【メルマガ無料公開】「負けない投資」に繋ぐバリュー投資と企業価値分析の徹底 バリュー投資ファンドマネージャー 柳下裕紀氏に学ぶ
ウォーレン・バフェット氏が象徴的なバリュー投資(割安にあると考えられる株式銘柄を買い付け、比較的長期間保有し続け値上がり益や配当を狙う投資)ですが、日本にもバリュー投資で有名な方がいらっしゃいます。
株式会社アウレア・ロータス(https://www.aurealotus.com)社長の柳下裕紀氏は、米大学に留学後1997年にシティコープ証券から金融取引の世界に入り、BNPパリバ証券で経験を積み、米国西海岸の投資ファンド、Explorer Fundで当時勃興し始めたIT企業中心の米国株ファンドマネージャーを務めました。
その後2002年から香港へ渡りアジアのウォ―レン・バフェットと称されるCIOが率いるValue Partnersで、日本株を含むアジア株のファンドマネージャーを経験し、日本のゴールドマンサックス・リアルティで、企業再生ファンにタッチした人物です。
香港時代からバリュー銘柄の発掘に注力し金融業界の周囲の人々からもその知見に信頼を寄せられています。
現在は、香港のヘッジファンドの外部委託ファンドマネージャーとして、日本株ファンド、米国株ファンドの運用を行なう傍らバリュー投資の勉強会も開催しています。
当初は知人を中心に少人数ではじまった柳下氏を囲む会が徐々に規模を拡大し、現在は、月2回程開催される勉強会は大変な盛況となっていて、氏はバリュー株式分析の伝道師のような存在となっています。
GogoJungleオンラインサロン バリューで紐解く企業とマーケット では、価値を創造し増大し続けられる企業を見出し真の価値に身銭を投じる方法論を体系的に学ぶと共に、実際の個別銘柄分析も行なっています。
本日は、11月7日に発信されたコンテンツをご覧いただきたいと思います。
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配信日:2020/11/30 12:25
2020年11月No.3『セグメント情報から事業分野の状況を把握する重要性:MonotaROのケースを検証』
すっかり遅くなってしまい、大変申し訳ありません。
11月最後のメルマガ講義です。
少し前に、Twitterに
『企業価値分析するに当たって、当該企業またはグループの事業内容と主要な関係会社の事業に係る位置付けをシッカリ確認しておくことは基本のキで、非常に重要です』
と呟きましたので、少しその辺の見方を基本のキから。
グループの事業内容と主要な関係会社の事業、というのは、御存知の通り、
有価証券報告書にある「関係会社の状況」を見れば分かります。
基本的に連結財務諸表というのは、子会社などを含めた企業グループ全体を1つの会社のように見立てて作成されています。
複数の事業を国内外の色々な地域で行っている企業グループの場合は、各地域での活動の結果が混じり合って集計されているので、連結財務諸表だけではセグメントや地域ごとの詳しい状況は分かりません。
事業分野ごとあるいは地域ごとの情報として「セグメント情報」があり、事業分野ごとの業績やグローバル展開の状況が記載されています。セグメントの区分の仕方は会社ごとに違い、事業分野ごとに区分している場合が多くなっていますが、地域ごとに区分したり、或いは、国内は事業分野ごとに区分し海外事業はまとめて、という場合も見られます。
セグメント情報では、企業が分けたセグメント毎に、通常少なくとも売上高・利益・資産の数字が公表されていて、大抵はその数字の大きさと全体に於けるウェイト、規模と業績への貢献度合い、コアなのかサブコアなのか、などが分かります。
また、売上高は、顧客への販売額である「外部売上高」と社内のセグメント向けの販売額である「セグメント間の内部売上高又は振替高」の2つに分かれています。
このうち、「セグメント間の内部売上高又は振替高」が大きい場合には、あるセグメントで作った部品を他のセグメントが原材料として使うといったように、セグメントの間での取引が多いことを意味しています。大抵はコア事業の補完的な位置づけということで、つまり内製比率が高いということでもありますね。
資産の大きさからは、各セグメントの運転資本や店舗や工場といった設備などの面からの事業規模の大きさが分かります。ただ、資産の中にはのれんも含まれるので、買収して事業を拡大した場合には、それによって大きくなっている場合もあります。ここから、事業ごとの資産回転率(売上高÷資産)も計算できます。これをもとに、セグメントごとの事業の質の高さと、そのベースとなる事業の傾向であったり、付加価値の高い事業なのかどうか、などが確認できます。
