【6月12日のトレード戦略】米朝首脳会談を前にドル買いが加速【江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー 】
2018年06月12日 08時31分
江守哲のリアルトレーディング・ストラテジー より抜粋
〔EQUITY MARKET〕
【米国株・欧米債券市場の市況解説・分析】
米国株はほぼ横ばい。米朝首脳会談を翌日に控えて様子見ムードが強まった。トランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は12日にシンガポールで史上初の米朝首脳会談に臨む。ポンペオ国務長官は記者会見で、「北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆な非核化のみが米国の受け入れられる唯一の結果だ」と強調した。一方、北朝鮮側の出方が読み切れないこともあり、市場では会談の結果を見極めたいとの思惑から積極的な取引が手控えられた。12・13日にはFOMCが開催されるほか、14日にはECB定例理事会、14・15日には日銀金融政策決定会合が予定されており、主要中央銀行の政策決定が相次ぐことも投資家の様子見姿勢を強めた。前週末のG7サミットで成果が出なかったことの影響もほとんどなかった。市場は米朝首脳会談でよいニュースがもたらされる可能性に着目しているといえる。
米国債は利回りが上昇。FOMCでは0.25%ポイントの利上げは確定的となっている。この日実施された総額320億ドルの3年債入札と220億ドルの10年債入札は底堅い需要を集めた。10年債利回りは2.9516%、2年債利回りは2.5243%にそれぞれ上昇。イールドスプレッドは0.4273%に縮小している。12日には140億ドルの30年債入札が実施される予定。
欧州市場では、ロンドン株が反発。ポンド安を好感し、輸出関連株が買われた。合併・買収(M&A)の動きも支援材料。FTSE100種は1週間ぶりの高値をつけた。欧州株も反発。イタリアの新経済相がユーロ圏に残ると約束したことで安心感が広がり、欧州の銀行株やイタリア市場が上昇した。STOXX欧州600銀行株指数が2.8%上昇し、全体指数を押し上げた。イタリアのFTSE・MIB指数は3.4%、スペインのIBEX指数は1.6%それぞれ上昇した。また、イタリアの大手銀行ウニクレディトやインテーザ・サンパオロはと
もに6%超の急伸となった。ユーロ圏債券市場では利回りが低下。イタリアのトリア新経済相が新政権にはユーロ圏を離脱する意図はないと発言したことを受けた動き。トリア経済相は債務水準の引き下げに注力すると同時に、投資と構造改革を通して成長を押し上げたいとしている。イタリア2年債利回りは60bp低下の1.08%、イタリア10年債利回りは30bp低下の2.859%となった。10年債利回りの1日の低下は約6年ぶりの大きさだった。ドイツ10年債利回りは0.494%に上昇した。
【米国株のトレード戦略】
ロング戦略を維持します。米国株は動きが小さいですが、米国株の投資家も米朝首脳会談を注視しているということでしょう。イタリア情勢はこの日の市場動向を見る限り、かなり沈静化してきた感があります。ただし、イタリア国債利回りがまだ高い水準にありますので、これが沈静化するのを待ちたいところです。ドイツ銀行の株価も低迷したままですが、徐々に下値が切り上がってきたようにみえます。これが回復すれば、市場センチメントはさらに好転するでしょう。2010年以降の欧州債務危機お想起させる可能性は残っていますが、いまは当時と背景が大きく違います。危機になりそうな兆候が見られるまでは、あまり慎重になりすぎないようにしたいところです。
米国株はきれいに上げてきています。この基調が続くことで、さらに投資家の注目度が上がり、資金を呼び込む動きになるでしょう。あとはダウ平均とS&P500が1月高値を超えるのを待つだけです。今週の重要イベントを無事通過すれば、投資家心理も大きく好転するでしょう。ナスダック指数は買われすぎを示しており、今週の上昇は小幅になりやすい状況です。しかし、1カ月後には78%の確率で上昇しており、平均上昇率は2.4%に達しています。つまり、今週下げても、その下げを利用して買うと、かなり高い確率で追加リターンを得ることができるといえます。これは心強いデータです。
