ダウ平均サーキットブレイカー発動も、過去の値動きパターンから長期投資の収益機会にはチャンス 3/10 江守哲氏
江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー 2020年03月10日 08時01分
配信者:ECM
より一分抜粋のうえ転載
〔EQUITY & BOND MARKET〕
【米欧株式・債券市場の市況解説・分析】
米国株は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大や原油価格の急落を受けて暴落商状。ダウ平均は前週末比2013.76ドル安の23851.02ドルで終了。終値の下げ幅は過去最大で、昨年1月中旬以来、約1年2カ月ぶりの安値となりました。取引時間中には一時2100ドル超下落しました。寄り付き直後にはS&P500の下落率が基準値の7%を上回ったため、現行基準となった2013年以降で初めてとなる取引を一時中断する措置であるサーキット・ブレーカーが発動し、15分間売買が止まりました。
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【米国株のトレード戦略】
米国株は過去最大の下げ幅を記録しました。リーマン・ショックとの比較が多く聞かれますが、背景が異なります。したがって、ファンダメンタルズ面からは必ずしも同じテーブルで議論することはできません。しかし、市場は過去の動きと同じパターンで変動します。全く同じように動くことはないのですが、似たような動きをします。したがって、過去の値動きパターンを理解しておくことはやはり重要です。いまはパニック売りが出ていますが、いずれ値を戻します。いまは冷静になり、過去のパターンを理解することに時間を費やしておきたいところです。
過去のパターンについては、これまでも相当数紹介してきました。それによると、1年後のS&P500はおおむね8%-16%程度の上昇になるとの見方になります。しかし、S&P500はザラ場高値から19%の下落になりました。ベアマーケット入り目前になっています。この水準から16%戻しても、過去データの平均に基づけば、年内に過去最高値には達しないことになります。30%以上戻しているパターンもありますので、必ずしも回復しないわけではありませんが、平均的に見ればそのような判断になります。米大統領選もありますので、トランプ政権が早急に株価対応策を繰り出してくるかに注目しておきます。
一方、S&P500が1日で5%以上の下落となった際の週末までの値動きですが、1952年以降で月曜日に5%以上の下落になったのは今回を含めて10回あります。過去のパターンをみると、翌日はすべてのケースで上昇しています。したがって、今日は「買い」です。その際の平均上昇率は4.20%です。翌週まででは平均5.07%で、上昇確率は7.8%と高率です。翌月は平均3.17%で、上昇確率は77.8%です。3カ月後は4.98%上昇で、上昇確率は77.8%。6カ月後は12.75%上昇で、上昇確率は88.9%です。
しがたって、直近は戻した後、上げにくくはなりますが、半年後には12.75%上昇することになります。
このケースでは、リーマン・ショックの際の08年9月28日の下落時だけが、6カ月後に27.89%下げています。しかし、このケースでも翌日には5.42%反発しています。過去データからみれば、今日は少なくとも上昇するはずです。したがって、短期トレードに徹して、今日だけ買うという戦略もあり得ます。一つの参考として見ておいておください。
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VIXは急伸し、一時62.12ポイントまで上昇しました。いうまでもなく、市場はパニックに陥っています。このようなときに、一緒にパニックになって売っていては、せっかくの長期投資における収益機会を逃すことになります。VIXを利用した投資タイミングについては、すでに何度も解説しているとおりです。VIXが35ポイント超えのときにS&P500に投資すれば、1年後は25%、2年後は41%、3年後は45%のリターンが出ています。VIXが高ければ高いほど、その後のS&P500への投資リターンは大きくなっています。
【日本株式・債券市場の市況解説・分析】
日経平均株価は前日比1050円99銭安の19698円76銭、TOPIXは82.49ポイント安の1388.97と、ともに大幅続落。新型コロナウイルスの感染が止まらず、投資家心理が一段と悪化する中、業種を問わず売りが加速しました。銘柄の99%が下落し、上昇は1%にとどまりました。出来高は25億1847万株、売買代金は3兆4646億円。業種別株価指数は33業種すべて下落しました。日経平均採用銘柄で上昇したのは4銘柄のみで、まさに全面安の様相でした。
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黒田東彦日銀総裁は9日の参院予算委委員会で、新型コロナウイルスの感染拡大を背景として動揺が続く金融市場について、「経済の先行きに対する不透明感が強まり、投資家のセンチメントが悪化した結果、世界的に株価が下落、長期金利が低下、為替市場では円高が進む不安定な動きが続いている」とし、「中央銀行として最大限の努力を払って安定を図る」との考えを示しました。FRBが実施した緊急利下げについて、黒田総裁は「世界経済の不透明感の高まりの下での米国内経済・物価の動向を踏まえたもの」とし、日銀については「適切な金融市場調節や資産買い入れを通じて潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めている」としました。その上で、「特に内外金融資本市場の動向を注視し、必要に応じて適切な対応を取る」としました。
【日本株のトレード戦略】
日経平均先物は米国株の下落と円高で、海外市場で19000円割れとなっています。今日も大きく下げて始まりそうですが、米国株のところで解説したように、過去データでは今日は100%値を戻すとのデータが出ています。ここで日本株も下げ止まってくれれば、いったんは底値確認となる可能性があります。きわめて厳しい下げとなっており、多くの投資家が過去最大級の苦しい状況にありますが、まさに正念場ということになりそうです。
現在のような大きな下げ相場の時に、なぜか北朝鮮がミサイルを発射します。相場を下げさせるための演出でしょう。何かしらの動きが結び付いているように見えます。日米北の裏の連携の可能性はこれまでも指摘してきました。株価を意図的に下げさせてからの急回復の動きには要注意かもしれません。
急激な円高と株安の進行により、国内景気に対する懸念が一段と深刻になってきました。これまで「円安・株高」を背景に景気拡大を続けてきたアベノミクスですが、明らかに正念場を迎えています。景気浮揚に向けた財政出動で持ち直すことができるのか、きわめて不透明な情勢です。政府は20年度の予算案の成立を最優先するもようです、与党からはこれとは別に同案成立後の補正予算案編成への要求が強まっているようです。自民党内では「このままだと日本経済は沈没する」として、20兆円程度の大型補正を訴える声が上がっているようです。
財務省内では「補正の議論は避けられない」との見方が既にあるようで、補正予算案の策定を見据えた動きが水面下で進んでいるようです。
〔CURRENCY MARKET〕
ドル円は急落。新型コロナウイルスの世界的な拡大や原油安を背景に安全資産としての円が買われ、102円台前半に急落しました。一時101.18円付近まで円高が進む場面がありました。新型コロナウイルスの感染が世界中に広がり、感染者の地域は100カ国・地域を突破。米国内でも感染者数が500人を越え、NY州でも非常事態が宣言されました。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は9日、新型コロナがパンデミックに発展する可能性について「脅威はかなり現実味を増した」としました。世界の株安連鎖に歯止めがかからない中
、投資家心理が一段と悪化。安全資産としての円に買いが集まっています。さらにOPECの加盟・非加盟国の主要産油国で構成する「OPECプラス」の先週の協議が決裂。これを受けて、サウジが大幅増産に乗り出す姿勢を示し、原油相場が前週末比24%超安で取引を終えたことも円買いの流れに拍車を掛けました。ただし、短期間で急速に円が買われたとの見方からポジション調整の円売りも出ており、102円台に戻しています。また、リスク回避の動きから、安全通貨であるスイスフランも急上昇しています。一方、ドルは新興国通貨に対しては上昇しています。典型的なリスクオフのパターンになっています。ただし、ドル指数は一時18年9月以来の安値に下落しています。
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