ここから積極的にドルを売ることは憚られる…(2021.08.30更新)
日本で唯一のFX専門誌『FX攻略.com』で130回を超える人気連載だった「これからの外国為替相場の行方」。Webでも変わらず経済アナリスト・田嶋智太郎さんに、日々動き続けている相場が今後どのように動いていくと予測しているのかを教えていただきます。
田嶋智太郎氏プロフィール
たじま・ともたろう。経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
目次
- FRB議長の講演と関係者によるいい意味での「印象操作」
- 米国のデルタ変異株対策の強化で求職活動は活性化へ
- ユーロドル、ポンドドル、ドル円見通し
記事本文:1387文字(有料部分:576文字)
FRB議長の講演と関係者によるいい意味での「印象操作」
先週末27日にオンライン方式で行われたFRBの年次シンポジウムでのパウエル議長の講演内容は「ほぼ予想通り」から「想定したほどタカ派的ではなかった」というのが市場の受け止めのようである。米国における現在のデルタ変異株の感染拡大状況を考えれば、予想通りの「現状に即した適切な発言内容」となるのは当然であるし、そもそもFRB議長たる者が市場に手掛かりを与えるような不用意な発言をするはずもない。
事前に幾人かの地区連銀総裁らがヤケにタカ派的な見解を披露していたが、それも関係者らによるいい意味での「印象操作」だったように思われる。そのおかげで、パウエル氏の発言には「市場の一部が期待したようなタカ派シフトは見られなかった」という印象がもたらされた。
言うなれば、市場は勝手に期待し、勝手に肩透かしをくらった。そこで、少し多めに抱えていたドル買いポジションを外したことから、見た目にはドル売り圧力が強まったように映ったわけだが、それは足元の米国景気の実態を反映したものでは必ずしもない。
米国のデルタ変異株対策の強化で求職活動は活性化へ
既知のとおり、バイデン米政権は3回目のワクチン接種を9月にも開始することとした。米国企業のなかには、ワクチン接種を採用条件として求人を出すところが急増している。すでにワクチン接種の証明がなければオフィスへの出社を認めない企業も増えているし、公立学校の教職員や兵士にもワクチン接種が義務付けられ始めている。とにかく、この数週間で米国のデルタ変異株対策は一気に強化されており、その事例を挙げればきりがない。近い将来、その大きな効果は必ずや発現することとなろう。
学校や企業の対応が徹底されて行けば、子育ての手が離れる親や失業保険手当ての上乗せ給付を受けられなくなった向きなどが、これから一気に求職活動を再開する。既知のとおり、米求人は史上最大レベルになっているわけで、求職者が増えれば——
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