繰り返すように、米国の今の株式市場は、やはりハイテク株中心です。ナスダック指数は連日の高値更新です。これまでの見立て通りです。ナスダック100を中心に投資していれば、いつ買っていても利益になっています。2月以降の株価の下落基調は終了しました。S&P500も堅調です。ダウ平均もついていくでしょう。過去の金利上昇局面を考慮すれば、ダウ平均で30500ドル、S&P500で3300まで上昇すると考えられます。金利はむしろ上昇しないとよくありません。金利が徐々に上昇していけば、いよいよ2020年に向けて、17年間の米国株の上昇期間の最初のフェーズである8年間の上昇トレンドの最終局面に入っていきます。そうなれば、ここからさらにバブル化していくことになります。繰り返すように、米国株式指数への投資では、優位性がある順は、ナスダック指数>S&P500>ダウ平均です。トレード戦略では従前から先物CFDあるいはETFへの投資を推奨していますが、具体的な投資対象となれば、ナスダック指数CFDあるいはナスダック100のETF(QQQ)>S&P500CFDあるいはETF(SPY)>ダウ平均CFDあるいはETFです
。個別銘柄では、ネットフリックス>エヌビディア>アマゾンが中心です。これらの「王道銘柄」を中心に投資しておくのが当面はよいでしょう。これらは素晴らしいパフォーマンスになっています。このような銘柄をしっかりと握っていれば、安心感があります。また、そのあとにフェイスブック>アップル>マイクロソフト>アルファベットの順に、サブ銘柄としてポートフォリオに追加していくと良いでしょう。
さて、今日はいよいよ史上初の米朝首脳会談です。しかし、これまで解説したとおりですので、何も心配はいりません。米国の要求を北朝鮮が受け入れるかどうか、それだけです。北朝鮮の非核化の方式・期限などの具体策で合意できなければ、米国は北朝鮮を見限るだけです。すでに水面下で何度も交渉しています。これで北朝鮮が卓袱台返しをすれば、まさに「終わり」です。トランプ大統領は65年間も休戦状態にある朝鮮戦争(1950-53年)に終止符を打つことで「歴史的業績」に位置付けたいようですが、これは普通に考えれば、それほど難しくはないでしょう。今回の会談は、トランプ大統領と金委員長の1対1の形式で始まり、米国側からポンペオ国務長官、ケリー大統領首席補佐官、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が同席する拡大会合に移行し、ワーキングランチも行われる予定です。ただし、北朝鮮側は「会談は1日のみ」とし、今日中に北朝鮮に帰国するとしています。果たして時間が足りるのかどうか。いずれにしても、会談の結果を待ちましょう。
ポンペオ国務長官は記者会見で、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)が、米国が受け入れる唯一の成果だ」と改めて強調しています。非常に明確であり、それを前提に事前交渉が行われているはずです。マスコミは非核化について、金委員長からどこまで具体的な譲歩を引き出せるか、「交渉の達人」を自負してきたトランプ氏の技量が問われることになるとしています。しかし、何もわかっていないことがよくわかります。すでに米国側の態度は決まっています。その一方で、ポンペオ国務長官は「これまでとは異なる体制保証を提供する用意がある」として、非核化の見返りに経済協力も含め、体制保証を与える方針を明確にしています。ここまでやって、北朝鮮が受け入れないとなれば、一撃で終わりです。交渉などの言葉がマスコミでは上がっていますが、ほとんどその余地はないでしょう。
