一目均衡表入門|第1回 一目均衡表の原点[監修:細田哲生(三世一目山人)]
本当の一目均衡表を知るための企画
今回からスタートするこの連載企画では、三世一目山人こと、細田哲生氏監修の下、一目均衡表の「正しい使い方」について、整理を試みます。
【一目均衡表入門[監修:細田哲生(三世一目山人)]連載記事(全14回)】
・第1回 一目均衡表の原点(無料)
・第2回 三波動と時間関係①
・第3回 三波動と時間関係②
・第4回 三波動と時間関係、値段関係から分かること
・第5回 転換線と基準線①
・第6回 転換線と基準線②
・第7回 転換線と基準線③
・第8回 先行スパンと遅行スパン①
・第9回 先行スパンと遅行スパン②
・第10回 準備構成の「型」と9週足
・第11回 9週足と9か月足
・第12回 週間実線のB、Yと仲値線
・第13回 B、Yの活用方法
・第14回 『一目均衡表』原著の内容
皆さんは、一目均衡表を、どのように使っているでしょうか? 先行スパン(雲)を抵抗として使っている、三役好転・逆転をシグナルに利用しているなど、さまざまありそうです。しかし、それらの一般的な使い方は、一目均衡表の一つの性質を切り取っているにすぎず、本質的意味からすると、ちょっとずれているともいえます。
では、本家と一般で、どれくらい一目均衡表の使い方が異なるのか? それは三世一目山人によるチャート分析を見ることで明らかになるでしょう。最初は「何だコレ?」と面食らうかも知れません。しかし、その意味を一つずつ皆さんと理解し、最終的には本家本元の使い方まで近づこうというのが、この連載の意図です。
三世一目山人は、分かったことを地道に積み上げながら勉強を進めていけば良いといいます。その言葉の裏側には、「楽して身に付くことはない」という真意が込められているかもしれません。
なお、企画のスタートにあたり、一目均衡表の考案者、細田悟一氏の遺した資料を提供いただきました(次章「独占入手!これが一目均衡表の原点」参照)。現在、私たちが気軽に利用している一目均衡表は、写真にある通り、膨大な研究の末に考案されたものなのです。
一目均衡表の著作権は株式会社経済変動総研が有し、原著の出版販売をしています。原著のご購入については一目均衡表公式ホームページをご覧ください。
サービス|一目均衡表公式ホームページ|株式会社 経済変動総研
独占入手!これが一目均衡表の原点
一目山人の研究ノート。「基(準)」「抵(抗)」「17」「33」といった欄があり、基本数値の期間について、半値関係を調査していることがうかがえます。この一目均衡「表」が、一目均衡「図表」となっていくのです。
現代の私たちが知るところの転換線や基準線らしきものが見当たります。とはいえ、三世一目山人にも「よく分からない」線が、いくつもあるとのこと。何パターンもの線を、研究していたことがうかがえます。
相場の値動きを、方眼紙に書き込み、それをのりでつなぎ合わせて、全体像を把握していた資料です。その大きさが分かるように、写真右に30cmの物差しを置いて撮影しました。現物からは、1日を1mmとして記入していたと解釈できます。1か月を約25営業日=約2.5cmとするならば、1年の長さは約30cmとなります。グラフは全長で5年分以上のデータだということです。
三世一目山人が三波動を掴むために確認している対等数値(「米ドル/円」週足)
チャート上に書き込まれているのは、三世一目山人が日々、調べている「対等数値」(時間の関係)。赤・青文字は、主立った高値・安値の、日付と価格を示します。黒文字は、それらを基点に、ローソク足を数え、記したものです。色付けした範囲を三波動のうちの第二波動とみなして、対等数値を調べています。
三世一目山人が三波動を掴むために確認している計算値(「米ドル/円」週足)
計算値は目標値であると同時に、達成の有無は、相場の体(てい)を推し量る重要なヒントになります。例えば、上記画像左側の計算値として110円代の水準が目立っているということは、相場が110円に向かう可能性を強く示唆します。また、110円の水準が重要な抵抗になるという可能性も含んでいると読み取ることができます。
一般には知られていない発想 三波動の確認
一目均衡表が、本来の意図する形で使用されていないことを知ってもらうために、敢えて、具体的な解説をせず、三世一目山人による「米ドル/円」週足の分析チャートを掲載しました。
