為替介入は効くか? たぶんYes
今、円安を演じているのはキャリートレードである。投資家としては、円に対して安くドルを買いたい。大きなキャリートレードを行うと、自らドルを釣り上げてしまい、高値でドルを買ってしまうことになる。
ところが、日銀が介入(円買い/ドル売り)してくれると、日銀はなるべく円高水準で実行したいので、キャリートレードの投資家にとっては好都合である。安くドルを手に入れられる。日銀の介入は、投資家の餌食になる。こうして、日銀の介入効果は消されてしまう。これが通常だ。
2003年のドル買い介入の時は、これでもかというほどの、とんでもない大規模のドル買い介入を行い、投資家のドル売りを全てのみ込んでしまった。あの時は、円資金を調達してドルを買うので、そういうことができた。今回は、手持ち(外貨準備)のドルを売ることになるので限りがある。また、そんな大規模な為替介入は国際的に許されないだろう。そもそも、為替介入自体が許されない。
今回は、
・自国通貨の押し上げ介入であること
・円安を放置すると、日本でも物価上昇が起き、スパイラル的に世界に波及する可能性がある。
・キャリートレードで資金が米国に流入すれば、米国のQT(量的引き締め)の邪魔になる。
・日本は生産の海外外移転が進んでおり、円高になっても、米国の輸入物価上昇にはつながりにくい。
等の理由で、日本が介入しても、とがめなしですまそうということなのではないか? この4つの理由は、どれも弱く、理由にならないほどだが、日本が困っているなら、こじつけの理由でも許そうということだろう。
私は、外為銀行にいたこともなく、為替のトレーディング担当者でもなかったので、日銀の「レートチェック」といっても、ピンとこない。どういうものなのだろう? しかし、報道によると、『日銀が14日、為替介入の準備のために市場参加者に相場水準を尋ねる「レートチェック」を実施したことが分かった。』とのことである。そして、『レートチェックは円買い介入に向けた準備段階にあたる』とのこと。
さて、以上のような状況(特に、外貨準備を原資とする円買い介入は規模に限度があること、米日金利差というファンダメンタルズ)で円買い介入を実施して、円安トレンドを変えることはできるのだろうか?
常識的には、上記したように、投資家の餌食になるだけで、できないという答えになろう。そんなことは、日本の財務省も日銀も分かっている。どうすれば、効果がでるか、相当研究したはずである。
次のグラフは日本の国際収支の状況である。極めて専門的になるので、説明は省略するが、円安トレンドを抑え込むのはできそうに思える。
青い部分は、キャリートレードなどを反映している。
経常黒字がなくなり、円高要因がなくなっている中で、キャリートレードがドル高をもたらしている。しかし、ドル高をもたらしているのは主にそれだけだ。本邦投資家の米国債買いが出ているわけではない。キャリートレードさえ翻弄すれば、ある程度円安を抑えられそうだ。やみくもにドル売りをしても、押し戻されるだけだ。如何にキャリートレードを翻弄するか、日銀の腕の見せどころだ。
よろしいですか?