また、今回の会合で詳細を詰めることはできないでしょう。次回の首脳会談の時期を設定できるかどうかも会談の成果を判断する要素となるとの見方がありますが、それ以上に重要なことは、北朝鮮が米国の主張を受け入れないと、どうなるかを理解しているかどうかです。ポンペオ国務長官は13・14日に韓国と中国を歴訪し、会談結果を日本、韓国、中国に説明する予定です。一方、トランプ大統領と韓国の文在寅大統領は電話会談しました。韓国側は米朝首脳会談で成果を出すための具体的な方策を協議、朝鮮戦争の終結宣言についても話し合ったようです。両大統領は「米朝両首脳が虚心坦懐に対話し、米朝間の共通分母を見いだし、心を合わせれば、大きな成果を期待できる」との認識で一致したといいます。トランプ大統領は今月1日に、ホワイトハウスで金委員長の最側近である金英哲党副委員長と会談した際、朝鮮戦争の終結についても協議し、「戦争が終結すれば、われわれは北朝鮮の安全についても保証することになり、再び戦争が始まることはない」とし、終戦宣言に意欲を示しています。そうなります。今日はこの報道一色になるでしょう。よほどのことがない限り、予定通りに事が進みます。
さて、以下は繰り返しです。トムソン・ロイターの調査によると、S&P500採用企業の18年第1四半期決算は、前年同期比26.6%の増益となる見通しです。これまでに500社中498社が第1四半期決算を発表し、このうち利益がアナリスト予想を上回った企業の割合は77.9%で、長期平均の64%、過去4四半期平均の75%を上回りました。第1四半期の売上高は8.3%増の見通しです。18年第2四半期の1株利益について、悪化もしくは市場見通しを下回ると予測している企業は68社、改善もしくは市場見通しを上回ると予測
した企業は50社です。S&P500企業の今後4四半期(18年第2―19年第1四半期)の予想PERは16.9倍となっています。割安感はないかもしれませんが、ひところの割高感はありません。
S&P500構成企業は今年3月までの1年間で、過去最高となる1兆ドルの株主還元を実施しました。企業減税を受けて、配当や自社株買いを拡大させています。S&P500社は3月までの1年間に、4280億ドルの配当支払いおよび5730億ドルの自社株買いを行ったといいます。17年3月までの1年間は、配当および自社株買いの規模は合わせて9390億ドルでした。減税の恩恵を受けた米企業は、過去例をみない規模の自社株買いや増配を通じて株主への還元を強化しています。ちなみに、アップルは第1四半期に235億ドルという過
去最高の自社株買いを実施しています。S&P500社は、成長や効率化に向けた投資も拡大しており、第1四半期の設備投資は少なくとも1590億ドルと、前年同期比で21%超の増加となっています。このように、米企業は株価と将来への対策をしっかりと行っています。これらの状況もあり、これまで通り、米国株は高値圏を維持しながら、現段階では2020年までのもう一段の上昇を見込んでおきたいと思います。
現段階で経済指標や金利動向、日柄やサイクル面からみて、大きな変化はありません。引き続き、2020年に向けて株価はさらに上昇するとみておくべきでしょう。収益の拡大基調が続いており、株価はさらに上昇するでしょう。米長期金利も徐々に上げていくでしょう。3%に乗せてしまえば、あとは景気拡大と株高できわめて強いパターンに入っていくでしょう。株価上昇の最終局面では、金利と株価が同時に上げていくのが普通です。その結果、短期金利の上昇を背景にイールドスプレッドも縮小に向かうでしょう。いまは2年債の利回りをよく見ておきたいところです。
米長期金利は最終的には3.5%から4%の間でピークアウトするでしょう。いまの上昇ペースで行くと、4%に近い水準でピークアウトしそうです。もっとも、米国の経済成長率は2.5%程度が見込まれていることを考えると、いまの状況で4%超にまで長期金利が上昇するのも難しいかもしれません。いずれにしても、長期金利の3%台はそれでも歴史的に見れば超低金利です。金利は過去35年間続いた長期的な低下局面が終了し、いまは上昇局面にあります。今後、金利は上昇していくので、これを前提に考えていく必要があります。また、イン
フレ率が上昇すれば、実質金利は低下していきます。そうなれば、現金を保有するよりも投資をしたほうが良いわけで、その意味では株式やコモディティが上昇するのは当然です。
懸念材料があるとすれば、住宅着工件数が2カ月ぶりにマイナスになったことです。この指標は株価の先行指標で、過去の大相場のピークアウトのかなり前にピークアウトする傾向があります。このまま伸び悩み傾向が続けば、金利上昇が住宅市場に影響し始めたことを確認することになります。いまの段階では判断は早いといえますが、注意は必要でしょう。