一般的に、一目均衡表の基本といえば、転換線や基準線、先行スパン、遅行スパン、そして実線の交わりに注目するという発想が根強いでしょう。しかし、本来はそうしたグラフ上の変化に注目するのではなく、その状況に至るまでの相場変遷を、最も重要視します。その相場変遷を確認しているのが、前に掲載したチャートというわけです。
三世一目山人によると、三波動を掴むために、対等数値や計算値をチャートに記し、日々確認する——これが、一目均衡表を正しく使うための、下準備となるそうです。
今回、いきなり三世一目山人が記した難解なチャートを示したのは、終着点を明らかにすることで、皆さんの探究心に火を灯そうとしたからです。
すでに、一般的に知られていない、三波動、対等数値、計算値といった単語がいくつか出ており、気になっていた人も多いでしょう。そこで、ここではそうした言葉の概要をまとめます。次回以降の連載で、これらを深掘りしてお伝えします。
三波動、対等数値、計算値などについて
相場変遷は、三波動を描くものと考える
N波動は方向を確定するための基本波動=上げ相場、下げ相場の単純な波形。
P、Y、S波動は方向を確定できない中間波動=もみ合いとして認識されるべき変動。
「時間関係と値段関係をともなう三波動構成」を追いかける
対等数値、基本数値による時間の経過、あるいは計算値の達成により、三波動目がいったん終了する可能性を、常に追いかけていきます 。
対等数値による時間関係の例
図内の数字は、ローソク足の数、すなわち一つの波動に要した時間を示します。
この例のように、三波動が作られるものとして考えます。
基本数値とは
「9」「26」を絶対数とし、その組み合わせから得られる数値。
9、17、26、33、42、51、65、76、83、97、101、129、100+基本数値
計算値の算出方法
N計算値:押し目Cから、ABの幅を上げる
E計算値:ABの幅を、Bから上げる
V計算値:押した幅を、倍返しする
一目均衡表 豆知識
『一目均衡表』原著
一目均衡表の作図や使い方は、1969年(昭和44年)に発行された『一目均衡表』一目山人(経済変動研究所)にて、世の中に公開されました。「一目均衡表七部作」と呼ばれる原著は、個人出版されたものでした。
一目均衡表とは?
一目山人こと細田悟一氏が、昭和10年代に都(みやこ)新聞紙上にて公開した「新東転換線」を原点とした相場手法。新聞記者の細田氏が、相場の真髄を掴んで紙面を飾りたいとの思いから、私設研究所を造り、開発したものです。
帰趨は一目瞭然
考案した「均衡表」と「スパン」を用いれば、相場の帰趨(きすう)は一目瞭然であるという意味から、一目均衡表と名づけ、また都新聞紙上で一目山人というペンネームを名乗りました。
一目均衡表の各線①
「転換線」は、過去9日間の半値を転換値として日々記入し、それをつなげた線。「基準線」は、過去26日間の半値を基準値として日々記入し、それをつなげた線。一目山人はこの二つを均衡表と指しました。
一目均衡表の各線②
「先行スパン(上限)」は、転換値と基準値の半値を26日先行させてつなげた線。「先行スパン(下限)」は、過去52日間の半値を26日先行させてつなげた線。「遅行スパン」は終値を26日過去にずらしてつなげた線。
研究の対象
原著の前書きには「相場は動かないか動くか。動けば上げか、下げか」と記されています。動かない相場、動く相場がいかなる変動か、また動かない相場が動き出す瞬間、その逆の瞬間が、研究対象とされました。
各線の位置関係
上げ相場では、相場実線>転換線>基準線>先行スパン上限>先行スパン下限の順に並びます(下げ相場ではその逆)。その位置関係から、相場を直観的に判断できるのです。
※この記事は、FX攻略.com2016年5月号の記事を再編集したものです(文=蛯沢路彦・編集部)
細田哲生(ほそだ・てっせい)プロフィール
株式会社経済変動総研。三世一目山人。一目山人の遺志を引き継ぎ、正しい一目均衡表の使い方を普及することに従事。経済変動総研主催の「一目均衡表倶楽部」にて、一目均衡表による相場解説、罫線講座を執筆。毎週月曜日ラジオNIKKEIマーケットプレスにて「日経平均一目均衡表から見たテクニカル分析」を放送。
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