米国 物価上昇沈静化なんてしていない(8月消費者物価)
経済情報
その昔、ボルカー議長のころ、毎週のM1の発表が大イベントだった。
インフレ抑制の為に、M1をコントロールすることが金融政策の目標だったからだ。
その後、グリーンスパン議長からは雇用統計発表がメインイベントになった。
ディスインフレの時代で、金融政策の目標は専ら雇用の最大化になった。
今は、消費者物価の発表が最大のイベントだ。
雇用どころでない。インフレを抑制するのが最優先の目標だ。今のところ、手段は利上げとQT(量的引き締め)だ。市場ではソフトランディングが可能かどうかという議論もあるが、FRBはリセッションも辞さない考えだ。
米国で8月の消費者物価が発表された。食品とエネルギーを除くコアの物価指数は、前月比で+0.57%、前年同月比で6.3%
内容は、日経記事が詳しい。特に付け加えることもない。そのとおりだ。
物価上昇沈静化の期待は裏切られた。
今回の結果は、金融引き締め強化につながり、金利は予想以上に上昇、株価は下落、ドルは買われた。
原油価格は下落が続いており、景気を反映する工業金属価格も前年比で下落していたので、物価上昇率が低下するかもしれないと、期待し過ぎていた。
注目の家賃を除くサービス価格は、再び伸びを高めた。
やっぱり、労働需給が緩和して賃金の伸び率が大きく低下しないと、目標の物価上昇率(前年同月比で2%)まで低下してこない。
物価を押し上げてきた要素は、コモディティー価格の上昇と賃金の上昇だ。コモディテー価格の上昇は(需要の減少期待で)沈静化した様子だが、賃金の上昇は続いている。今の物価上昇は、wage-push inflationと言ってよいだろう。
物価は、需給(需要と供給)とコストで決まる。コストは、原材料価格、人件費、生産性で決まる。今は、需要の抑制と供給の回復で需給は改善してきている。問題は人件費の上昇だ。FRBはさらに需要を抑制し、タイトになっている雇用市場を緩和しようとしている。
パウエル議長は、昨年は物価は長期的に2%上昇ラインに乗っていればいいと言っていたが、今は、全く言わない。夢物語を言ってもしようがないからだろう。
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