欧州ファンダメンタルズ入門|第15回 長期金利について[松崎美子]
松崎美子さんプロフィール
まつざき・よしこ。スイス銀行東京支店でトレーダー人生をスタート。1988年渡英、1989年よりバークレイズ銀行ロンドン本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年に同じくロンドン・シティにある米メリルリンチ投資銀行に転職。その後2000年に退職。現在はFX取引に加え、日本の個人投資家向けにブログやセミナー、YouTubeを通じて欧州直送の情報を発信。著書に『松崎美子のロンドンFX』『ずっと稼げるロンドンFX』(共に自由国民社)。2018年より「ファンダメンタルズ・カレッジ」を運営。DMMで「FXの流儀」のオンラインサロンも始めた。
ブログ:http://londonfx.blog102.fc2.com/
ファンダメンタルズ・カレッジ:https://fundamentals-college.com/
オンラインサロン:https://lounge.dmm.com/detail/1215/
※この記事は、FX攻略.com2020年12月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
マーケットが決定する長期金利
中央銀行は「物価安定の維持」を責務とし、その安定が損なわれないように金利を上げたり下げたり調節しながら、政策金利の決定を行っています。しかし、為替取引をする上で注意しなければいけない金利は、中央銀行の政策金利だけではありません。もう一つの気になる金利とは、国が発行する国債の利回り、別名「長期金利」です。
政策金利は中央銀行がコントロールできますが、長期金利を決定するのはその国の国債を買う投資家たちや、外貨準備金の一部として購入する他の国の中央銀行です。つまり、長期金利とはそれぞれの国債の人気投票のようなもので、経済・財政運営がしっかりしており、満期にきちんと返済できる能力や信用力の高い国の国債には、たくさんの買いが入ります。反対に、返済能力に疑問が生じた国の国債には、誰も見向きもしません。
この「信用力」「返済能力」に応じて、国債の利回りが決定されます。したがって、返済能力があると判断された国は、あまり高い金利を払わずにお金を借りられます。逆に、数年後には、その国の経済や財政事情がどうなっているか分からない、最悪の場合は破綻するリスクを抱えた国は、投資家にとって魅力的な高い金利を提示しなければ、買ってくれる人がいなくなります。
このように、国債の利回り(長期金利)は、中央銀行でさえコントロールできず、あくまでも市場の需要と供給のバランスで決定されるものです。そして、中央銀行が設定する政策金利と同じように、市場が決定する長期金利も為替に影響を与えているのです。
なお、政策金利は中央銀行の金融政策理事会で決定されます。つまり毎日変わるわけではなく、変更が必要となれば金融政策理事会が開催されたときに変更されます。それに対し、長期金利は将来の経済成長期待や格付けなどを総合的に判断して決定されます。その結果、金利水準は一日のうちに何度も変わります。
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