【2020年11月17日】「ワクチン・マンデー」でダウ平均は史上最高値を更新【江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー】
米国株は続伸し、ダウ平均は今年2月中旬以来、約9カ月ぶりに終値ベースの史上最高値を更新した。S&P500も同様に終値ベースで史上最高値を更新した。米バイオ医薬品企業モデルナが新型コロナウイルスのワクチンに有効性が確認されたと発表し、ワクチン実用化による経済正常化への期待が高まった。モデルナは開発中のコロナワクチンに関する臨床試験(治験)で、94.5%の有効性がみられたと公表した。これを受けて景気回復期待が広がり、コロナウイルスの感染拡大で売り込まれていたエネルギー株、航空株などが買われた。ダウ構成銘柄では航空機大手ボーイング、石油大手シェブロンの上げが目立った。
コロナワクチンについては、米製薬大手ファイザーが9日、独ビオンテックと共同開発しているワクチンに高い有効性が確認できたと公表し、同日のダウの上昇幅は一時1600ドルを超えた。この日はバリュー株や景気循環株、小型株が相場全体をアウトパフォームし、ラッセル2000も終値での最高値を更新した。ボーイングが8.2%の大幅高。シェブロンも7.2%高と急伸。ウォルト・ディズニーは4.6%高、ダウは3.8%高とそれぞれ値を上げた。金融株のゴールドマン・サックスが1.5%高、JPモルガン・チェースは2.8%高。モデルナは9.6%高。一方、ファイザーは3.3%安。
旅行関連株が買われ、ユナイテッド航空、アメリカン航空、カーニバル、ノルウェージャン・クルーズライン・ホールディングスは4.5─9.7%の大幅高となった。ただし、米国内では新型コロナの拡大が続いており、感染者数は累計で1100万人を突破。ニュージャージー州やペンシルベニア州フィラデルフィアなど各地で制限措置が強化された。S&P500の主要11セクターはヘルスケアを除いてプラス圏で引け、エネルギーの上げが目立った。
今週は小売り大手の決算が注目されている。17日にウォルマートとホーム・デポ、18日にロウズとターゲットがそれぞれ発表する。17日には10月の米小売売上高の発表もあり、消費動向の手がかりとなる見込み。
米バイオ医薬品のモデルナは16日、開発中の新型コロナウイルスのワクチンに関する臨床試験(治験)で、94.5%の有効性がみられたと発表した。数週間以内に緊急使用許可を米当局に申請し、年内の出荷開始を目指す。ワクチンの実用化へ前進した。発表によると、最終段階の治験で、新型コロナに感染した95例を調査。そのうち90例は偽薬を投与した参加者で、同社のワクチン候補を投与していたのは5例にとどまり、感染予防効果は94.5%との暫定結果が出た。安全性への重大な懸念は報告されていないという。同社の治験には約3万人が参加した。
同社は、有効性や安全性に関するデータが出そろい次第、米当局に緊急使用許可を申請する方針。米メディアによると、許可申請は12月初めになる見通し。年末までに米国内で2000万回の出荷準備が整う見込み。21年中に5億-10億回分の製造を目指している。 欧米では、英アストラゼネカや米ジョンソン・エンド・ジョンソンも治験を進めている。
11月のNY州製造業景況指数は6.3となり、前月の10.5から低下した。5カ月連続でプラスを維持した。新型コロナウイルス感染再拡大を背景に、景気回復の鈍化が鮮明になっている。6カ月先は33.9と前月(32.8)を上回った。11月は業況が「改善とした」と回答した割合が30.8%に大きく減少。「悪化した」は24.4に小幅低下した。新規受注が3.7(前月12.3)、出荷が6.3(同17.8)、受注残高はマイナス11.9(同マイナス6.6)といずれも悪化した。在庫はマイナス8.6(同マイナス14.6)とマイナス幅が縮小した。
雇用関連では、雇用の現状は9.4(同7.2)、支払価格が29.1(同27.8)に改善した一方、週平均の労働時間は4.8(同16.1)に悪化した。6カ月先の見通しは、新規受注が32.9(同37.7)、出荷が28.2(同29.8)と前月を下回った。受注残高は4.6(同マイナス2.0)、在庫は11.3(同2.6)に改善した。雇用は22.2(同23.2)と小幅悪化だった。
