潮流282 原油上昇。しかしボールはOPECにもロシアにも無い 井上哲男氏
配信日:2017/05/16 10:06
「MD(マーケットデータ)」に書いたように米国恐怖指数VIXが16営業日連続で11%未満での推移を続け、原油相場は4日続伸となった。
この原油相場の上昇を見て、「底打ち」→「今月末の減産合意で再上昇」というストラテジーを述べている原油(商品系)アナリストの論調が目立つが、果たしてそうであろうか?
バックナンバーのページから読んで頂きたい、「潮流」がある。
1/27配信 「潮流206 原油投機筋ポジションはパンパンに近い」
3/10配信 「潮流238 原油ロング派とディベートしたい。そして私は負けるであろう」
3/13配信 「潮流239 10週ぶりにIMMのドル買い増。リグカウントはさらなる“ナイフ”を示唆?」
である。そして、これらをお読み頂けると、これまでの原油に対する見方が間違っていなかったことがお分かり頂けると思う。
先週金曜日に発表されたNYMEX投機筋ポジションとWTI原油先物の推移グラフを添付するが、これにより、先週、5/9に買い超枚数が32万8751枚となったことが分かる。
ずっと補助線として書き続けてきた枚数は35万枚であり、実に昨年12/6から22週に亘り続けてきたこの「行き過ぎ、買い溜め過ぎ」のレベルから、“やっと”抜け出したことがお分かり頂けると思う。しかし、ここで分かることは“抜け出した”ということだけであり、この買い超枚数が減少を続ける分には、需給が価格に与える影響がプラスであるわけはない。
また、ここで示しているのはあくまでもニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWTI原油先物における投機筋の傾き枚数(ここでは書かないが、厳密に言うと、その7割に相当する枚数なのか、100パーセントの枚数なのかの説明はない)であるが、もうひとつ、米国のインターコンチネンタル取引所(ICE)も同様に投機筋の傾き枚数を発表している。(これまたここでは書かないが、NYMEXと無論似た傾向は示すが、参加者の少なさからか、結構ボラが高く、両市場合算の枚数で測ると、原油価格との相関係数が下落してしまう)
このインターコンチネンタル取引所(ICE)の傾きも買い超が減少している状況であり、とても、「底打ち」とはいえない状況である。
さて、昨日の上昇は、今月25日にウィーンで開催される総会(ロシアも参加予定)で6ヶ月の減産合意がなされると予想されているが、それを待たずに、一昨日、サウジアラビアとロシアが来年3月までの減産をそれぞれのエネルギー担当相レベルで合意したという米系報道機関のニュースによるものである。
となると、OPEC総会での減産合意は“既定路線”として価格に対して決してプラスに働かないことが十分に想定される。
現在、原油相場を占ううえで注意しなくてはいけないことは、原油そのものの動きに加えて、天然ガスのそれ、そして、その需給を追わなくてはいけないということである。
ガスのウォッチといえばサイモンズ。このサイモンズは米エネルギー情報局(EIA)が2月の天然ガス生産量を公表した際に、「日量で14億立方フィート増?」「信じられない、MAX予想の3倍だ」とレポートしている。
大切なのは増えた地域。これがパーミアンだという。1/27配信 「潮流206 原油投機筋ポジションはパンパンに近い」の最後に、この地名とシェール掘削のリグカウントがなぜ増えているかを説明した。もうお分かりであろう、パーミアンの天然ガス生産の日量急増の要因は、シェールオイル掘削の「副産物」なのである。
その後、シェールのリグカウントの増加は、バッケン、イーグルフォードといった地域も含めて米国全土に広がった。
昨年末の減産合意からの流れを示す。
「減産合意」→「価格上昇を期待した投機筋の買い」→「この買いによる価格上昇」→「パーミアンでの損益コスト水準を超え」→「リグカウント増加に転じる」→「他の地域でも徐々にリグカウント増加」→「パーミアンでのオイル副産物である天然ガスの日量増加」→「投機筋の損切り投げ加速」
ここまでが現在。
ここから想定されることは、「他の地域でもリグカウント増加の影響による“副産物天然ガス”の日量増加」である。原油の4日連騰に現在何もインディケーションは含まれないと判断する。
OPEC? ロシア?ボールはそんなところにはない。
(45日ルールを破った46社リストは明日掲載します)
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