【米国債トレード戦略】
2年債ショート、10年債ロングのイールドカーブのフラット化に賭ける戦略を継続します。
ポートフォリオ運用における米国長期債への投資は徐々に行うようにしましょう。
現在の推奨比率は、「米国株45%(S&P500は20%、ナスダック100は25%)、米国長期債40%、金15%」です。
【日本株の市況解説・分析】
日経平均は前日比109円高と、反発した。円安進行を受けて、買い安心感が広がった。輸出関連株の一角や値がさ株が買われ、堅調な値動きとなった。銘柄の57%が値上がりし、値下がりは38%。日経平均は安寄り後に切り返した。前週末の海外市場で109円台前半まで進んだ円高は、東京市場では110円を目指す動きとなった。この流れに歩調を合わせるように日経平均も上げ幅を徐々に広げた。通商問題で足並みの乱れが改めて浮き彫りになったG7首脳会議(サミット)は、市場にとっては想定の範囲内であり、余り材料視されていない。
市場の関心は12日の米朝首脳会談や今週の日米欧の金融政策決定会合に移っている。日経平均は上げ幅を前週末比150円超に広げる場面もあったが、東証1部の売買代金は2兆円に届かず、この日の上昇は先物主導だった可能性がきわめて高く、現物株中心の投資家の多くは様子見だったといえる。売買が積極的に行われるのは、イベントの結果を見極めてからになりそうである。
【日経平均先物のトレード戦略】
ロング戦略を継続します。シカゴ市場では22900円を超えました。ドル円も110円前後で推移しており、好材料です。今日の米朝首脳会談の内容は随時報じられるでしょう。それに合わせて為替と株価は変動することになります。過去の英国のEU離脱に関する国民投票や米大統領選のような感じになりそうです。とはいえ、それに合わせて対応するのは賢明ではありません。方向性は決まっていますので、会談の内容を精査しつつも、長期的な視点を失わないことが肝要です。
今週は重要イベントが目白押しであり、これらをこなすまでは日本株は動きづらくなるでしょう。しかし、その後は上昇が想定されます。テクニカル指標をみると、短期的な依然として過熱感は残っています。騰落レシオは25日平均が96%ですが、6日平均は145%と高水準です。空売り比率は39.8%に小幅低下しましたが、空売り筋による買い戻し圧力はまだ残っています。全体の流れは悪くないといえます。あとは、節目の23000円をクリアするだけです。これを超えて引けることができれば、上昇圧力は相当強くなるでしょう。6月の強気シナリオのレンジ下限は23570円です。これを超えると、強気相場への転換と判断できます。
私が開発したトレード指標でも買いのシグナルを発しています。この指標は近いうちにご紹介できる予定です。このシグナルが出たことで、買い安心感があると感じています。もちろん、これまでのロングは維持です。これまでの短期トレードでは、先物ミニベースで23015円、22715円、22330円、21985円でロングを保有していましたが、21985円のロングは22485円で、22330円のロングも22830円で利益確定となりました。2回の利益確定で1000円の値幅を取ったことになります。残っているポジションは23215円、23515円となり、その後に22600円での押し目買いが成立しました。あとは22350円での押し目買いを待ちたいと思います。22600円に対する手仕舞い売りは23100円とします。今後も500円幅での利益を狙っていきたいと思います。
上記の買いシグナルが出ていますので、利益を伸ばしたい場合には、手仕舞いせずにロングを維持してもよいと思います。その場合の手仕舞いのタイミングはお知らせします。今後もさらに押し目があれば買いを検討しますが、このまま上げていく可能性が高いと考えています。一応、前回同様に買い下がりがかなり深い水準にまで達する可能性を念頭に入れながら、一度に買わずに、10回買っても大丈夫なくらいに少額での買いを行うようにしましょう。上値の最終的なターゲットは23750円から24000円あたりです。無論、長期保有の「コアポジション」はそのまま維持です。これはおそらく、2020年以降も持ち続けるでしょう。このコアポジションは、先物ではなく、CFDやETFなどで保有しておくと、先物のように限月交代で決済する必要がありません。レバレッジを抑えて(できれば1倍から3倍程度)でトレードすることで、長期的な保有が可能になります。
