限られる下値が上値の重さをもたらす 荒野浩の『テクニカル・ルームから
配信日:2016/09/11 11:26
「下値は堅い」ことの副作用
日銀のETF増額決定以降、「下値は限られる」
、「下値は堅い」というのが市場の常識となりつ
つあります。ただその対極に「上値も重い」とい
う事実があることを忘れてはいけないと思います。
市場には価格が下がるから買う、買うから上がる
という性質が自然に備わっています。
足元の株式市場で、株価は下がりにくくなって
きています。このことで市場の自然な「価格発見
機能」、「価格形成機能」が失われてしまってい
るとすれば、中長期的な株価循環に影響を与える
ことになってしまいます。
相場格言として「谷深ければ、山高し」は有名
ですが、逆もまた真なりで「谷浅ければ、山低し」
ともいわれます。下値の堅さ=谷の浅さ、ですが、
ここでは1か月(20日)平均に対する(日々の)
終値の±乖離率を検証することによって、今年に
入ってからの株価循環の幅・日数を検証してみた
いと思います。
(1か月平均に対する乖離率の高低、%)
最小乖離 最大乖離 変動幅 日数
1/21 ▲10.64 2/01 +3.09 13.73 7日
2/12 ▲11.13 3/04 +5.06 16.19 15
4/05 ▲ 6.36 4/22 +6.50 12.86 13
5/06 ▲ 2.63 5/31 +3.73 6.36 17
6/24 ▲ 8.28 7/21 +6.06 14.34 18
8/03 ▲ 1.13 8/12 +2.19 3.32 6
8/26 ▲ 1.18 9/06 +2.11 3.29 7
(注)最小乖離日=株価の安値日
例外は4月、安値は4/6で1日のずれ
最大乖離日=株価の高値日
例外は3月、高値日は3/14で6日のずれ
変動の少ない相場は続く
6月までは、例外はあるにしても、最大・最
小乖離間の変動幅は10数%で、安値から高値
までの日数もおおむね3~4週間になっていま
した。ところが8月以降は変動幅がわずかに
3.3%、株価循環の日数も1週間強に短くなっ
てしまいました。足元の1か月平均(16,756円)
に対する3.3%の値動きはわずかに552円で
す。これほどまでの小動きが定着するとは考え
てはいませんが、今年前半と比較して、値動き
が結果として限定的な範囲にとどまってしまう
ことは事実だろうと思われます。
動きの乏しい相場は投資機会を奪います。積
極的に投資機会を狙い行動する投資家、特に海
外勢の参加意欲を奪いかねません。日本株の騰
落に影響力が大きい海外勢の動向は今まで以上
に日々チェックすることが要求されます。海外
投資家は空売り比率とドル・円相場との関連性
が強いだけに要チェック項目となります。いず
れにしてもトレンドを見つけにくい、狭いレン
ジの値動きが続くことを前提に戦略を練ること
が今まで以上に必要になります。
よろしいですか?