EA運用におけるトレーリングストップの有効性を検証してみた
FX
この記事は、トレーダーに人気のあるトレーリングストップについての調査レポートです。
トレーリングストップとは、市場の動きに応じてストップロスレベル(逆指値)をトレールする注文方法のことです。
相場がプラスの方向に動くとストップロスレベルも切り上がることから、ある一定の水準までストップ注文が切り上がると勝ちが確定します。
裁量トレードにおいて、トレーリングストップは非常に人気のある決済手法で、わたしも裁量トレード時代に使用していました。
しかしながら、常に相場を監視することが出来ない裁量トレードならいざ知らず、EA自動売買ではトレーリングストップは効果はあるのでしょうか?
ゴゴジャンのコミュニティを見てみると、トレーリングストップをEAに組み込むと成績が悪化するとのEA開発者さんのコメントが多いようです。
わたしも同意見なのですが、根拠が必要です。
イメージとしてはこんな感じです。画像はユーロ円の日足チャートです。
上昇トレンドが発生しているので順張りロングすれば、どこかで利食いできそうです。
うまく上昇トレンドの波にのれば、トレーリングストップの利点を生かしてうまく立ち回れるように思われます。
次の画像は、上のチャートに移動平均線を2本引いたものになります。
短期移動平均の期間10(赤)と長期移動平均の期間75(青)です。
デッドクロスしたタイミングは白い丸の箇所です。
もし、トレーリングストップで逆指値を設定していたとすると、おそらく黄色い丸のヒゲの部分で狩られているかもしれません。
もし、逆指値にヒットして利確あるいは損切りしたとすると、その後に急激に値を戻しているので、結果として押し目で切ってしまうので損したことになります。
わたしは、テクニカルアナリストでもチャーティストでもないため、正確なことは分かりませんが、EAによるバックテストから答えを推察することはできます。
■検証1
まず、わたしのメインのEA「PerfectOrder GBPJPY」にトレーリングストップ機能を加え、様々な条件でバックテストをまわしてみました。
しかしながら、すべての設定でパフォーマンスは悪化しました。
PerfectOrder GBPJPYのようなタイプのEAだと、トレーリングストップはマイナスにしかならないようです。
決済のロジックが優れているEAでは、トレーリングストップは不要との結論に達しました。
■検証2
次に、デイトレ・スイング系のEA「MTF Trading USDJPY」というのに組み込んでみました。
このEA、マルチタイムフレーム分析と移動平均を用いた手法でトレードするドル円5分足チャートに対応したデイトレ・スイング系のEAです。
わりと長めにポジションを持つEAです。
商品ページに詳しい説明があります。
トレーリングストップを無効(デフォルト設定)のバックテスト結果
トレーリングストップを有効にした場合のバックテスト結果
やはり、トレーリングストップを有効にすると成績が下がります。
■検証3
次に、複数通貨分析によりロングかショートかを判断するEA「Multi Trend USDJPY」にトレーリングストップを実装してみました。
結果は、ドル円のみストップ逆指値1.0(100pips)でそれなりの結果が残せましたが、ポンド円とユーロ円では成績が悪化しました。
商品ページに詳しい説明があります。
ドル円に関しては、トレーリングストップを無効にしても同じくらいの利益が出ることから、トレーリングストップを実装したことで成績が上がったわけではありません。
■検証4
スキャルピングEA「Multi Scalping USDJPY」で検証してみた。
年間トレード回数が1,000回の高頻度トレードのEAです。
商品ページに詳しい説明があります。
ストップ逆指値を120pipsに設定した場合のバックテスト結果
ストップ逆指値を400pipsに設定した場合のバックテスト結果
僅かですがストップ逆指値を120pipsに設定した場合のバックテスト結果の方が良い結果になりました。
ストップ逆指値が120pipsとは、トレーリングストップ注文がトレールされると現在値の120pips不利な方向にストップ逆指値が設定されます。
つまり、エントリーしてから120pips以上有利な方向に相場が動くと勝ちが確定します。
ストップ逆指値を400pipsに設定した場合は、エントリーしてから400pips以上有利な方向に相場が動かないと勝ちが確定しません。
設定400pipsだとトレーリングストップによる決済が行われる確率は、ほぼゼロになります。
トレード履歴を細かく分析したところ、設定120pipsの方もトレードの99%以上がロジックによる決済でした。
つまり、トレード回数が多すぎて120pips逆行する前にロジックによって決済されていることになります。
これではトレーリングストップがまったく役に立っていないので、意味がありません。
■結論
複数のデイトレ・スイング系のEAにトレーリングストップを組み込んでみましたが、効果ないことがわかりました。
しかしながら、トレーリングストップはとても人気のある決済手法です。
EA開発をするうえで、成績が変わらないのであればトレーリングストップをEAに組み込みするのも面白いかもしれませんね。
「Multi Trend USDJPY」と「Multi Scalping USDJPY」はデフォルト設定でトレーリングストップを有効にしています。
今後も、トレーリングストップがEA開発の中心になる可能性は低いと思われます。
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