型コロナウイルスの感染拡大で景気下振れリスクが高まる中、0.5%の大幅利下げに踏み切りました。しかし、市場ではさらなる利下げを織り込んでいます。このまま株価が反転しなければ、FRBは17・18日のFOMCで追加利下げを強いられることになるでしょう。ゼロ金利が迫っており、手詰まりが現実味を帯びてきています。ここで何とか株安に歯止めをかけなければ、利下げ余地がなくなります。FRBは極めて難しい政策判断を強いられているといえます。パウエルFRB議長は「利下げが感染率を低くしないことは理解している」とし、感染拡大が長期化する事態への警戒感を隠していません。米国は財政出動も決めました。あとは市場が落ち着くのを待つしかありません。
米国株式市場の短期トレード戦略では、この日の反発で主要株価指数は「ロング」に転換することになりました。また、VIXは低下したため、「ロング」は解消となりました。この傾向が続くか、今日の市場を見てみたいと思います。
VIXは再び上昇していますが、VIXを利用した投資タイミングについては、すでに何度も解説しているとおりです。35ポイントを超えているときにS&P500に投資すれば、1年後は25%、2年後は41%、3年後は45%のリターンが出ています。また、VIX先物の期近-期先のスプレッドがバックワーデーション(逆ザヤ)になったときも買い場になります。このような場合にS&P500を買えば、1年後の上昇確率は96%を超えます。逆ザヤが続く間、買い続ければほぼ確実に収益化できます。
また、いまのように債券が買われすぎで、金利が大きく低下しているときの今後のS&P500の将来のパフォーマンスはきわめて良いことも繰り返しご紹介しておきます。現在のように、米国債が前年比で25%上昇した場合、1カ月後のS&P500の騰落率は平均で1.11%上昇、3カ月後は3.51%上昇、6カ月後は6.15%上昇、12カ月後は14.08%です。きわめて高いパフォーマンスです。いまのように、債券に資金が行き過ぎているときは、いずれ株価が上昇することを示しています。やはり、いまは株式投資の好機といえそうです。
Fear & Greed Indexは9に大きく低下しました。いまだ「究極的に悲観的」な水準にあります。売られすぎといえそうです。
短期トレード戦略は下記の指標を参考にしてください。テクニカル指標をベースに判断しています。
長期的なポートフォリオ戦略では、長期的に資産を増やしていきます。米国株への投資を維持しながら、引き続き押し目買いの機会をうかがいます。今後も今年のベースラインである8%リターン+αの水準は6%程度に引き下げる必要があるかもしれません。しかし、収益獲得のためにも押し目買いを粛々と実行します。
S&P500の押し目買いターゲットですが、これまで示してきた3150、3100、3045、3000、2965ポイントまで下げました。2965は最終的なターゲットとしてきましたが、ここまで下げましたので、押し目を狙っていた資金のほぼすべてを投入しました。結果的にかなり安い水準で買えたことになります。あとはじっくり戻りを待ちます。戻り局面でいったん一部のポジションを解消するかどうかは、値動きを見て判断します。次のターゲットに3100ポイントを上げていましたが、これを明確に超えていくのを待ちます。S&P500はすでに割高ではなく、過去の平均的な水準になっています。
基本的にS&P500のポジションだけで十分かと思います。様々な資産に幅広く投資するのが安定運用につながります。VIXはヘッジの意味合いもありますので、トレードのアイテムに入れとより幅広い運用ができるでしょう。S&P500とVIXの組み合わせは非常に重要です。
<米国株式市場の短期トレード戦略>
ダウ平均:手仕舞い売り(中期売られすぎ)
S&P500:手仕舞い売り(中期売られすぎ)
ナスダック指数:手仕舞い売り(中期売られすぎ)
ラッセル2000:新規売り(中期売られすぎ)
VIX:新規買い(短中期過熱圏)
*(買われすぎ)は利益確定(ロングの場合)または売り乗せ(ショートの場合)、(売られすぎ)は買戻し(ショートの場合)または買い増し(ロングの場合)、(過熱圏)は短期の買われすぎの指標として見てください。移動平均線からの乖離率を基準にしています。
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