井上哲男氏 アムンセンとスコット (RSI連載2)
配信日:2020/07/02 09:37
6月後半の需給(悪)要因を抜けて7月入りした米国市場のスタートはマチマチの動きで、ダウは小幅に下落したが、S&P500とNASDAQは上昇した。
月が替わって出来高も減少。予想していたことではあるが昨日のNYSEで出来高は928百万株と10億株を下回ったが、これは、6月の月間平均1,337百万株よりも、ちょうど30%少ない数字。また、VIXも昨日は2日続けてザラ場の高値安値の幅も小さく、その終値は28.62と、6/11以降で最小となった。つまり、6月の需給要因が収まり、続いているテクニカルレンジ内での動きに“静かさ”が加わった状態である。
それでは、ここから上か、下かということになると、テクニカルレンジで測ると、そろそろ法定速度内での底打ちが出てくるころである。そして、その先陣を切ると現在考えているのが、昨日掲載したRSI。昨夜のダウ、そして、本日の日経平均で、いったんのコツンという底打ちとなる可能性がある。そのようなタイミングに入ってきたと認識しておいて欲しい。無論、過去の5サイン点灯パターンから推測している、「日経平均は7/9まで2万3000円が上値として重い」という2週間前に書いたことはシナリオから外してはいないが、そろそろ、上値が重いのにも飽きてくる時間帯が近づいているということである。
さて、昨夜の米国市場であるが、やはり、コロナウイルス感染症の新規感染者数と、9州から16州に拡大した経済活動の一部引き戻しがニュースとして大きく取り上げられていた。昨日発表(推計)された単日の新規感染者から算出される7日移動平均人数は、これまでのレコードハイとなる4万1879人。
これは、以前にも書いたが、米国が日本の2.6倍人口がいることから、日本にあてはめると、毎日1万6000人新規感染者が出ている計算となる。
しかし、明るいニュースも飛び込んできた。
先週WHOが、ワクチン開発について初めて社名をあげてその進捗を語ったが、それによると、「世界で約140の医薬品製造会社がワクチンの製造に着手しており、そのうち、15社が治験を開始し、なかでも、英国アストラゼネカ社が状況として進捗しており、(先々月末から相場を盛り上げた)米国モデルナ社もそれに近いところにいる」とのこと。(テドロス・アダノム事務局長とスーミャ・スワミナサン主任科学者の2回の記者会見を井上が意訳)
これを受けて、ブラジル、そして日本(安倍首相)が、すぐにアストラゼネカ社に申し入れ、大きな接種回数(1億回分とも言われている)を確保したことがと発表されたが、昨日は、WHOから“名指しでは評価されなかった” 米国ファイザー社から大きなニュースが出た。
同社は、(以前書いたように、急遽資金を入れた)独国の小さな製薬ベンチャーとワクチンの共同開発を進めているが、その治験(初期臨床試験)の結果がとても良かったことを発表した。
幾つかの用量パターンで接種を行った治験参加者に、実際に新型コロナウイルス感染症にかかり、そして回復した人よりも、(体内にできた)抗体が多かったというのだ。そして、重篤な副作用も見られなかったことから、早ければ、今月中にも、次のステップとして、最大3万人を対象とした治験に進むことを考えているという。同社が開発中のワクチンは、実は現在4種類あり、今回の治験データは、そのうちの最も進捗した一薬のものだという。(続く)
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