米 8月雇用統計 まだまだ目的地は遠い
8月の雇用統計では、賃金上昇率がやや低下した。労働参加率が上昇し、労働力人口が増えた。FRBにとっては望ましい方向だ。しかし、僅かである。最終的な目標(2%以下の物価上昇)には程遠いし、視界に入ったわけでもない。
FRBの目標はインフレ抑制。wage-pushu inflationから脱するために、賃金上昇率を抑制⇐労働需給を緩和すること=求人の抑制&労働人口の拡大⇐景気抑制&労働参加率の拡大 を必要としている。
労働関係の言葉は一般には馴染みがないので、定義を示しておく。
(1)非農業部門雇用者数
8月の非農業部門雇用者数は前月比31.5万人増。7月は52.6万人増(52.8.万人増から下方修正)。6月は29.3万人増(39.8万人増から10.5万人の下方修正)。6~8月の3ヵ月平均は37.8万人増。十二分に高い。FRBは20万人程度にしたいだろう。
雇用者数(就業者数)の統計には2種類ある。事業所調査(企業の給与台帳ベース、時給、労働時間など)と家計調査(家計への聞き取り調査ベース、失業率や労働参加率など)である。8月の家計調査の就労者数は44.2万人増だった。
(2)賃金
平均時給は前月比0.3%上昇、前年同月比は5.2%上昇。生産労働者・非管理職の前年同月比は6.1%上昇。賃金インフレにピークアウト感があるが、FRBは前年同期比で3%程度に抑えたいだろうから、道のりはまだ長い。
(3)失業率
失業率は3.7%と、前月の3.5%を上回った。失業者が34.4万人増となった。これまで働く気がなかった人が働く気を起こし、労働人口が増えたことが要因。いい傾向だが、これが続くかどうか?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが宣言された2020年3月に、非労働力人口が大きく拡大した。労働市場から退出した。それを元に戻したいだろう。
以上の通りで、これを受けて、市場は多少荒れた。しかし、それは多分に週末のポジション調整(手仕舞い)が絡んでいるだろう。
今回の雇用統計がどうであれ、FRBの最終目標が視野に入ってきたわけはなく、利上げのペースに影響をわずかに与えるかもしれないが、FRBの金融政策の方向が変わることはない。短期的なトレードには影響があるかもしれないが、中長期運用においては、何も変わらない。それに、次のCPIの発表の時には、今回のデータのことなど全く忘れられているだろう。
よろしいですか?