さて、安倍首相は米国での7日の会談に続いて、11日もトランプ大統領と電話会談しました。そこで米朝会談で拉致問題を提起するとの言質を取り付けたようです。しかし、北朝鮮側の出方が読めないため、解決へのシナリオは描けていないとされています。安倍首相は「拉致問題を安倍政権の間に解決しなければならない。もちろん最終的には日本と北朝鮮が直接向かい合って話し合わなければいけないが、米朝首脳会談が歴史的会談になることを期待している」としています。また、米朝会談が行われるシンガポールには、谷内国家安全保障局長と金杉外務省アジア大洋州局長が向かい、関係国と調整に当たったようです。日本もひとを送っています。しかし、日朝間では「拉致問題は解決済み」が基本合意です。つまり、上記の態度はあくまで国民向けの表面的な演出でしかありません。
拉致問題は02年に被害者5人が帰国して以降、表面上は目立った進展がありません。残る日本政府認定の拉致被害者12人のうち、北朝鮮は8人が死亡、4人は入国していないと主張しています。拉致された可能性がある「特定失踪者」800人超を含む「全ての拉致被害者」の即時帰国を求める日本政府との隔たりは大きいというのが表面上の報道です。しかし、北朝鮮は14年に拉致被害者の再調査を約束したものの、16年に一方的に中止を宣言し、それ以来、何も進んでいないかのようです。しかし、水面下では交流が行われています。実態は一部の拉致被害者は何度も帰国しています。ただし、演出のために、何かしらの合意をしたことにするかもしれません。北朝鮮による拉致被害者横田めぐみさんの母である早紀江さんらは、11日に東京都内で記者会見し、早紀江さんは「大切な子供を帰してください。ただそれだけ」としています。この発言が実態と大きく矛盾しています。これ以上はここではご容赦ください。いずれ、明確にお話しできるときが来るでしょう。
〔CURRENCY MARKET〕
ドル円は米朝首脳会談などの重要イベントを控えて様子見姿勢が強まる中、110円前後での小動きに推移した。この日は主要な経済指標の発表がなく、新規の手掛かり材料に乏しい中、小幅な値動きに終始した。史上初の米朝首脳会談を控えて、様子見ムードも強かった。ポンペオ国務長官は11日の記者会見で、「北朝鮮を完全に非核化する目標は不変」と強調。朝鮮戦争(1950-53年)終結を念頭に「これまでとは異なる体制保証を提供する用意がある」としながらも、「われわれが望む結果まで制裁解除はない」と警告した。市場は北朝鮮側の出方が読めないだけに、積極的な売り買いを手控えざるを得なかったといえる。
一方、トランプ大統領はG7首脳会議(サミット)閉幕後、首脳宣言を承認しないよう米代表団に指示した。保護貿易主義的な姿勢を崩さない米国と日欧加6カ国の溝が改めて浮き彫りとなった格好だが、通商政策をめぐる対立は想定の範囲内だったこともあり、市場への影響はほとんどなかった。市場は12・13日に開催されるFOMCの結果にも注目している。今回の会合での0.25%ポイントの利上げはほぼ織り込み済みだが、FOMC声明や金利見通しなどから年内の利上げペースに関する手掛かりを得たいもようである。市場では、今回も含め、年内にあと2回利上げがあることを織り込んでいる。今週は14日にECB理事会、14・15日に日銀金融政策決定会合も予定されている。これらの内容も見極めたうえで、市場は本格的に動き出すことになる。一方、イタリアのトリア新経済財務相は、「新政権にユーロから離脱する意思はなく、債務削減に努める」と強調したことで、ユーロドルは一時1.1820ドルと、2週間ぶりの高値に迫る場面もあった。ただし、その後は14日のECB理事会が意識され、1.1785ドル近辺に戻している。ECB当局者からは前週にタカ派的な発言が相次いでいる。これにより、市場ではECBが今週の理事会で債券買い入れ策の段階的な終了について何らかのシグナルを発するとの見方が強まっている。
【通貨トレード戦略】
