【無料全文公開】私の愛用するテクニカル[田向宏行]
未来の値動きを予測するテクニカル分析には数多くの指標が存在しますが、全てを覚えて使えるようになる必要はなく、その中から自分のFXトレードスタイルに合ったものを見つけていくことが大切です。専業トレーダーの田向宏行氏は、普段どのようなテクニカルを愛用し、FX相場を分析しているのでしょうか。詳しく解説してもらいます。
※この記事は、FX攻略.com2017年8月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
田向宏行さんプロフィール
たむかい・ひろゆき。大学卒業後、資格試験に挑戦するが挫折。就職できず仕方なく起業。事業経営の間に投資を開始。事業譲渡後の現在は個人投資家。FX会社のセミナー企画・構成も手がけている。著書に『臆病な人でも勝てるFX入門』(池田書店)。
テクニカル分析の王道移動平均線を極める
FXでは株に比べ、多彩なテクニカル分析を使うことができます。株式投資はファンダメンタルズ(企業業績や情報など)、FXはテクニカル、といわれるのも合点がいきます。それほど豊富な種類があるテクニカルですが、私が愛用するのは「移動平均線」です。コンピューター以前の手計算の時代から使われていたテクニカルなので、どんな相場状況でも有効となる普遍性があると考えるからです。
一口に移動平均線といっても、さまざまな種類があります。拙著『臆病な人でも勝てるFX入門』でFXを始めたばかりの方にご紹介しているのは、移動平均線の中でも基本ともいえる単純移動平均線(SMA)です。
拙著では市場参加者の多くが意識している期間21をご紹介しています。この21SMAを適切に使えば、大きな損失を避け、利益を得ながらFXを学ぶことができるため、FX初心者には最適だと考えています。
また実際に私も日常的に表示していますし、私のツイッター(@maru3rd)で言及することもよくあります。シンプルですが誰にでも有効なテクニカルだと思います。
お勧めは虹色チャートとディナポリ・チャート
初心者ではなくFXに少し慣れた方や、株などの取引経験から高値売りや安値買いをして失敗しやすい方にお勧めしているのが「虹色チャート」です(チャート①)。
本誌では2010年1月号から連載しましたし、2016年5月号では特集していただきました。これには7本の指数平滑移動平均線(EMA)を使います。7本のEMAが虹のように描かれ、相場の方向性を視覚的に示してくれます。
FXを始めたころの私がそうでしたが、取引のタイミングが分からないと「そろそろ底だろう」とか、「もう天井でしょう」と勝手に思い込んで逆張りして損をしていました。これを避けるために、相場の大きな流れを視覚的に示すチャートが必要でした。
虹色チャートでは、「売ろうと思っていたが流れは明らかに上向き」とか、「買おう思っていたが流れは明らかに下向き」、ということが一目瞭然で分かるようになっています。私がそうだったように、ついつい相場の流れに逆らって失敗してしまう方にお勧めです。
ただ、私自身は近頃あまり使っていません。自分の勝手な思惑でトレンドに逆らうことがなくなったからです。FXで勝つためには、トレード技術を身につける必要がある上、自分の技術段階に応じて適切な道具を選択することも大事なのだと思います。
もう一つ、誰にでもお勧めなのが西原宏一メルマガでチャート分析を担当している「ディナポリ・チャート」です(チャート②)。
ここで使う移動平均線は、未来に先行させて表示させる「ずらした移動平均線」(DMA)です。移動平均線を「ずらす」という発想はとてもユニークですが、考えてみれば一目均衡表の雲(先行スパン)も同じです。先行させることで相場が動くタイミングも想定しやすくなっています。
また、ディナポリはDMAだけでなくMACDも同時に使います。MACDは2本のEMAの差ですから、こちらでも移動平均線を使って相場を見ることになります。
ディナポリのDMAやMACDも「よくできているなぁ」と思う場面が多く、使い方を熟考すると、個人投資家の有力なツールになると思います。こちらは現在でも私の収益に貢献してくれていて、いつも見ています。
できるだけシンプルなチャート分析を目指す
私はこれら数種類の移動平均線を相場状況によって使い分けたり、比較したりしながら使っています。過去には、RCIやストキャスティクスなどのオシレーター系指標も使いましたが、どうも自分には合わないので現在は使っていません。
テクニカルは複雑な組み合わせよりシンプルな方が、チャート判断を間違いにくいと考えています。よって私は移動平均線しか見ていません。
拙著でも触れましたが、複雑で難しいことをわざわざする必要はありません。FXの目的は収益ですから、できるだけシンプルに目的に向かう方がいいと思っています。ツールを多用したとしても、全ての場面で儲けることはできないのです。
相場格言にあるように、「頭と尻尾」を取るのはとても難しいです。よってトレンドの最後の場面では、結果的に損切りとなることもあるでしょう。これは仕方のないことですし、そうした損失は取引全体のコストに過ぎません。
そうしたコストをゼロにする努力より、トレンドに乗って確実に利益を得られる場面を見つけられるようにする方が大事だと思います。
そしてそのためには、同じテクニカルを使い倒して(単に使うのではなく、使い倒すことが大事です)自分のものにすることが必要です。私の場合はそれが移動平均線だった、ということで、もう10年近く見続けています。
よろしいですか?