上述どおり、セグメントの区分の中で海外分が区分されていれば、海外の売上高・利益・資産の金額が分かるので、これらの数字の大きさと全社に占める比重から海外事業の規模が分かります。
海外売上高の比率が7割以上を占めていればグローバル企業、50%前後の場合はグローバル展開がかなり進んでいる企業、20から30%程度の場合はグローバル展開の基礎ができた企業といわれています。
また、海外セグメントの「セグメント間の内部売上高又は振替高」が多い場合は、海外で製造したものを国内に輸入しており、海外は製造拠点となっていることを意味しています。さらに海外の資産が大きい場合は、一般に製造販売の面で現地化が進んでいることを意味しています。ただ、ここでも、資産の中にはのれんも含まれるので、買収して海外進出した場合は、それによって大きくなっている可能性もあります。なお、製造業の企業において海外の利益率が低い場合は、海外で製造あるいは販売だけを行っていることが理由となっている場合もあるので注意が必要です。
いつも言っている通り、基本的に企業価値算定はDCFを使いますが、こうした資料を使って事業マルチプルでも企業価値を算定します。それぞれの事業価値も見えてきますし、何よりも自分の中で、それぞれの将来価値創造の可能性、リスク認識を明確にすることで、何をポイントとして押さえ、フォローすべきかを確認することが出来ます。
先週の土曜日に、100回目を迎えた卒業生サロンを開催しましたが、
その中でMonotaROの親会社、Graingerに関する質問がありました。
MonotaROの場合は、同社がGraingerグループ内の子会社ですが、非常に重要な位置づけになっていることは、サロンでも詳しく御話してきました。
元々のGraingerは大企業向けに一括購買の仕組みを提供するのが中心の卸で、古くからの顧客基盤の中で安泰なビジネスをやっており、ネットにも出遅れていました。そうした中、アマゾンなどの台頭もあり、業績も株価も非常に低迷していた訳ですが、2010年にMonotaROがグレインジャーに対して中小企業市場の開拓を提案して、ネットがメインの子会社を作らせ、そこにMonotaROから人を派遣して、諸々のノウハウを提供した、この子会社Zoroが非常に伸びて、2013年から黒字化し、その後も右肩上がりで成長しています。
Zoroビジネスは米国内だけでなく、欧州にZoro UKも展開していきましたので、これを成長戦略事業として位置づけ、従来の卸事業をHigh-touch solutions model、zoroとmonotaroが担うデジタルソリューション事業をendless assortment modelとし、2つの事業で安定と成長の両輪で拡大する、という戦略を打ち出した訳ですが、2019年には、米国、欧州、日本における Grainger 社のendless assortment busines の統括役員、Managing DirectorとしてMonotaROの鈴木社長が兼任で就任しました。MonotaROのGraingerグループに於ける存在感の大きさが良く分かると思います。
GraingerのROICは、2010年までは15%前後、これが2011年~2017年は17~18%前後に右肩上がりで推移し、2018年以降は20%台に、そして直近は23%まで上昇しています。
MonotaROがGraingerグループそのものの企業体質まで変えてしまったことが良く分かるニュースも出ていましたね。
「世界最大の間接資材販売「W.W.Grainger」の中国子会社がMBO 独自調達プラットフォームを立ち上げ」
それでは本日はこの辺で。
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MonotaROの海外展開の背後の関係を詳述する今回の記事のように、企業を取り巻く状況をつぶさに調べその成長性を丹念に探っていく柳下氏の分析方法や情報に頻繁に接することで、個人投資家の方の投資ノウハウが格段に向上することは間違いがないように思われます。
written by Hayakawa
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