ドル円はショートを買い戻し、新規でロングとします。いったん下に行く可能性を見ていましたが、米朝首脳会談への期待でドルが買われています。相場の方向性は会談の結果次第のところもありますが、上向きになりつつありますので、まずは素直に流れについていきたいと思います。結果的に109.35円のサポートを維持しましたので、このような判断をすることで、取引パターンの再現性を担保したいと考えます。もっとも、FOMCでの利上げ後はドル安になる可能性があります。つまり、「噂で買って、真実で売る」の動きとなる可能性です。この動きには注意が必要です。欧州の政治情勢が緩和すれば、ユーロ屋ポンドの買いも入ってくる可能性があり、その場合にドル円がどちらに動くかも見ておく必要があります。もっとも、いまの状況であれば、リスクオフは円売りですので、ドル円だけでなく、クロス円にも売りが入りそうです。いずれにしても、今週の為替市場は短期間で変動しやすくなりますので、ボラティリティの上昇には注意したいところです。
繰り返すように、上のターゲットは110.55円です。ここは長期のチャートポイントであるだけでなく、ドル円の理論値でもあります。これを超えると、113円台後半まで上昇する可能性があります。トレンドとしては強気、ただし、フェアバリューに対しては割高との判断になります。いずれにしても、110.55円を超えると、6月の弱気シナリオのレンジ上限である113.48円を目指すことになるでしょう。そして、昨年12月の高値である113.75円前後までの上昇になるでしょう。実際には、114円を超えて強気シナリオに転
じて、初めて「円安トレンド」が形成されるということになります。
いまは北朝鮮情勢を背景に、米国側から円安けん制発言が出づらい状況です。しかし、ここにきて米国は日本との通商問題を取り上げ始めました。G7サミットは紛糾しましたが、通商問題をだけを材料視する必要はないでしょう。米国の基本戦略はドル安です。これを間違えないようにしましょう。115円以上の円安を米国は許してくれないでしょう。米財政赤字の拡大もドル安要因です。くどいようですが、米ドルを操れるのは米国だけです。米国の戦略を正しく理解し、それを投資判断に反映させることが肝要です。これに実質金利差からみた理論値を念頭に入れて相場を見ていくことが肝要です。ドル全体の動きを見れば、短期的なドル高基調は維持されています。ただし、リスク回避で米長期金利が低下している点には注意が必要です。ドルの上値を抑える要因になります。一方で、「為替は、表面上は金利で動き、大局的には政治で動く」というセオリーがあります。これだけは忘れないようにしましょう。
ユーロ円は新規でロングとします。トレンドが再び上向きです。買われすぎ感はまだ解消されていませんが、まずは130.50円を試すのを待ちましょう。129.50円を下回れば、手仕舞いと短期のショートを検討します。フェアバリューは128.80円に低下しましたので、やや割高感があります。長期サポートは128円前後であり、これを超えるとさらに買いやすいといえます。
ユーロドルはロングを維持します。買われすぎの調整が入りやすい状況ですが。1.1775ドルを明確に割り込むまではロングを維持します。フェアバリューは1.1650ドルに低下しましたので、いまはやや割高になっています。ただし、1.1690ドルには長期的なトレンドラインがあり、これを超えていると強気ということになります。
ポンド円は見送りとします。再び上昇しそうですが、147.30円を超えたことを確認してからにします。まだ買われすぎの解消が済んでいません。長期トレンドのポイントは151.90円であり、これを超えないと本格的な上昇にはなりません。フェアバリューは165.40円程度であり、いまの水準はかなり割安です。
ポンドドルはロングを維持します。調整モードに入りそうですが、1.3370ドルを割り込むまでは維持します。長期トレンドのポイントは1.3860ドルです。フェアバリューは1.4960ドル程度です。かなり低下しましたが、それでもいまの水準はかなり割安です。ただし、いまはトレンドを重視したほうが賢明でしょう。
