米国株は弱気相場が終了か 江守哲氏
【米国株のトレード戦略】配信日:2020/03/27 08:01
米国株は大幅高でした。ようやく底打ちの機運がみえてきました。底値から10%上昇したことで、すでに弱気相場は終了したとの指摘もあります。しかし、まだまだ予断を許さないでしょう。新型コロナウイルスの感染拡大が止まるまでは、不安定な相場展開が続くと考えておくべきでしょう。過去のように、高値から30%超下げた場合には、底値を確認するのに平均で1.7年かかっています。世界恐慌を除いても1年半です。ただし、ブラックマンデーのように、3カ月で底打ちした例もあります。様々なケースを念頭に置きつつ、市場動向を見ていきたいところです。
ブラックロックとクレディ・スイスは26日、新型コロナウイルス対策として各国政府や中央銀行が打ち出した景気刺激策により今週になって株式市場が回復していることを受け、株式投資に戻るタイミングだという考えを示しています。MSCI世界株式指数は今週に入って8%上昇しており、この水準で推移すれば、11年12月以来の上昇率となります。過去2日で5兆ドル以上を回復しています。新型コロナの感染が欧州や米国で拡大する中、転換点をとらえるのは容易ではありませんが、ブラックロックとクレディ・スイスはリスク資産にやや強気に転じていると表明しています。
ブラックロック・インベストメント・インスティテュートは「前例のない対応はわれわれが求めている断固たる政策対応を示すもので、やがて訪れる景気回復の準備となる」と指摘。そのうえで、「株式急落は長期投資家にとって大きなバリューを生み出した」とし、「リスク資産へのリバランス」を顧客に推奨しました。また、米政府の政策対応の規模を理由に米国市場を選好するとしました。また、クレディ・スイスは新興市場株式に前向きで、「市場の底打ちが明らかになるまで待つより早めに動き出すのが得策」としています。
このように、今回の急落場面を投資の好機とする見方も出始めています。今回の株安は、新型コロナウイルスの感染拡大が背景であることは明白です。確かに株価は急落しましたが、下げすぎの背景にはレバレッジをかけた過剰な投資がありました。また、収益が上がっていない中で、自社株買いでやや無理に株価を高値で維持しようとしていた企業が少なくなかったことも、株価急落の背景にあるといえます。今後は新型コロナウイルスの影響で減益が確実ですが、企業の収益力が回復すれば、バリュエーション面での割安感に着目する動きがみられるでしょう。
いずれにしても、株式投資は売り込まれて安いときに仕込むのが、もっとも適したタイミングになります。いまが底値かどうかは後にならないとわかりません。また、二番底の可能性もあるでしょう。それでも、買い下がることで安値を買えるメリットがあります。長期投資は現物投資を基本とし、レバレッジをかけずに、粛々と淡々と買い下がることが肝要です。そして、それをやめないことが肝要です。私も毎日のように淡々と買い続けています。
とはいえ、今回のような急落場面では、ショートができるように短期トレード戦略も組み合わせておくとよいでしょう。現在の米国株価指数の短期トレード戦略では、ダウ平均、S&P500、ナスダック指数はすでにロング戦略です。この日の上昇で大きな利益になっています。しかし、下げた場合には、即座にショートにします。これらは完全にテクニカル指標だけで分析した戦略です。ファンダメンタルズ面と切り離すことで、機械的に判断ができます。
短期トレード戦略が下げを示唆した場合には、ショートを保有し、長期投資の現物株のヘッジをすることができます。これらの戦略を組み合わせることで、短期的な急騰・急落も収益化していきます。下落が終われば、ショートで稼いだ資金を現物株に安値で投入することができます。この方法を身に着けると、着々と資金が増えていきます。いまは新型コロナウイルスの影響で、目先の株価動向を「読む」のはほとんど不可能な状況です。今回の急落相場も、下げてみて初めて一大事だったことがわかります。このようなときには、やはり「値動き」そのものを注視し、短期トレード戦略にてショートを加えることが重要です。
長期的なポートフォリオ戦略では、これまでの下げ基調の中で買い下がってきました。今後も大きく下げた日に買い下がっていきます。まだ2割から3割下げる可能性はありますが、継続的に買いを行いたいと考えています。長期投資ですので、やめるつもりはありません。最大であと2割は下げるとの大前提で、資金を残しながら買い下がっていきます。現物での投資であれば、下げにも耐えられます。現金ができたときに、順次買い下がればよいでしょう。あくまで資金的な余力があれば買い下がりがよいということです。最終的には株価は戻します。長期投資は、株価が下げてあきらめて売ったときが底値になります。不思議なものですが、実際にそのようなケースが多いように思います。いまこそ、数年単位の視野が必要といえそうです。
基本的にS&P500のポジションだけで十分かと思います。様々な資産に幅広く投資するのが安定運用につながります。VIXはヘッジの意味合いもありますので、トレードのアイテムに入れとより幅広い運用ができるでしょう。S&P500とVIXの組み合わせは非常に重要です。
<米国株式市場の短期トレード戦略>
ダウ平均:ロング(短期買われすぎ)
S&P500:ロング(短期買われすぎ)
ナスダック指数:ロング(短期買われすぎ)
ラッセル2000:ロング(短期買われすぎ)
VIX:ショート(短期売られすぎ)
*(買われすぎ)は利益確定(ロングの場合)または売り乗せ(ショートの場合)、(売られすぎ)は買戻し(ショートの場合)または買い増し(ロングの場合)、(過熱圏)は短期の買われすぎの指標として見てください。移動平均線からの乖離率を基準にしています。
Written by Hayakawa
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