【扉を開いて】 株が足りない
株式
2021年4月11日(日)晴れ
・株が足りない 日銀が変えた需給、ニューノーマルの投資術
「構造的にショート(空売り)がやりにくくなっている」。
機関投資家向けに日本のロング・ショート戦略のファンド手掛けるアセットマネジメントOne坂井義隆氏は日本の株式市場の変化を感じている。
ロング・ショートは割高な銘柄を売り持ち、割安銘柄を買い持ちする戦略で、空売りは運用上欠かせない。
運用成績は良好なものの、足元ではより一層ショートの対象銘柄を選ぶことに神経質になっている。
背景にあるのが、日本の株式市場における需要構造の変化。
日経平均株価は新型コロナ禍に見舞われた2020年に16%上昇。しかしその間、海外投資家は現物と先物で6兆円売り越す。
東証の売買代金の7割を占める外国人投資家が大きく売り越したのにかかわらず、日本の株式相場は上昇。
・株が足りない 日銀が変えた需給、ニューノーマルの投資術
株価への上昇圧力を生み出している第1の変化が日銀 <8301> [終値36900円]による上場投資信託(ETF)の買い入れ。
日銀は2010年にETFの購入を始め、継続的にETFを通じて日本株を買っている。
株価下落時にETFを買い下値を支えるというのが、市井の投資家が描く日銀の姿に。
ポイントは日銀が株式を放出しない主体であるということ。
ETFの購入を始めて10年超、日銀がETFを討ったことはない。
日銀が保有するETFの時価は50兆円を超えた。
株式市場から見ると、日銀は現状では株式を吸収する主体にみえる。
・株が足りない 日銀が変えた需給、ニューノーマルの投資術
第2の変化が、自社株を買い入れる上場企業が増えたということ。
企業統治改革の進展で、上場企業も株式を市場から吸収する主体として定着した。
半面、実質的な希薄化を招く自社株の売り出しなどの行動は忌避される傾向が強まっている。
一部の「品薄株」の価格高騰しているのが今の日本株の実相。
・株が足りない 「スクイーズ市場」の歩き方
日経平均株価が再び3万円を試す中、買い手と売り手の「需給」が株価を決める側面が強まっている。
日銀 <8301> [終値36900円]買いと企業の自社株買いで、市場に出回る株式が減少していわば株式がスクイーズされる(絞られる)状態となっている。
マヨネーズ容器を手でぎゅっと絞ると、中身が出てくるような株高につながりやすい市場構造が定着しつつある。
・株が足りない 「スクイーズ市場」の歩き方
低浮動株 リスクを逆手に 上下に振れやすい株価、業績考慮し選別
業績成長が見込まれ浮動株比率が低い主な銘柄
プロレド <7034> [終値3245円]浮動株比率 0.19% 予想PER 40倍 増益率 93.7%
ファーストリテイリング <9983> [終値87890円]0.2% 56.4倍 40.4%
NSSOL <2327> [終値3730円]0.25% 20.1倍 16%
アスクル <2678> [終値4135円]0.25% 29.8倍 23.8%
東京個別 <4745> [終値648円]0.25% 9999.9倍 5.6%
ZHD <4689> [終値545.9円]0.28% 42.9倍 40%
・株が足りない 株高だけど・・・個人投資家は慎重
「下がったら買う」積みあがる余力
日銀 <8301> [終値36900円]や企業による買い支えの効果もあり、高値での推移が続く株式市場。
株高を見た個人投資家の参入が相次いでいることにより、相場の転換点が近づいているとの声が増えている。
だが相場全体の需要を捉えると、むしろ「個人の過熱感はむしろ少ない」との見方も成り立つ。
根拠となる指標は3つ。
1つ目は信用取引の買い残高が時価総額に占める割合。信用買い残の水準は、3兆円を超え2年半ぶりの高水準となっている。
だが、時価総額との非核ではほぼ横ばい。株高のペースに比べ、信用取引を手掛ける個人のリスクテイクが進んでいない。
2つ目は個人の待機資金の動向。受け皿となるマネー・リザーブ・ファンド(MRF)の残高は14兆円で過去最高水準にある。
3つ目は弱気型ETFの口数。日経平均が1%下落すると、価格は自反対に2倍の2%上昇する
日経ダブルインバース <1357> [終値399円]の投資口数は約6億口と最高水準で個人の相場への伸長姿勢は根強い。
総合すると、個人投資家によるリスクテイクはなお限定的と言える。
待機資金の多さは「下がったら買う」備えができているということも示す。
×
よろしいですか?