豪ドル円はショートを維持します。反発の兆しがあります。83.75円を超えた場合には、手仕舞いを検討します。84.20円を超えると上昇に勢いがつきそうです。ただし、83.20円を割り込むと下げに転じるでしょう。長期トレンドは85.55円前後であり、そこまでは戻り売り有利です。フェアバリューは83.40円程度です。
豪ドル/米ドルはショートを維持します。買われすぎの調整中です。0.7575ドルを割り込めば、さらに下値を試すでしょう。長期トレンドの0.78ドルを超えるまでは基本は売り姿勢です。フェアバリューは0.7545ドルです。いまの水準はほぼフェアバリューです。
南アランド/円は見送りとします。底打ちを確認したうえで、次の対応を検討します。新興国通貨の下げが加速する可能性も残っています。ドル金利の動向に注意が必要です。いまは値動きが落ち着くのを待ちたいと思います。基準は8.6円です。これを回復できればロングです。
(・・・以下略)
*セミナー予定
6月16日(土)豊商事さまセミナー(大阪)
http://www.yutaka24.jp/?url=/seminars
6月30日(土)日本セキュリティーズさまセミナー(福岡)
http://www.nihon-fs.co.jp/seminar/seminars/20180630_fukuoka
7月6日(金)マネックス証券さま・米雇用統計セミナー(WEB)
https://info.monex.co.jp/news/2018/20180402_02.html
7月7日(土)豊商事さまセミナー(広島)
7月8日(日)サラインベストメントさまセミナー(東京)
7月14日(土)豊商事さまセミナー(横浜)
7月14日(土)第14回国際ビジネス学会チャリティーフォーラム(東京)
(特別非営利活動法人国際コンサルティング協会さま主催)
7月19日(木)ひまわり証券さまセミナー(WEB)
7月21日(土)第一商品さまセミナー(大阪)
7月28日(土)豊商事さまセミナー(金沢)
8月3日(金)マネックス証券さま・米雇用統計セミナー(WEB)
https://info.monex.co.jp/news/2018/20180402_02.html
8月4日(木)豊商事さまセミナー(札幌)
8月25日(土)岡地さまセミナー(大阪)
(上記以外にも、個別セミナーも実施しております。ご興味がある方はお問い合わせください。)
*テレビ出演予定
6月14日(木)13:30~13:45ストックボイスTV「東京マーケットワイド」(東京MXTV・WEB)
http://www.stockvoice.jp/
6月28日(木)13:15~13:30ストックボイスTV「東京マーケットワイド」(東京MXTV・WEB)
http://www.stockvoice.jp/
*ラジオ出演予定
6月20日(水)ラジオNIKKEI「トレードパーティ♪」(FXトレード・フィナンシャルさま提供)
http://market.radionikkei.jp/tradeparty/
6月22日(金)16:00~16:20 ラジオNIKKEI「GO!GO! ジャングル・マーケット」(ゴゴジャンさま提供)
http://www.market.radionikkei.jp/gogo/
7月27日(金)16:00~16:20 ラジオNIKKEI「GO!GO! ジャングル・マーケット」(ゴゴジャンさま提供)
http://www.market.radionikkei.jp/gogo/
8月24日(金)16:00~16:20 ラジオNIKKEI「GO!GO! ジャングル・マーケット」(ゴゴジャンさま提供)
http://www.market.radionikkei.jp/gogo/
*定期寄稿スケジュール
「東洋経済オンライン」(不定期)
http://toyokeizai.net/
「マネックスメール」(第1・第3・第5水曜日)(2018年6月より左記のようになります)
http://lounge.monex.co.jp/pro/special1/
「マネックス証券 マネックスゴールドレポート」(毎週月曜日)
江守哲のリアルトレーディング・ストラテジーの販売ページはこちら
https://fx-on.com/adviser/detail/?id=8592
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