米 2月4日発表の雇用統計で市場が荒れる可能性も
2月4日発表の雇用統計で、どういうデータが出てくるか、そして、それに市場がどのように反応するか、予想しにくい。
(1)雇用統計は、特殊事情によりかなり弱い可能性がある。
オミクロン株の感染拡大を受け、1月の雇用統計は非農業部門雇用者数増加が弱いか、減少した可能性もある。米労働省労働統計局の事業所調査では、雇用されていても、病気で休んだりして給与が支払われなかった人は失業者としてカウントされる。
なお、1月の非農業部門雇用者数の前月比の市場予想は15万人増であるが、上記したように、それより弱いと思われている。
しかし、それはオミクロン株の感染拡大という特殊事情により歪められており、ISM雇用指数に見るように、実態は雇用堅調と考えられている。
(A)2月2日に発表になったADP雇用統計*では、民間部門雇用者数は前月比30.1万人減と減少した。新型コロナウイルスの感染拡大による企業活動の混乱が響いたようだ。
ADP雇用統計=企業向けに給与計算サービスを提供しているオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)社が保有するデータを基に、雇用統計を推計している。民間企業だけで政府の雇用は含まないところが、米労働省労働統計局が発表する被非農業部門雇用者数と異なる。
(B)1月の新規失業保険請求件数も、12月より増えている。(新規失業者が増加→雇用は減少)
(2)金融政策に影響はないと思われるが・・・・?
(A)FRBの金融政策には二つの使命があるが、今は、雇用の最大化よりも、物価の安定に力が入れられている。
(B)1月の米雇用統計発表を4日に控え、ホワイトハウス当局者、米金融当局者らは事前に期待値を下げようとしている。
1月の米雇用統計発表を4日に控え、ホワイトハウス当局者は事前に期待値を下げようとしている。新型コロナウイルスのオミクロン変異株感染で短期間病欠となった労働者が失業とカウントされ、失業者数が実態よりも誇張された数字となる可能性があると説明している。
複数のバイデン政権当局者は、1月の雇用者数調査が実施された週がホリデーシーズン後の病欠のピーク時期に重なったと指摘。米金融当局者らも同様の警告を発した。ブルームバーグのエコノミスト調査によれば、1月の非農業部門雇用者数は中央値で前月比15万人増と2020年末以来の低い伸びとなる一方、失業率は前月と同じ3.9%の低水準にとどまると見込まれている。
ディース国家経済会議(NEC)委員長は1日、MSNBCとのインタビューで、オミクロン株感染の病欠が失業と区分されることで「紛らわしい」数値となる恐れがあるとした上で、「われわれはもともと単月の動向にあまり重点を置いていないが、1月の場合は特にそれが当てはまるだろう」と語った。
フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は同日のブルームバーグテレビジョンのインタビューで、オミクロン株感染拡大の影響により「今週末に発表される雇用統計は恐らく悪い内容となるだろう」と話し、セントルイス連銀のブラード総裁も同様の理由で1月のデータは良くないだろうと述べた。
バイデン大統領はこれまで、力強い景気回復の反映として雇用統計の数値を繰り返し掲げるとともに、失業率の改善を強調して物価急騰を巡る批判をかわそうとしてきた。なお、失業率は雇用者数とは別の調査を基にまとめられ、無給の短期病欠の扱いも異なるため、1月は引き続き極めて低い数値となる可能性がある。
ウォルシュ労働長官とサキ大統領報道官も1月の雇用者数の伸びが低調となる可能性に言及。サキ報道官は1月31日の記者会見で、感染力が極めて強いオミクロン株流行の下、同月のデータ集計時に約900万人が病欠した点に触れ、労働者が有給休暇とならなければ失業と記録されてしまう仕組みに理解を促した。
(3)雇用統計が弱かった場合の市場の反応
以下の反応を示す可能性もあるが、既に市場には織り込み済みかもしれない。その場合の市場の反応の予想は困難。
(A)外為市場ではドル売りが加速
(B)債券市場では、中長期債が買われる(金利低下)
(C)株式市場では、Nasdaq市場が買われる。(PER低下圧力が弱まるので)
(1)ADP雇用統計と労働省統計のグラフ、(2)非農業部門雇用者数と新規失業者申請件数の関係のグラフは、次の通り。
よろしいですか?