オブライエン米大統領補佐官(安全保障担当)は16日、大統領選で民主党のバイデン前副大統領が勝利した「公算が明らかに大きいように見える」とし、バイデン氏への円滑な政権移行を確約するとした。また、大統領選でトランプ氏が続投を決めることを望んでいたとしながらも、バイデン氏とカマラ・ハリス上院議員が率いる新政権とともに取り組んで行く姿勢を表明。「新たな政権が発足する場合、新政権には政策を策定する時間が必要だ。現時点ではバイデン氏が勝利した公算が大きいように見える。国家安全保障会議(NSC)はきわめて専門的な政権移行手続きを実施する。これに疑いの余地はない」とした。
その上で、バイデン氏の準備は整っているように見えるとし、「これがアメリカ合衆国の偉大なところだ。極めて困難な時期でも、平和的に政権が移行されてきた」とした。
(…略)
米国債は利回りが上昇。新型コロナウイルス感染症ワクチンの効果に関する有望なニュースを受け、経済正常化に向けた楽観的な見方が背景。パウエルFRB議長は17日にサンフランシスコの企業団体イベントに参加し、サンフランシスコ連銀元高官のアレックス・メフラン氏と対談する。17日には10月米小売売上高が発表される。
クラリダFRB副議長は16日の講演で、インフレ率2%の上振れを当面許容することを柱とする新目標の達成へ、「FRBはあらゆる手段を講じる決意だ」と強調した。失業率の改善だけでは金融引き締めの判断にならないと明言。長期緩和により景気を支える方針を改めて示した。FRBは、市場機能の円滑化と景気回復を後押しするため、月額1200億ドルの米国債と住宅ローン担保証券(MBS)を購入している。副議長は「雇用最大化と物価安定目標を最も適切に支援するために資産買い入れ策の評価を続ける」と説明した。
政策金利が事実上のゼロに達した状況で、追加緩和策の一つとして資産買い入れの追加策が検討対象になるとみられている。買い入れ規模の拡大や、償還期限が長い国債の購入で金融緩和効果を高めるとの観測が一部で浮上している。また、国債買い入れ規模を調整し、利回りを一定水準に誘導する「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」について、日銀などが導入している実例を踏まえてFRBが検討するのは当然との認識を示した。その上で「今でも政策手段の一つと考えているが、今の買い入れ策がうまく機能しているため、現時点で検討しているものではない」と説明した。
また、新型コロナウイルス感染拡大で経済は「大きな穴」ができたとし、「追加の金融政策と財政政策による支援が必要である公算が大きい」と主張。政府と議会に対し、追加のコロナ経済対策の実現を改めて促した。一方で、2種類のコロナワクチンに高い有効性が期待できると発表されたことを受けて、「リーマン・ショックよりも回復ペースが大幅に速い可能性がある」と指摘。景気の持ち直しがこれまでの想定より上振れするシナリオもあるとした。
【米国株のトレード戦略】
米国株はさらに値を上げ、高値を更新している。この日も上昇が目立ったのはラッセル2000である。中小型株の回復ぶりが目立っており、「ワクチン相場」の主役は、これまでコロナ危機で売られた銘柄である。ダウ平均にもそのような銘柄が多いことも、ダウ平均を押し上げているといえる。一方、これまで相場をけん引してきたハイテク株は上値が重い。個別にみると、その傾向がきわめて鮮明である。このように、米国株でも物色の対象が明らかに変わってきている。私がいまダウ平均とラッセル2000をロングした理由には、上記のような背景がある。幸い、順調に収益を伸ばしている。
それにしても、「ワクチン相場」の復活である。ファイザーに続いて、モデルナも出てきた。なぜか、月曜日にこの手の話が出てくる。まさに「ワクチン・マンデー」である。来週の月曜日もワクチンに関する何かしらのポジティブな材料が出てくるのだろうか。いずれにしても、いまはこのような報道が突発的に出てくるため、空売り筋が損失を出しやすい地合いにあることだけは確かである。いまの相場では、安易な空売りは損失を拡大させるだけである。割高感があるとか、いろいろな理由をつけて警戒感を指摘しても、事実として相場は上げている。運用で収益を上げるためには、相場についていくことが重要である。
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